グループ企業のノウハウ活かし
- 事業所名
- ネッツトヨタ湘南株式会社
- 所在地
- 神奈川県平塚市
- 事業内容
- 自動車の販売及び整備
- 従業員数
- 291名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 管理職、営繕と車両洗車 内部障害 2 営業職、事務職 知的障害 0 精神障害 1 車両洗車 - 目次

- ホームページアドレス
- http://netz-shonan.co.jp
1. 地域の福祉活動に一助
1979年9月設立。翌年、トヨタビスタ神奈川株式会社として神奈川県央、県西、湘南地域に営業拠点を設け、トヨタ車の販売および点検・整備・修理を主な業務として営業を開始。2004年5月、ネッツトヨタ湘南株式会社に商号を変更し、現在、21の拠点を持っている。
「地域に密着した営業活動のなかで、良質な『ネッツ』ブランドの商品・サービスを提供することにより、お客様から選んでいただける店舗をめざしています」と渡辺善憲管理本部長。
地域貢献のひとつとして、チャリティーイベント募金を開催していたが、1998年からはトヨタの福祉車両「ウェルキャブ」を福祉施設などに寄贈、今年度で13回目を迎える。今後も自治体と協力しながら地域の福祉の一助となる活動を継続していく方針だ。


2. 「任せる仕事がない」という固定概念捨て
本社以外の営業拠点の従業員数は、それぞれ15人程度。事務職が1人、あとは営業職とサービスエンジニアである。いずれの職種もクルマの運転ができ、さらに営業の場合は接客能力、エンジニアの場合は整備士などの資格が必要なため、障害者の雇用は極めて困難だ。残るは事務職が中心の本社だが、「適格者との出会いが少なく、非常に厳しい」というのが現場からの声であった。
そんな課題を抱えていたネッツトヨタ湘南に、2007年6月、グループ企業の神奈川トヨタ自動車株式会社より渡辺善憲管理本部長が着任した。渡辺氏は、障害者雇用優良事業所である同社で積極的に障害者雇用を推進し、実績を上げてきた人物。
着任早々、渡辺本部長は神奈川トヨタ自動車で培った知識と経験を活かし、ネッツトヨタ湘南の法定雇用率の達成に向け、活動を開始した。
彼は語る。「大切なのは、『障害者に任せる仕事がない』という固定概念を捨て、発想の転換を持って雇用に取り組むことです」と。

(1)「障害者合同面接会」の利用
まずは、漠然と求人募集を出したり、ハローワークに任せきりにしていた従来の求人スタイルをやめ、「障害者合同面接会」ひとつに絞って採用活動を展開することに。
「合同面接会では多く障害者と出会い、話すことができます。それに、コミュニケーションをとるなかで、どの人にどの仕事を任せたらいいのか、マッチングの可能性も大きく広がります。大いに活用すべきですね」
ネッツトヨタ湘南は、2008年9月に行われた「平成20年度障害者合同面接会」で求人活動を行い、2名の採用を決定している。
(2)障害者の新たな仕事「洗車・磨き」
また渡辺本部長は、障害者の能力が発揮でき、同時に会社にも大きく貢献できる職域を新たに開発した。「洗車・磨き」である。
「それまでは、カーディーラーは『お客様を相手にする仕事』であるがために、障害者のできる仕事はないと決めつけ、採用の間口が狭くなっていたのです。だったら、お客様とあまり接触のない仕事を見つければいい。そこで『洗車・磨き』に注目したのです」
「洗車・磨き」における障害者雇用に関しては、予定配置先と、すでに数人の障害者が働く神奈川トヨタ自動車の作業場で、2日間の作業実習を行うことにしている。障害者自身に「自分が働く職場」を実際に見て、体験してもらうことは、モチベーションの向上にも役立っているようだ。

(3)グループ独自の知的障害者マニュアルを活用
知的障害者への対応は、神奈川トヨタ自動車が独自に作成した「知的障害者マニュアル~職場における基礎知識~」を活用する予定だ。マニュアルには「知的障害者の特性」「起こりやすいトラブル」「日常生活の指導・配慮」「職務設計」「指示・伝達の仕方」「仕事の評価の仕方」「職場環境の配慮」「オフタイムの過ごし方」の8項目が立てられている。
(4)本社人事室は各拠点をサポート
また、障害者が働く営業拠点が単独で問題を抱えたりしないよう、本社人事室は各拠点と綿密にコミュニケーションをとり、ときには家族や学校と連絡しあうなど、きめの細かいサポート体制を心がけている。
3. 障害者の仕事ぶり
●肢体不自由者 洗車担当スタッフ
2008年の合同面接会で採用。定期的な通院日は休日としているが、出勤日の終業時間は定時を励行し、時間外勤務におよぶ際は、長時間にならないよう配慮している。「彼は高圧ケーブル工事技能認定証と第一種電気工事士の資格を取得しており、期待できる人材です」と渡辺本部長。今後は仕事の内容を広げていくことも検討しているという。
●知的障害者 洗車担当スタッフ(内定者)
作業実習を通して採用内定。2009年4月に職業訓練校を卒業し、晴れて入社となる。入社後はU-Carセンターに展示してある車両の洗車や、事務所内外の清掃を任せる予定。
●内部障害者(心臓機能障害) 新車営業スタッフ
32歳のときに旅行会社を辞め、以前、車の整備の仕事をしていたことから、今度は営業職を希望し、ネッツトヨタ湘南に転職。以来、7年6ヵ月で月平均5台の新車を販売し、店舗の牽引役として活躍している。お客様相手の営業職だけに勤務時間も不規則だが、障害を感じさせないくらいバイタリティ旺盛に仕事に取り組んでいる。
●内部障害者(呼吸器機能障害) 本社事務スタッフ
主に自動車の登録に関する業務に従事しているが、行政書士の事務所や警察署、保険会社など社外にも毎日のように出かけるほど精力的。呼吸器に障害があるため重労働はさせないようにし、月1回の通院で病状を管理しながら雇用の継続を図っている。

●肢体不自由者 本社役職スタッフ
グループの他販売会社より異動し、拠点の店長として従事。左下肢マヒがあるにもかかわらず、店頭での接客対応やお客様の駐車整理など率先垂範してきた。今はU-Carの仕入れ部門の室長に就き、後輩の育成にも意欲的だ。
4. 精神障害者の職場復帰プロセス
ネッツトヨタ湘南には前項で紹介した他にもう一人、精神障害を持つ社員がいる。
自動車整備士として入社し、整備の仕事を続けていたが、途中うつ病を発症し、2年間、休職したのだ。
休職期間中は年に2回、会社の担当者が自宅を訪問し、面談を行ってきた。本人は次第に「会社に復帰し、働きたい」という強い意志を表示していたという。
本人は月に1度の診療通院を続け、また3ヵ月に1度は神奈川トヨタ自動車の健康相談センター長と職場生活相談員が同行して3者で診療通院し、本人と会社とで情報の共用化を図った。その結果、復帰に対する彼の不安を取り除くことができ、無事、職場復帰にこぎ着けたのだ。
復帰後は、仕事に対する不安や、意欲・持続力の減退を考慮して、整備完了車の洗車を任せ、午後からの出社による短時間勤務とした。また月1回程度、職場生活相談員が様子を見ることにし、職場環境の改善などフォローを行っている。
復帰から2年を経た頃には、始業時間からの出社が可能となり、現在は、車検整備の検査のために陸運支局へクルマを持ち込んだり、警察署に車庫証明書を提出に行くなど、外部での仕事も増えてきている。
「神奈川トヨタ自動車グループの健康相談センターを利用してカウンセンリングを行い、病院に通院しながら徐々に復帰に持っていったのが良かったのだと思います。会社から何度も出向いて本人と十分に話し合い、不安を和らげたこと、また職場の仲間による時間的、精神的な協力も不可欠な条件でした」と、渡辺本部長は職場復帰のプロセスを語った。
5. 今後の取り組み
渡辺本部長の力強い旗振りのもと、ネッツトヨタ湘南は2009年4月に障害者雇用率1.8%を達成。今後も障害者が安定して働ける職場づくりをめざすとともに、さらなる職域の拡大なども検討し、全社一丸となって取り組んでいく構えだ。
「なかでも洗車業務での採用を強力に進めていきます。入社前に行っている作業実習は、受け入れ先の拠点にも『十分戦力として役立つ』と好評なので、一層の充実を図っていくつもり。洗車に使用する道具についても、安全性や作業性を考慮し、より改良を重ねていく予定です」
洗車業務における障害者雇用に確実な手応えを感じている渡辺本部長。ゆくゆくは雇用の拡大を見越して、各店舗で障害者をサポートする障害者職業生活相談員などの人材育成も必要と考えている。
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