障害者雇用の法令遵守を社員に説明し、その理解の下に障害者をスムーズに職場に迎え入れた事例
- 事業所名
- 新潟造船株式会社
- 所在地
- 新潟県新潟市
- 事業内容
- タンカー、商船、作業船、官公庁船(海上保安庁等)、漁船等の建造
- 従業員数
- 230名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 パソコン入力、資材発注 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次


1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
(1)事業の特徴・内容
前身を株式会社新潟鉄工所新潟造船所として、明治38年、日本海側の海運業に貢献すべく、信濃川河口で産声を上げ、多種多様の漁船、貨客船、作業船や実習船等を建造してきた。
新潟鉄工所の破綻の後、平成15年に、100年以上の経験をベースにした設備と技術力を生かし、また、株主である三井造船株式会社の100%出資をうけ、新潟造船株式会社として創業を開始した。
これからも、ユーザーの様々な要望に応え、やわらかい発想と確かな技術で事業展開を進めているところである。
取扱い品目は、新造船が85%である。そのうち90%が海外からの受注である。タンカー、商船、作業船、官公庁船(海上保安庁等)、漁船等を建造している。
次に修繕船と鋼構造物が15%ということである。
最近の年商130~150億円となっている。
(2)経営方針
会社のモットーは「海に働く人々の情熱をカタチにします。」としている。
(3)組織構成
本社・新潟工場:新潟市・・・190人
三崎工場:三浦市・・・ 30人
東京支社:東京都港区・・・ 10人
(4)障害者雇用の理念
会社発足時には、障害者雇用はゼロであった。従業員はそれなりの数を擁していたが、除外率15%があり、障害者雇用を重要視していなかった。
また、造船工場時代には障害者雇用は本社が対応していたため、新会社となって独立してから、障害者雇用についての機能の蓄積が無かった。
新会社になり、人材の不足から求人活動でハローワークに頻繁に通う中で、担当係官から障害者雇用を働きかけられ、2年目くらいから障害者雇用率の認識を新たにした。
(5)障害者雇用の経緯
一般の求人活動で、ハローワークを利用する中で、障害者雇用を働きかけられ、平成19年9月障害者雇用促進月間のなかで、男性で6級の上肢不自由の障害者を1人紹介され採用した。
次いで、平成20年6月、英語の出来る人材を募集したところ、女性で3級の下肢不自由の障害者を紹介され、採用した。現在、上記2名の障害者を採用している。
2. 取り組みの内容
(1)従事業務・職場配置
①上肢障害者Aさん
集配センターに配置し、外注部品購入品を受け取りパソコン入力する業務に従事している。Aさんは、指に力が入らないようである。
部品の名前、パソコン入力は職場のみんながひとつずつ教えた。
②下肢障害者Bさん
資材発注グループに配置した。新造船の受注は海外からの受注が多いため、資材の発注も海外発注が多くなった。英語の出来る人が欲しかったところ、英語が出来、海外留学経験もあり、TOEIC(英語能力テスト)860点の人が応募してきたため、適任であった。
(2)取り組みの具体的内容
採用・配置に際して、本人の障害の程度を職場の人たちに説明し、安全教育をするよう徹底したということである。障害者の採用については、会社の法令順守の趣旨を説明し気持ちよく受け入れてもらったということである。
また、Bさんの駐車場を配置職場の近くに特例として設置し、社員にもその理由を説明し理解を得ているということである。
(3)活用した制度、助成金
①トライアル雇用制度
2人ともトライアル雇用制度を活用し、本人の職場への適応を見極め、また、周りの社員の受け入れ態勢を築きあげることが出来た。
②障害者作業設備設置等助成金
下肢障害のために、障害者作業設備設置等助成金を活用し、和式トイレを洋式トイレに改造し、ドアを内開きから外開きに改造した。
3. 取り組みの効果
(1)取り組みを実施したことによる効果
雇用管理上、特に取り上げることも無いと言われる。
しかし、障害者雇用をめぐる一連の手続き等を経験する中で、いろんな助成制度があることを知ることが出来たのが収穫であった。
(2)障害者雇用の波及効果やメリット
会社としても、社員全員が障害者雇用を通じて、法令順守を進めるために、社会の制度を改めて認識したことであろうと思われる。
また、作業しやすいよう、障害者の椅子の調整から全員の社員の椅子を変えるなど、環境改善を進める動きも出てきたとのことである。
(3)障害者自身のコメント
◎ Aさん
自分は初め造船業という職業がどんな仕事をするところか最初は余り理解が在りませんでした。
けれども造船所で働いているうちに、色々な仕事があることが分かりました。
その人たちみんなで1隻の船作っています。
船の殻を造るのが船殻といいます。その中の工程として、
①切断・曲げ | 大きな鋼材から部材を切り出し、曲げたり加工する。 |
②小組立・溶接 | 切断し、加工した部品と部品を溶接で繋いで組立します。 小組立は部品がそれほど大きくなく、曲げない平板が中心です。 |
③大組立・溶接 | 小組立で組立てた、組立品と部材を大組立工程で組立ブロックにします。 |
④先行艤装 | 先の工程で組立てたブロックにパイプ・ダクトなどを取り付けたり、塗装を施します。 |
⑤搭載 | ブロックをドックに搭載し、ブロック同士を溶接で繋いで船の形にします。 |
⑥進水 | ブロックを繋ぎ、船体を完成するといよいよ進水となります。 |
進水の後は、航海に必要な一切の装備を備えるため、以下の艤装工程を同時に行います。 | |
⑦配管艤装 | 機器を据付けた後でパイプを繋ぐ配管作業を行います。 |
⑧船体艤装 | 係船・揚錨・荷役等の各装置の据付を行います。 |
⑨機関艤装 | 機関室の機器据付・芯出し・調整 軸心見通し・船尾管機械加工と封印などをしています。 |
⑩電気艤装 | 通信・無線装置・照明装置・計測装置の設置及び調整、配線などをしています。 |
以上の装備が終わったら、次に海上運転に出ます。 | |
⑪海上公試運転 | 通信・騒音試験、速力試験、操縦性試験、主機始動試験 プログラム増減速確認試験、機関室火災警報機試験などをします。 |
新潟造船では国内外の作業船や海上保安庁の船、重油タンカーや石油化学製品などを運ぶ船を造っています。
船の中には、シャワールームや寝室、食堂などが有り海に浮かぶ家のようです。
他にもエンジンルームや操舵室やポンプルームなどがあります。
自分の仕事は運送屋さんから荷物を受け取ったり、品物の納品書の明細、置き場所などをコンピュターに打ち込んだり、工具室の入出庫の管理をしたりしています。
これからもいろいろな国の船や作業船を見てみたいと思います。
そして、船の構造や船の何処に付くのかなどを覚えていきたいです。

◎ Bさん
私は2年前に両足に痛みを感じ、人工関節置換手術を受け、下肢不自由の障害者になりました。それまでは全くの健常者として過ごしていましたので、大変ショックを受けました。
手術後自宅療養をした後、今年4月より新潟造船株式会社資材部で勤務することになりました。以前の経験を出来るだけ生かした仕事に就きたいと希望していた為、なかなか希望の職種が見つからず苦労しましたが、ハローワークのご支援を受け、現在の仕事に就くことができました。
障害者として仕事に就くのは初めてだったので、最初はどの程度、以前と同じように仕事ができるのか、不安でたまりませんでした。行動・姿勢に制限があるので、会社にお願いして洗面所や椅子等に配慮を頂きました。気温が下がってくると、脚に痛みがでるので、出社時間の調整もしていただきました。職場の方々はとても理解してくださり、私ができない事を色々とカバーして頂いております。こういったご理解があるので、皆さんと一緒に仕事をすることができ、私もできる限り頑張らせて頂いております。

できる事とできない事があるのが障害者だと思います。少しの工夫や配慮で、そのできない事をカバーして頂ければ、障害者も健常者と共に仕事をする事は、可能だと感じています。障害者になってみないと分からない事があるので、不便を感じた時は、あまり思い悩んだり、我慢したりせず、まずは、会社やハローワークに相談してみるのが良いと思います。すべてを解決するのは難しいと思いますが、少しでも良い改善策が見つかれば、仕事を続けられると思います。
障害者の方も、できないと初めから諦めず、まずは挑戦してみる事も大切だと感じている。意外とできる事も多くあることに、気づくのではないだろうか。
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