初めて障害者を雇用した事例
- 事業所名
- 株式会社ロジテムツムラ
- 所在地
- 静岡県藤枝市
- 事業内容
- 道路貨物運送業、倉庫業、医薬品・化粧品製造業(包装、表示、保管)、流通加工業
- 従業員数
- 240名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 2 製品箱詰め、包装、加工作業 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
当事業所は株式会社ツムラの100%出資子会社であり、昭和48年に貨物自動車運送事業を目的として設立された。現在は医薬品を中心とした運送の倉庫事業をはじめとし、医薬品製造業(包装、表示、保管)、化粧品製造業(包装、表示、保管)、医薬品部外品製造業(包装、表示、保管)許可を取得した流通加工業、人材派遣業などの多角的展開を図っている。(ISO9001,ISO2000認証取得)
2. 取り組みの内容
(1)初めての試み
運送業という業種柄、障害者が出来る職域はないという考えから、これまで障害者雇用には取り組んでこなかった。しかしながら、ハローワークからの働きかけもあり、会社の社会的責任という側面からも、障害者雇用に力を入れていかなければならないと考え、初めての障害者雇用の試みに踏み切った。
平成20年5月、ハローワークからの紹介により清水テクノカレッジから2名の実習生を受け入れる。実習期間は2週間、19歳と21歳の知的障害者の男性であり、2名ともに療育手帳Bを所持している。うち1名は重度知的障害者判定で重度という判定を受けている。
受け入れにあたっては、清水テクノカレッジより次のような申し送りを受けている。
・2名一緒の作業現場が好ましい。
・繰り返しの作業が得意である。
・家庭環境は安定していて協力も得られる。
2人は化粧品のラベル貼り、包装作業、ロット印字などを行う流通加工事業にあたる部門に配置されることが決まった。
(2)実習内容
実習内容は2人一緒に化粧品の包装作業から始まった。しかし、ラインではスピードに追われ、スピードに対応できない。そこで、ラインからはずれたところに2人専用の特設の作業スペースを作り、そこで包装作業をすることにした。
GMPを遵守した品質の確保が絶対であるので、この作業は商品をセットする位置や向きに注意が必要で神経を使う仕事である。2人は教えられたことを厳格すぎるくらい忠実に守り、少しでもずれていたりすると許せない様子であった。「アバウトな指示は彼らにとっては判断が難しい」と、清水テクノカレッジから伝えられていたのだが、まさにこのことかと周りの従業員たちは納得することが多かった。
実習期間中は徐々にスピードもあがり、同時に多様な作業ができるようになり、実習は問題なく終了する。
※GMP : 医薬品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice)
安心して使うことのできる品質の良い医薬品、医療器具を供給するために、製造時の管理、遵守事項を定めたもの。

(3)トライアル雇用から本採用へ
スピードはゆっくりでも正確な作業と妥協しない姿勢が評価され、実習終了後、平成20年9月1日より3ヶ月のトライアル雇用に入る。その際、ハローワークからの勧めもあって静岡障害者職業センターに依頼し、ジョブコーチの支援を利用した。1週間に3日間ジョブコーチが来所し、2人と従業員の双方に支援を行った。2人はスムースに職場に適応していった。ジョブコーチの存在は、具体的な支援だけでなく、従業員にとっては現場にいるだけで安心感を抱かせるものであり、また何かあれば今後の相談にものってもらえるという点も含め効果的な支援制度である。
3ヶ月のトライアル雇用を経て、2人は平成20年12月に本採用の運びとなる。
(4)現場従業員の変容
当初、受け入れる現場の声は「総論賛成」しかしながら「各論反対」という様子であった。障害者に対する理解が十分でなかったからであろうが、正直なところ不安の声は強かった。そんな中で実習が開始されたが、本人たちの動きを実際に目の当たりにした従業員の不安はすぐに解消された。バランス感覚などを要求されるパレットへの積み上げ作業は、2日間で習得するほど有能であった。彼らの何処に障害があるのか、障害があることも忘れるほど良い動きを見せてくれた。
現場の当作業では作業の速さよりもスピードは遅くてもいいから、まず正確である事、丁寧であることが要求された。二人ともその点でも合格であった。
特に輸入品を扱う際には、不良品を目ざとく見つけ出す能力に長けていることがわかった。
単純作業中心であったので、時々眠そうにしたり飽きたような様子が窺われたりしたが、そんな時には気分転換の意味もあって、ラインに立って段ボール箱の組立てや箱詰め作業、パレットへの積み上げ作業に切り替えるなど、現場で工夫をした。
環境を少し変えたり工夫したりするだけで、気持ちを持ち直し仕事がはかどることがわかった。これも彼らと日々接する中、周りの従業員が学んだことである。
彼らの勤務態度はいたってまじめであり、これまでも無遅刻無欠勤で、あてにされつつある存在である。また、指示にも素直に従い、必要以上のことは言わず、かといって人嫌いでもないので周りの従業員からは「彼らに癒されています。」という言葉が聞かれる。

(5)支援体制
彼らが職場になじむ為には、彼らを職場で変えるのではなく、職場が彼らに合わせて変わっていくことが大切であることを、周りで見守る人間は学んできた。現場の采配を主に任され、彼らの指導にあたっているM氏はその点を考慮し、彼らができる仕事、彼らに合う仕事を模索しながら、様々な作業を組み合わせてきた。
「アバウトな判断ができない」という特性は変えることが難しいので、判断力を要する仕事は入れないことにし、彼らに合う仕事を優先している。
段ボール箱の組み立て、商品の箱詰め、判子打ち、パレットへの積み込み、積み上げた箱の固定(ラップで包み込む作業)、ハンドリフトを使ってのパレットの移動等々である。


現場は化粧品を扱う場所であるので、薬事法上、年に1~2回のGMPの講習を受講することが課せられている。将来的にも会社が力を入れている業種であるので、彼らにも受講させている。しかし、難しい読みの漢字が並ぶテキストは、彼らには負担であろうと考え、彼らにわかりやすいテキストを特別に作成し用意した。これからもこのテキストを活用し、GMPの講習を受けさせていきたいと考えている。

3. 職場環境と将来的な展望
もともと女性だけの現場だったため、男性用のトイレが設置されていない。そこで今は彼らの休憩時間(トイレタイム)を女性陣より5分早く取るように工夫をしている。今後、施設的な充実を図っていきたい。
また、彼らのできる仕事を増やす為に、機械の補充も考慮に入れていきたいと考えている。その一つが「圧着器」で、これは包装途中に容器の密閉をする機械である。現在使用している機械にセンサーを着ければ、彼らにも安全に操作ができ、仕事の幅が拡がる。
もう一つは「ボトルラベラー」といって化粧品のボトルに印字をする機械である。作業施設設置等助成金を利用することも考慮に入れていきたいと考えている。
初めての障害者雇用、それも2人同時の雇用は、事業所にとっては試行的なところもあったが、本人たちの適性と能力にも恵まれ、順調にすすめることができた。これに勇気付けられ、今後の新たな職域の創出や障害者雇用への取り組みも考えていきたい。
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