社員とともに進める障害者雇用
- 事業所名
- 春日井製菓株式会社
- 所在地
- 愛知県名古屋市
- 事業内容
- キャンディー、豆菓子、グミキャンディー、チョコレート等の各種菓子の製造・販売
- 従業員数
- 440名
- うち障害者数
- 8名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 菓子製造 内部障害 0 知的障害 3 菓子製造補助 精神障害 3 菓子製造 - 目次


1. 事業所の概要
1928年名古屋市西区輪の内にて春日井商店として創業、1942年には個人経営を春日井製菓有限会社に組織変更し、1948年に春日井製菓株式会社に改組し現在に至る。お菓子作りに携わって80有余年。世界中どこでも暮らしの中に必ず存在する「お菓子」であるが、決して人間が生きていくために欠かせないものではない。しかしお菓子を食べるとき、人はみんな笑顔になる。「おいしくて、安心して多くの人々に愛され続けるお菓子づくり」を目指してお菓子をつくり続けている。昨今、ISOの取得を進めながら、さらなる食の安全に向けて取り組んでいる。
2. 障害者雇用の経緯、背景
過去、障害者雇用については積極的ではなかったものの、国の雇用率1.6パーセントから1.8パーセントになった頃、企業としての責任や社会貢献に取り組まなければいけないということがきっかけだった。社長の理解のもと、養護学校との出会いもあり、最初の数年は苦労したり失敗したりしたこともあったが、その中で全社的に受け入れの土壌が出来てきた。春日井製菓株式会社では6カ所の工場があり、工場の社員の理解を得ることも重要である。会社全体、そして工場長や社員一人一人に至るまで障害者の理解を進めるようにし、少しずつ着実に取り組んできている。会社としては1.8パーセントを下回らないように、出来れば毎年1名ずつの受け入れをしていきたいと考えている。
春日井製菓株式会社が大切にしていることは「人」である。それが基本としてあり、その中で、障害者を自然に受け入れてきている。
「障害のある社員にどのような配慮ができるのか」、「できる仕事内容の創出」、「障害のある社員を指導できる社員を育てていきたい」、「指導者より支援を受け、よりよい支援継続ができる環境を創る」等、障害のある社員が生き生きと楽しんで働ける職場環境づくりを目指している。

3. 障害のある従業員の業務
春日井製菓株式会社の春日井工場では3名の知的障害者が働いている。3名の障害も個性も違っている。それらを理解し、どのように現場で彼らが楽しく働けるのかを考え、そして仕事内容を決めている。その3名の作業内容は以下の通りである。
Aさん
キャンディーを製造する場所で、ラベルの管理、製造補助、梱包材の準備・片付け、機械の清掃等様々な仕事を行っている。

Bさん
豆菓子を製造する場所で、半年ペースで一つの仕事を覚え、今では5つ目の作業を覚えて仕事を行っている。作業風景は豆菓子の不良品を選別しているところである。

Cさん
グミキャンディーを製造する場所で、グミキャンディーの機械への投入、空き缶の整理、清掃等本人自身ができる作業を決め、ルーティン化しながら仕事を一人で行っている。

4. 取り組みの内容
春日井工場では、障害のある社員に「一つのことを一生懸命してくれる社員であるという見方で接する」、「なるべく話をしたり聞いたりする」、「二つ以上の事は一緒に行わせない」、そして、「長く働いていただけるようにしたい」という考え方のもと取り組んでいる。
① 3人の個性に合わせた仕事の方法・段階的な配慮
障害のある社員の特徴や作業能力等をみながら、職場や仕事の量等を段階的に配慮し、一人一人の能力にあわせ、また最大限に生かせるような工夫をしている。
Aさん
Aさんはどのような仕事でも積極的に取り組んでいく姿勢を持っている。そこで、できる仕事を見ながらいろいろな仕事を覚えてもらうようにしている。そして、日に日に成長していっているのを感じている。
写真は、Aさんが日々使用している作業台である。分かりやすく作業が出来るように、箱の横に入れる物の名前を書いてある。また、作業台の上には本人が間違えやすいラベルの保管量が写真と数量入りで提示してある。

Bさん
Bさんはとても穏やかで、しっかりしている。Bさんが分かりやすいように機械やコンテナの位置を工夫し取り組んでいる。また危険なことに関しては写真を提示し、注意を促すようにしている。

Cさん
Cさんは仕事を覚えるのに時間がかかるものの、一度覚えればきちんと取り組むことが出来る。初めは何が出来るのかなというところから始まったが、一つ一つの行程を丁寧に教え、その仕事を変えないようにすることにより、仕事の定着が図れている。

② 工場内での職場環境整備
工場全体で、安全面での配慮や作業しやすい環境、本人が分かりやすくするものの配置等の工夫がされている。
写真は、Bさんが豆菓子の選別する際にどのようなものが不良品になるのか等、分かりやすくするために大きな写真を掲示されているものである。

③ 障害のある社員への支援の在り方や配慮、意識の徹底
春日井工場での受け入れは初めてであったが、障害のある方は指導しにくいのではなく、適切な支援をすれば正しく行え、一つのことを一生懸命黙々と取り組んでくれるという良いところがある。それを理解した上での関わり方が大切であると考えている。
そして、3つの製造部門で一人ずつ障害のある社員が働いているが、各部門で「1度に2つ以上の作業をすると混乱してしまうので、1つの作業終了後に次の作業の指示を出すようにする」「慣れてきたときにミスをしやすいので、再度作業行程等の確認をする」「一生が学習なのである。作業を覚えたからよいのではなく、指導の程度を変えるのではなく同じ支援の目を継続させることが重要である」ということを徹底している。
また、養護学校の行事等を参観することにより、先生の子どもたちへの接し方を見ることができ、どのような接し方をすればよいのか、どこまで指導していいのか等がよく分かり、今後も学校行事等を参観し、支援の方法を知り工場内での指導に生かすつもりである。
このような取り組みの中で、工場全体が障害のある社員の職場環境を重視し、社員一人一人が意識して、社員全体で障害のある社員を支える仕組みが出来てきている。
④ 新人教育や社内提案制度
“人間としての成長”を社員教育の基本に据えており、OJTにより職場のルール、5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)、安全衛生など実践的なスキルを早期に習得できるよう、一人ひとりの成長をバックアップしている。また、社員のモチベーションを高める様々な取り組みがされており、「社内提案制度」もその一つである。そのような取り組みの中で、Cさんが社員の方と一緒に考え、「金属探知機と選別台をつなぐ改善」で改善提案書を提出し、社長賞を受けた。本人にとってはとても嬉しい出来事であり、家族と一緒に喜んだそうである。その後の働きぶりにも良い影響が出ている。
またCさんについては一人の指導者が1年間指導してきたが、今後のことを考え、4月より他の指導者の元、仕事をすることにしている。そのことにより、職場全体で障害のある社員の教育ができるような環境作りを考えている。
⑤ 社員自らの障害者への目線
春日井製菓株式会社は「人」を大切にしている。そのような環境の中で、彼らに対する自然なかかわり、気づきが生まれている。社員一人一人が「こうしたらやりやすいのかな」「こうしたら分かりやすいのかな」と考え、作業環境の工夫をしている。
こんなエピソードがあった。Cさんが入社当初、長い柄のほうきを使用していたが、社員が「もしかしたら短いほうきの方が掃きやすいのではないか」と気づき、ほうきを変えてみたところとてもスムーズに掃除が出来たということがあった。このような気づきを工場では大切にしていきたい。

⑥ 障害者雇用助成金の活用
特定求職者雇用開発助成金を活用している。
5. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット
障害者を雇用して、様々な取り組みをすることにより以下のような効果が出てきている。
① 会社全体や工場内における協力体制が徐々に浸透してきている。
② 障害特性に応じたかかわりや指導の方法を学ぶことで、社員が理解を深め、彼らの目線で物事を考えられるようになった。また見守る姿勢が社員に見られるようになってきた。そのことが社員同士への関わりや社員教育にも波及しており、さらに広がっていくとよい。
③ 職場環境の改善を社員が気づき、環境調整ができるようになってきた。
④ 彼らの積極的な仕事に対する姿勢が周りの社員に影響し、工場全体が活気づいてくる部分がある。
⑤ 協力体制が構築されることにより、彼らが働きやすい職場環境が整備され、彼ら自身が仕事にやりがいを持って取り組めるようになった。また、それぞれの成長が見られる。
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