障害者・健常者の区分けのないノーマライゼーションの実現を目指して
- 事業所名
- 株式会社レグルス
- 所在地
- 三重県鈴鹿市
- 事業内容
- 電気機械器具製造業
- 従業員数
- 40名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 1 組立 肢体不自由 5 組立、組立・検査、事務 内部障害 1 組立・検査 知的障害 1 検査 精神障害 4 組立、組立・検査 - 目次


1. 障害者雇用への取り組みの経緯
※今回の調査では精神障害者雇用に限定をしての訪問のため、職務については精神障害のある従業員に限定して示す。
株式会社レグルス(以下、本事業所)は、自動車用ワイヤーハーネスを製造する事業所であり、1969年に有限会社として設立、1994年に株式会社に移行し、現在に至っている。
障害者雇用に取り組むきっかけとなったのは、1995年に現在の社長が事故にあって四肢麻痺になったことが挙げられる。この時の様々な出会いや思いから社会福祉法人を設立し、福祉工場を開設している。そこで現在35名の身体障害者を雇用しているのだが、その経験があって、2006年に本事業所においても工場増設の機会に障害者雇用に踏み切っている。この時に福祉工場での実績から身体障害者を採用するだけでなく、知人を通して精神障害者の雇用について打診され、同時期に雇用に至っている。また同時期に身体障害者福祉ホームを開設している。
当初は、精神障害者雇用といっても、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の事業である精神障害者社会適応訓練事業として受け入れをしていたとのことである。しかしながら当時は、精神障害または精神疾患に対する知識がほとんどない状態で、どのような仕事が出来るのか、どのような対応が必要なのかということを手探りで行っていた、とのことである。
本事業所では受け入れをした身体障害者については、社長本人に重度の身体障害があり、その体験から生活面や精神面での対応方法は理解しており、従業員についてもある程度対応はできるようになっているが、精神障害・精神疾患については全く知識が無く、世間一般で持っているような漠然としたものでしかなかった。そのため、当初採用した2名の精神障害者については2~3ヶ月でリタイアをしたとのことである。この時のことを踏まえ次の雇用からは、紹介があった市内の病院の地域医療センターの相談員と十分に連携を図り、採用する精神障害者の情報を可能な範囲で提供してもらい、対処方法などについてもアドバイスをもらうようにしたところ、現状のような安定した定着となっている。
2. 生活面や精神障害面へのサポートも大切に
精神障害者の採用に際して、面接場面では障害のことについては触れずに、これまでの生活や職業経験などについて聴くようにしているとのことであった。この中で期待できる役割や通院等の情報を聴き出すとのことであった。障害について聴いても、どのような状況になるのかが一人ひとり異なり把握しにくいので、実際に働いてもらいながらそれを確認するほうがより精神障害のある従業員のことを理解でき、前職のことを確認することで、どのような職務が可能か推測できるという理由がそこにはあった。ただし、応募については、精神障害があることを伝える(オープン)ことが必要であると考えており、かかりつけの医師等と連携を取ることが可能であることが条件のひとつとして考えられているようであった。確かに精神障害や精神疾患についての十分な知識や経験がなければ、どのように関わってよいのか不安であり、それらを軽減するためにその特定の個人と関わるときに、必要な専門的アドバイスを得ることができる機関と協力関係を構築できることはとても重要であると考えられる。
また精神障害のことについては、本人に聴いて理解できることもあるが、そうでないこともあると考えられるため、実際に作業を実習として行ってもらいながら、本人のできる作業を確認して配属をするように配慮がされている。また、生活上の相談などについては、地域医療センターの相談員に採用当初は週に1度、その後慣れてくれば月に一度職場訪問や家庭訪問をして職場では相談できないような職場状況や生活状況を聞き取り、その内容について社長や所属部署の主任などに報告・連絡をして問題があれば地域医療センターと協力しながら解決するように活動を行っている。
実際に職場に配属するに当たっては、当初は事前に精神障害者との関わり方について、社長等の経験や地域医療センターからのアドバイスなどを伝えて、関わり方について指導を行っていることも精神障害のある従業員の職場定着に一定の効果を挙げていると考えられる。
3. 作業工程は単純に分かりやすく
本事業所における雇用上の取り組みとして、本社工場から少しはなれた場所にバリアフリーの工場を増設し、その2階部分で障害のある従業員が主に働いている。就業場所を本社工場と分けた理由としては、本社工場のバリアフリー化が難しいことが挙げられていたが、それ以外にも新設の設備の方が明るく、清潔感もあり障害のある従業員が働くにあたっての配慮が最初から出来るという点がメリットとして考えられたのではないかと思われる。一つのラインでそれぞれの作業が割り当てられており、パーツの方向や角度などに注意を払いながら作業を行っている。各自の作業スペースは全員が一列で前を向いて並んでいるため、前の作業が見えると集中力が途切れやすくなる場合であっても、指示書などを貼り付けるボードを設置することにより、集中できるような環境となっている。
また冶具も作業をなるべく単純化し、ミスが起きないように工夫がなされている。例えば、パーツの決められた部分に定められた色で印をつける工程では、冶具にパーツをセットし、色を変えて明示した部分まで線を引くという方法がとられている。文字で説明する方法よりも視覚に訴える方がよりわかりやすく、単純なミスも防ぎやすくなることからこのような方法が採用されている。その他に、その次の工程では様々なパーツを組み上げるのだが、ここでも冶具を改良し、ペイントされたパーツの向きを揃え、ミスが起きないよう一つ一つ確認をしながら進めることが出来るように配慮されている。ちなみに、障害のある従業員が担当するのは基本的に一工程とされており、その中でペイントの色を変更することや製品によって異なる切断の長さを各自が指示書(手順書)を確認しながら進めている。


4. 雇用管理上の配慮として
本事業所における精神障害者雇用は、給与水準としては最低賃金またはそれ以上の賃金が支払われている。そもそも障害者雇用への取り組みは、「障害者・健常者の区分けのないノーマライゼーションの実現」という理念を基にしており、給与面や昇進等では障害者であることを理由とする区分を設けておらず、能力に応じてステップアップできるようにしている。また、福利厚生として日帰りや一泊でのバス旅行を行っており、その中でその他の従業員との交流を図るようにしている。さらに精神障害特有の定期(不定期)的な通院についても休みを取りやすいように配慮がなされている。私が訪問をした日も1名の方が欠勤されていたが、他の従業員がその作業を代わりに行うことで全体の作業工程はスムーズに流れているように見えた。
また、職業トレーニングはOff-JTではなくOJTで可能な限り、様々な職務に当たらせており、出来る作業を確認することを随時行っている。障害のある従業員の中にはうまく作業工程を覚えられない人もいるため、現在は毎日同じ作業工程の説明をしているが、これについては今後作業工程の説明をDVDに落とし込み、それを見ながらすれば、同じ説明をしなくても済むように準備をしているとのことであった。品質確認についても、継続して行うようにしており、品質保持には最善の努力を払っていた。
5. 障害特性に応じた職場での配慮として
障害者雇用助成金については、工場の新規増設のときに、身体障害者を雇用することもあり、バリアフリー化やエレベーターの設置、多目的トイレ設置などで助成金が用いられている。また公共職業安定所を通して求人をするため、それ以外の各種助成金を受けており、公共職業安定所主催の障害者雇用面接会には常に参加するようにしている、とのことであった。
現在は障害者雇用について拡大をしていきたいと考えているが、取引先の理解が担当者変更によりうまく得られなかったり、昨今の景気の変化による受注減少などが大きく影響したりするなどして、急速に拡大をすることは出来ていない。しかしながら、障害のある従業員でも出来るように、作業を各種センサーの利用により、不得意な分野の能力補充を行なうことで、十分な能力を発揮することは可能であると考えている。実際に本事業所においては、冶具の改良をすることで不良品をなくすように努力している。
精神障害のある従業員の雇用拡大においては、同じ職場で働くその他の従業員を中心に、精神障害の特有の症状やそれへの対処方法などについてしっかりと指導をし、困った場面等については連携をしている医療機関との協力により、対応できるようになってきている。
最終的には「障害のある従業員の作った製品の品質向上と利益を挙げることの出来る組織」になることを目標にしていると、社長の言葉があった。障害のある従業員が作ったからどうこうではなく、誰が作っても同じ製品レベルにすることが出来るように、一事業所として取り組んでいきたいという姿勢が窺え、景気の回復後にはさらなる障害者雇用の発展が期待される。



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