障害者が安心して働ける職場を目指して
- 事業所名
- 株式会社日永華陽
- 所在地
- 三重県四日市市
- 事業内容
- 不動産賃貸業・管理業
- 従業員数
- 44名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 1 ショッピングカート回収・駐車場整備 精神障害 6 ショッピングカート回収・駐車場整備 - 目次

1. 事業所の概要
従業員数 : | 44名(平成20年8月末日現在)(内、正規職員8名) |
うち障害者数 : | 知的障害者 1名(ダブルカウントの対象) |
精神障害者 6名 | |
職務内訳 ショッピングカート回収・駐車場整備 : 7名 | |
※今回の調査では精神障害者雇用に限定をしての訪問ではあるが、職務については知的・精神障害のある従業員を含めて示す。 |
(1)はじめに
株式会社日永華陽(以下、本事業所)は、大型ショッピングセンターの管理・運営をし、ショッピングセンター内の設備管理及び各店舗と連携を図りながら「すべてをお客様のために」という経営理念の実現に向けて事業に取り組んでいる。
障害者雇用の取り組み開始時期についての詳細は、当時の担当者がいないために不明であるが、以前は身体障害のある従業員が事務職として採用されていた、とのことであった。2名の方を採用されており、車いすや杖を利用していても可能な職務として事務職での採用とした、とのことであった。現在その2名の方は、体調を崩して退職されているとのことであるが、受け入れに当たっては障害の有無よりは、以前の職歴を見て、事業所として可能な業務があるのかどうかを判断し、受け入れ態勢を整備した、とのことであった。
その後平成13年に、一人の精神障害者の方が一般求人を見て応募をされたので、面接し、採用したとのことである。この従業員の場合は精神障害があることをオープンにして応募をしてきたのだが、先の身体障害者の方と同様に、以前の職歴から本事業所において従事可能な職務があると判断し、採用に至っている。これが本事業所における精神障害者雇用の始まりとなっている。現在雇用されている障害のある従業員(以下、障害従業員)のうち一番古い人で平成15年8月採用となっている。以下では平成18年1月に採用された人までとなっている。退職者は見られるものの、比較的安定して雇用を継続しているといえる。
雇用管理の体制としては、実務面を管理課が担当し、主に日常業務の面で障害従業員の管理をし、総務課において各種の障害者雇用助成金や給与計算・出勤管理などを行うように業務分掌が明確に分けられている。
訪問をした平成20年12月末の時点で、知的障害のある従業員(以下、知的障害従業員)1名、精神障害のある従業員(以下、精神障害従業員)6名の合計7名を契約社員として雇用している。全員が同じ業務に従事しており、本事業所が管理運営をするショッピングセンター内及び駐車場に放置されたショッピングカートを回収してまわり、所定の場所に戻す業務と、ショッピングセンター内及び駐車場等のゴミ拾いといった環境整備を行っている。
本事業所では精神疾患の種別については特に把握をしておらず、業務に支障が発生しない限りにおいては、疾患名を知ることは特に必要が無いと考えているようであった(実際には1名の方の疾患名を把握しておられるが、通常の業務の範囲では全く必要の無い情報であると感じておられるようであった)。勤務時間は10時から19時まで(例外で特売日などのセール期間は9時から18時まで)で、始業時間の10分前から管理課においてミーティングを行っている。ミーティングではその日のショッピングセンターでのイベントや集客予測、来店する客層についての連絡・伝達などが行われ、業務マニュアルの確認も合わせて行われている。この時に、主たる担当職員が、個々の障害従業員の体調確認を行っている、とのことであった。
勤務日数については、社会保険への加入希望者は月20日間勤務、社会保険加入を希望しないものについては16日間勤務となっている。ただし、本人の体調等により臨時的に10日間勤務に変更している障害従業員もおり、契約としては一律に定められているが、それほど堅苦しいものではなく、障害従業員の状態に合わせて柔軟に変更をしている。
2. 実際上の採用までの流れや働き方について
大まかな採用の流れや勤務形態については先に述べたとおりであるが、実際にはどのようになっているかというと、採用については市内の精神障害者の方が通所している事業所からの紹介で採用をしているのが現状となっている。その事業所の職員は、事前に本事業所における就業を体験又は見学をして、この業務に就くことが可能であると見込まれる人を紹介してくれているそうで、実際の採用面接場面では職歴の確認や仕事の説明が理解できるかどうかを見て、それに加えて1ヶ月間の実習(試用期間)を見て採用を決定しているとのことであった。採用については原則として公共職業安定所を通しての採用となっている。
勤務日程を組むときには通院について把握し、障害従業員が無理なく通院できるように、定期的な通院日についてはローテーションから外れるように配慮をしている。また通勤に関しては、公共交通機関や徒歩での通勤となっており、本事業所として何か特別の支援をする必要はない、とのことである。
勤務の流れについては、朝礼時のミーティングで、①前日からの引継ぎ、②落し物の連絡、③土・日・休みの子どもの多さ(集客予測)、などを伝え、必要に応じて④マニュアルの指導をしている、とのことであった。この時に健康管理をしており、無理をしないように配慮することも合わせて行っている。またそれぞれの持ち場については、勤務表で伝えられ、ミーティング終了後各自の持ち場に移動する。基本的には2人一組で行動をすることを原則としており、勤務中に何か問題が発生すれば連絡をすることとなっている。勤務中はおおよそ1時間に1度5分程度の休憩をとっており、その取り方は障害従業員の自主性に任されている。お昼ごはんも同様となっている。基本的には他の従業員も休憩する食堂で休憩をしており、私が訪問をしたときにも一人の障害従業員の方が短い時間、飲み物だけ口に含んで、すぐに職務に戻られていた。店舗内では他のテナント従業員からの目もあるが、サボるような様子が報告されたことはなく、非常にまじめに働いているという評価を受けているようであった。
職務については、店舗内又は駐車場にちらばって置かれているカートを回収して、所定の場所に戻すことが主であるが、採用当初からOJTとして、先輩の従業員がその指導にあたることとされていることが、本事業所における障害者雇用の特徴の一つと言える。カートはカート回収場に一旦集め、その後に決められたカートをひとまとめにして移動をさせる。以前はカートを移動させる台数を制限していなかったそうだが、お客さんにぶつけそうになったり、危険な場面が見られたりしたために、制限をするようになった。このような配慮と、何かあった場合には、まずはお客様にご迷惑をおかけしたことを謝る、という指導を徹底することにより、これまでのところ目立ったトラブルもなく職務に従事している。
このほかの業務としては、駐車場内での清掃・カート回収時などに拾えるような大きなごみは拾う、各テナントからの設備管理の情報が伝えられれば、その内容を管理課の担当者に伝える、といったことも担っている。


3. 事業所としての取り組みについて
本事業所として障害従業員の雇用及びその継続のために、行っている取り組みとしては次のようなものが挙げられる。①助成金の活用、②職場体験の実施、③障害従業員の話に耳を傾ける、④その他、である。
①の助成金は特定求職者雇用開発助成金や業務遂行援助者の配置助成金の活用と、市独自の助成金の活用である。本事業所においては最低賃金での雇用を原則としており、この給与面での待遇を維持するために助成金の活用が図られている。次に②の職場体験は、障害従業員を紹介先でもある市内の事業所から1日に一人程度の方をアルバイトという形で繁盛期等に一時的に受け入れ、職場を体験する機会を設けている。③は管理課の管理職だけでなく、今回話を伺った総務課の管理職の方も、時間を見つけて話をよく聴くようにしているとのことであった。またこのことにより、精神障害そのものに対する理解が深まったというような副次的な効果も挙げられている。④としては現在雇用している障害従業員のほとんどが特定の事業所からの紹介であることもあり、その事業所職員が時々、本事業所に見学に来られたり、障害従業員の日常生活を支えてくれたりすることにより、職業生活の安定が図られているとのことであった。
ここまで本事業所において障害者雇用が進展した要因としては、本事業所において従事している職務が、精神障害者の方にとって比較的人とのかかわりが少ない職務であるにもかかわらず、市内の大きなショッピングセンターで働いている、という社会的認知度の高さが自信につながっているのではないか、とのことであった。またこれまでに雇用した障害従業員の勤務態度がよく、欠勤や遅刻・早退がほとんど見られないことも、安定した人材として、事業所が計画に組みやすいということが挙げられる。
4. 今後について
今後の本事業所における将来展望として、現状の障害者雇用を維持していくことはもちろんではあるが、障害従業員に可能な職務があれば、随時拡大をしていきたいという考えは常に持っておられるとのことであった。ただそこには、コストパフォーマンスを考えることの必要性や可能な職務の開発等も絡んでおり、簡単ではないとのこと。しかしながら本事業所ではこれまでに身体障害者の採用についても取り組まれており、実績としては十分に可能な要素を持っていると考えられるので、各テナントとも連携を図りながら、職務拡大や雇用拡大を図られることを期待する。

アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。