事業所名

株式会社島根東亜建物管理

所在地

島根県松江市

事業内容

サービス業（清掃、ビル管理）

従業員数

107名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	3	設備管理1人、清掃2人
内部障害	2	清掃
知的障害	0
精神障害	4	ホテルベッドメイク2人、清掃2人

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、背景
3. 取り組みの内容、効果
4. 今後の課題、展望等

事業所外観

1. 事業所の概要

平成21年で38年目を迎える総合ビルメンテナンス業である。本社所在地は松江市浜乃木で、出雲市に営業所を展開している。

事業内容は清掃管理、設備管理、環境衛生、保安管理業務等を通して、ビル空間で生活される方々へ安全で快適な環境を提供することである。建物とともに多様化する顧客ニーズへの対応、及びノウハウの蓄積を重ね、現在では一般的なビル管理のみならず、マンション、物流業務、ホテル等あらゆる用途の施設における維持管理を手掛けている。

2. 障害者雇用の経緯、背景

障害者雇用については、今まで身体障害者を中心に何人か雇ってきた経過があった。障害者向けの求人ではなく一般の求人に応募し、面接のうえ採用するという状況であった。精神障害者の雇用に取り組もうと考え始めたのは平成20年の8月である。

当社では平成19年から松江市内のホテルのベッドメイクを行っているが、業務量が多く、通常のメイク担当者だけでは効率を上げることが難しい状況であった。そこでリネン類の分別、搬出等の補助的な業務を切り離し、別のスタッフに担当させることで効率を上げることを検討していた。ちょうどその頃、障害者のトライアル雇用制度についての情報を聞いたこと、補助的な業務は定型的な仕事であり、体力があれば障害のある方にも十分可能な仕事ではないだろうかと考えたことから、障害者雇用を検討するに至った。その後ハローワーク松江に相談し、松江障害者就業・生活支援センターぷらす（以下、「ぷらす」という）も含めて協議を重ね、精神障害者を雇用することとして計画を進めた。

実習、面接を経て平成20年10月からトライアル雇用で2名の精神障害者を採用、平成21年1月にトライアル雇用を終了し正式に採用している。

3. 取り組みの内容、効果

（1）求人から採用までの流れ

ハローワーク松江、ぷらすから候補者を数名推薦してもらい、まず現場を見学し雰囲気や仕事内容を掴んでいただいたうえで、1名3日間ずつの実習を行った。実習中は、ぷらすのスタッフが見守り、指導補助等のサポートを行い、現場担当者だけでは指導が行き届かない面をカバーした。実習の中で、テキパキと動けるか、きちんと挨拶ができるか、敬語で対応ができるか、報告・連絡・相談ができるか、作業スピードが向上していきそうか、等について確認し適性を見極めた。

その後面接で本人の意向を確認し、2名をトライアル雇用で採用。作業スピードの向上等課題もあったため、採用後は島根障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用した。

実習中の様子

（2）業務内容

業務内容はベッドメイク補助である。メイク担当者が各部屋の清掃、リネン類の交換に専念できるよう、補助的な業務を切り出して行っている。

<主な業務>

・リネン類のはがし、仕分け、袋詰め、搬出。

・ゴミの分別、収集、搬出。

・リネンの補充、整理。

宿泊者数等により日によって状況が異なるため、各階のメイク担当者とコミュニケーションをとり、役割分担をしながら業務を進めている。勤務時間は9時半から13時半で、週5日勤務である。

リネン類の仕分け

袋詰め

搬出

（3）現場での不安とその解決

採用した2名（Aさん、Bさん）については、障害者だからという特別な配慮はしていないが、現場担当者には当初、障害者と一緒に働くこと、指導面等の不安がたくさんあったという。

現場の班長によると、「当初はとても緊張していて、話しかけてもなかなかコミュニケーションがとれず心配だった。また、作業の指示がうまく伝わらない、覚えてもらいにくい、流れがなかなかつかめないことがあり不安があった」という。

その一方でAさん、Bさんも、「職場になじめるだろうか、仕事が覚えられるだろうかという心配があった。障害のことで差別されたり、冷たくされたりしないだろうかという不安があった」と話している。

そのようなお互いの心配、不安は時間が経つにつれて解消されていったようである。「メイク担当者達とも打ち解けてきて、話しかけてくれるようになったので、大丈夫かなと感じるようになった。ゆっくり時間をかけて指導することによって、スムーズに出来るようになったので大丈夫だな、と安心出来るようになった」と現場の班長は話す。Aさん、Bさんも「精神障害についての差別は全く無く、本当に普通に接してくださることで安心した。仕事のことで注意を受けることはあるが、それは仕事のため、自分のためなので、当たり前のことだと考えている」と話す。

また、ジョブコーチの果たす役割が大きかった。「一番指導が難しかったのは、時間が限られているなかで、時間内に色んなことをやってもらおうということが伝わりにくかったこと。要領良く、より良い作業手順を教えようと思ってもうまく伝わらなかったことが苦労した。それをジョブコーチの方とも話し合いながら、ジョブコーチの方からうまく伝えてもらうことで、かなり助かった」と班長は話している。

（4）取り組みの効果と今後

Aさん、Bさんは3ヶ月のトライアル雇用期間中、ほとんど休むこともなく、とても真面目に取り組んだ。挨拶やマナー等も一定のレベルに達しており、「いてもらわないと困る存在」となっている。

これは、ゆっくり気長に現場の班長が指導してくれたことや、ジョブコーチ、ぷらすの方に継続的に色々と支援をしてもらった成果だと考えており、とても感謝している。

ベッドメイクの仕事というのは年中無休、365日の仕事である。一番大事な事は休まず出勤してもらうことであり、多少のことがあっても毎日出るための体力、気力が大変重要だと考えている。AさんBさんとも本当に意欲的に取り組んでいると評価している。

2人も仕事をすることで大きな充実感を得ているようだ。「この仕事はとても面白い。やらなければやらないで、まだ残っているというのが見えるし、やったらやったで、片付いたというのがはっきり分かるため、達成感がある。身体が締まってきたが、体力は落ちていない。給料ももらえるようになって経済的に助かっているし、仕事を始めてから生活が充実感で一杯。トライアル雇用が終了し、会社から引き続き勤めてほしいと言われたときには本当にうれしかった」と話している。

4. 今後の課題、展望等

今後はベッドメイク業務全体の更なる効率アップのため、スピードを高めていくことが課題である。効率性を高め、コスト削減を追及していかなければならず、障害者だからということは関係ない。これはAさんBさんだけではなく、他のメイク担当者にとっても同様の課題であり、そのために作業内容を見直し、手順書を新たに作成し直す等の工夫をしながら試行錯誤している状況である。新しい作業手順の定着のために、引き続きジョブコーチの方に指導してもらっている。2人も効率アップのことを十分に自覚しており、「スピードアップして頑張って、体力が続く限り今の仕事を続けていきたい。」と話している。

障害があってもこの2人のように意欲的で、支援機関のサポートを受けることによって業務を遂行できる方はたくさんいるのではないだろうか。今後も積極的に障害者雇用に取り組んでいきたいと考えている。