約2年半前から障害者雇用担当者として携わってきた経験談と想い
- 事業所名
- 株式会社ショット
- 所在地
- 岡山県倉敷市
- 事業内容
- アウトレットショップとしてカジュアル衣料品を販売している被服小売業
- 従業員数
- 270名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 物流管理 聴覚障害 1 物流管理 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 理解し合える職場環境を目指して
今回の内容は、約2年半前からハローワークの協力のもと障害者雇用を本格的に進めていくようになり、どのような経緯をたどってきたのか、そして、実際に障害者を雇用する前のできごと、持ち合わせていた期待と不安な思いが、現在、勤務している2人の障害のある従業員と共に同じ職場で働いていく日々の中でどのように変化していったのかを体験談を交えながら説明する。
現在働いている障害者の2名、横見正弘さんと三谷広行さんは物流を管理する現場で勤務している。当社は核となる販売店舗「CASUALOUTLET SHOT」を岡山・山陰・近畿・九州に22店舗持ち、年間2店舗以上の出店計画を立てながら、カジュアル商品を販売している会社である。他の衣料販売店舗と大きく異なるのはイレギュラー品(キズ・シミ・ヨゴレ・ホツレ等の少々難有り商品)を扱っているところで日常の着用にはほとんど問題のない品を検品、補正をして大量仕入販売していることである。
この規模で実際に動いている商品量は前年度データで年間約1000万点以上。障害者2名はこれだけの商品をそれぞれの持ち場担当で荷受、チェック、振り分け、梱包、荷出し等の業務を日々行っている。時にはその日に届いた荷物を倉庫に搬入する作業だけで1日を終えてしまうこともある。
何故この現場を障害者雇用していく現場として選んだのかと言うと、自身も物流の作業に入ることもあるので同じ現場の方がコミュニケーションを取りやすい。そして障害者を雇用していく責任者であると同時に採用に至るまでの過程では、自身が唯一の接点であること、だからこそ入社してからも、障害のある従業員にとってよき理解者でありよき相談相手でないといけないという思いでこの現場を選んだ。何か奇麗ごとばかり書き並べているようにも取れるが、もし自分が採用される立場であったならばよき理解者が側にいることで少なからず安心感を持つことができるのではないかと思ったからだ。
実は、当時もう一つの採用現場の候補地として販売店舗も挙げていた。と言うのもある衣料品販売会社では、各販売店舗の倉庫業務としてたくさんの障害者を雇用されていると聞いていたので、当社でも実現できないかと現場担当者とも話し合い前向きに検討していた。しかし、当社の扱う商品量が多く、店舗倉庫が他社より小さいという事情もあって、どうしても危険をともなってしまう可能性が高いと判断し、断念する結果に至った。このような話し合いもあって、今現在では本部の物流を管理する場で連携を取りながら共に仕事に励んでいる。
こうして原稿を書きながら思うことは、「障害のある従業員と日々コミュニケーションをとれる環境で良かったなあ、自分自身も何かあればすぐに動くことができる安心感を持てているように、障害のある従業員も同じように何かあればすぐに相談できるという気持ちでいてくれたらなあ・・・」と感じている。


2. 次に活かすべき経験談
実は、今こうして障害者雇用への取り組みを、ハローワークと本格的に進めていく以前にも、別の現場に障害者手帳を持っている従業員が在籍していたことがあった。当時の現場環境には、現在のような障害者雇用に対してきちんとした受け入れ態勢がなかったので、アルバイト募集での面接となった。一般のアルバイト募集だったからだと思うが、当時その従業員は、面接の時も勤務し始めてからも障害についての説明はなかった。その従業員が足に少し障害があることは面接時に確認できていて、本人も大丈夫だと言うことなので採用になり入社していたが、結果半年で退社することになった。退社する主な理由は指導・教育する場での人間関係だった。その従業員も他のスタッフも退社という結果を求めていたわけではないし、何度も話し合いの場をもって接したのが残念な結果となってしった。
障害者手帳も持っている事を知らされたのは退社することになる2週間前くらいだった。最後の話し合いでは、お互い理解し合うことはできたのだが、もっと早い段階で何かできることはなかったのかと反省している。スタート時に自分自身が障害のある従業員であるという認識を持つことができ、そして、現場のスタッフ達にも前もって理解ある説明ができていれば、退社という結果ではなく、少しでも良い結果になり得ることができたのではないかと思う。当時、この経験と同じ事にならないようにするにはどう進めていくべきかをいろいろと考えた。一般のアルバイト募集で障害者が応募してくることもなかなか難しい事であるし、いざ面接に来ても障害者の方から「私は障害者です・・・」と言うのも言いづらいことだと思う。以前から社長にも「障害者の方が面接に来られたらしっかりと話し合いをして前向きに検討して行こう!」と言われていたのに、このような残念な結果になってしまう。今後は何か別の手順を追わないといけないなと考えていながらも、これと言った案も浮かばないままの日々だった。お恥ずかしい話だ。
3. 理想的な連携をとって
そんな最中、労働局の方とお話する機会を得ることができ現状を報告することになった。お恥ずかしい話だが、当時の現状は障害者雇用0名のため、いろいろと指導があり、この話し合いの後にハローワークの協力のもと、本格的な障害者雇用計画がスタートすることになった。
まずは、人材の選考に慎重に時間をかけて考えた。数日後に、現在勤務している横見さんを候補に挙げた。横見さんは重度の視覚障害者で、資料によると視野がかなり狭いという内容だった。まずは、直接会っていろいろと話し合ってみようと思い、ハローワークから連絡を取り、面接を行った。過去と同じような結果にだけはなりたくなかったので、お互いが一つでも多くの理解をし合えるようにと、たくさんの説明と相談をし合った。結果、アルバイトからではあるが、横見さんの正式採用に至ることになった。その時にすごく実感したことがある。
「ハローワークというフィルターを通して面接を行うことで、障害者は会社を理解しながら、少しでも不安材料を取り除くことができる。会社側は、ハローワークを通じて障害者をしっかり理解し、正当な評価をすることができる。この環境が理想的だな。」と強く感じることが出来た。


4. 予想外の展開
横見さんの勤務先が本社の物流管理場に決まり、自身も本社勤務のため、指導者となり仕事がスタートした。最初は、何もかもが分からないことだらけだったので苦労していたようだが、黙々と仕事に励んでいた。愚痴一つこぼさず日々の業務をこなしていた。そんな中、入社して1年半が来ようとしていたある日、上司から声が掛かった。「横見さんを連れて奥の部屋へ来るように・・・」と。正直なところ「何かあったに違いない、何かミスでもしていて注意を受けるのか・・・?」と思った。前振りが何も無かったので不安と心配の方が先によぎってしまった。横見さんが話し合いの後で「きっと何かの件で怒られるのだろうと思ってめちゃめちゃ緊張しましたよ!」と言っていたのを今でも鮮明に覚えている。そして、同じ心境で部屋に入り椅子に座ったのだが、上司が伝えたかったことは、2人の想像していた内容とはまったく違った内容だった。挨拶から始まっていきなり「横見さんひとつ質問なのだが、正社員になりたいと言う希望はあるか?」と言う質問だった。入社してから黙々と仕事に励む評価を定期的に状況報告してはいたが、雇用時にまずはアルバイトからという話しだったし、相談されることも無かったのでまさかこんなに早い時期に正社員の話が振られるとは思ってもいなかったので本当にびっくりした。まさにあのような出来事を衝撃的な瞬間とでも言うのだろう。
5. 感動と期待
横見さんからも意欲ある返事があり、今では正社員としての責任感を持ちながら一生懸命仕事に励んでいる。横見さんから「岡村さん、本当に有難うございます。これからも頑張りますので宜しくお願いします。」と、感謝の言葉があった。入社したての頃に入社前のいろいろな出来事も聞いていたし、横見さん本人の努力の積み重ねでつかむことが出来た事実を本当に嬉しく思う。今後も、今以上に物流管理の多くを任せられるよう日々の成長を期待している。改めて障害者雇用担当としてのやりがいがまた一つ増えたなと実感できる出来事だった。

6. 新たな成長を求めて
このような貴重な経験を積み重ねながら、昨年の9月には2人目の障害者雇用として三谷広行くんが入社することになった。本社ではなく別の物流センターに配属となったが、そのセンターの物流管理者が責任を持って担当している。三谷くんは聴覚障害者なので筆談を主にコミュニケーションとして連携を取っている。現場では、フォークリフトを使用していたり、荷物がたくさん置かれているため、まずは、安全性を高めていくために目で確認が出来るセンサーパトライトを導入していく予定である。
自動車の運転免許も取得する意欲を見せているので、いずれは近場の倉庫間の運搬や別倉庫の商品管理などを任せられるように成長してくれることを期待している。

7. 経験を通じて
最後になるが、さらに1人でも多くの障害者雇用に取り組んでいけるように、今後もハローワークと雇用開発協会と共々連携を取りながら前向きに計画を立てていこうと思っている。障害者も含めて携わる一人一人の理解ある連携が必要だ。会社側の取り組み方ひとつだとは思うが、この連携プレーこそが、障害者にとっての新たな職場を提供できる最善の手段であり、また会社にとっても、職場状況に合わせ適切な人材を判断することができる理想的な手段だと思っている。
そして何よりも障害者、会社側の双方が、理解し合えるまでのコミュニケーションをしっかり取ることができる、これがとても必要な事だと経験を通じて思っている。
あくまでも書いているのは、障害者雇用担当者としての実際にあった経験の中での個人的な意見にしか過ぎないし、まだまだ経験し始めたばかりの頼りない体験談だが、読まれた方に1人でも同じような理解を持ってもらい、1人でも多くの障害者が採用となり、新たなスタートが迎えられるよう前向きに取り組んでもらえればと願っている。

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