特例子会社設立による障害者雇用の推進

1. 事業所の概要
(1)会社設立の経緯
平成19年 6月 | 親会社である生協ひろしまの通常総代会において子会社特例認定を受けることを前提とした障害者雇用事業所の設立を決定する |
平成19年10月 | 会社登記 社名を『株式会社ハートコープひろしま』とした |
平成19年11月 | 知的障害者5名を採用し事業開始 |
平成19年12月 | 公共職業安定所より子会社の特例認定を受ける |
(2)事業内容
親会社の生協ひろしまが組合員に供給する農産品の検品、検量、パックを行い指定された数量を納品する。取り扱う農産品はじゃが芋、里芋、玉ねぎ、ミニトマト、柑橘類と様々であるが、1日7.5時間勤務の中で約700点~1,000点を納品している。

2. 障害者雇用の経緯
親会社の生協ひろしまでは、障害者法定雇用率が平成18年6月で1.79%平成19年3月で1.86%というように企業の義務である法定雇用率1.8%前後の推移であったため、企業として雇用義務を果たすことはもちろんのこと、更なる障害者雇用をすすめ企業としての社会的責任を果たしていくため特例子会社の設立を決定した。その結果、平成19年12月には法定雇用率2.37%へと大きく向上した。
子会社設立の目的は、以下のとおりである。
・ 生協ひろしまとして、知的障害者を雇用し、就労を通じての社会参加、働く喜びや生きがいを得られるように支援する
・ 一般的に雇用率が低いと言われる小売業界の中で、知的障害者の雇用を促進することで、生協としての社会的責任を果たしていく
・ 福祉及び障害者の実状、社会参加について生協ひろしまで働く職員の理解を深め、福祉に関わる組織としての教育機能を果たす
・ 生協の社会的貢献度を向上させ、地域社会にアピールする
3. 取り組みの内容
(1)従事業務
当初は、障害者5名、管理者1名、パート社員1名の計7名でそれぞれ役割を分担して業務を始めた。
業務の手順は
①農産品質規準に沿って検品・・・カビ、キズ、腐りを探す

②規格の重量に合わせる・・・玉ねぎであれば710g~740g

③再度検品して包材に入れる

④自動搬送袋とじ機でクリップして検量する

(2)加工点数の推移
①加工点数の推移(商品種類別)
企画回 | 玉ねぎ | じゃが芋 | 柑橘類 | ミニトマト | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
11月③回 | 1,934 | 820 | 2,754 | ||
11月④回 | 2,337 | 821 | 3,158 | ||
12月①回 | 1,877 | 919 | 2,796 | ||
12月②回 | 1,509 | 793 | 2,302 | ||
12月③回 | 1,833 | 967 | 1,003 | 3,803 | |
12月④回 | 1,667 | 705 | 1,567 | 3,939 | |
12月⑤回 | 1,754 | 769 | 2,523 | ||
1月②回 | 1,665 | 830 | 2,495 | ||
1月③回 | 2,167 | 2,167 | |||
1月④回 | 1,647 | 703 | 2,350 | ||
2月①回 | 2,094 | 755 | 400 | 3,249 | |
2月②回 | 1,298 | 956 | 400 | 2,654 | |
2月③回 | 2,064 | 1,363 | 400 | 3,827 | |
2月④回 | 1,706 | 1,014 | 300 | 3,020 | |
3月①回 | 2,276 | 1,134 | 400 | 3,810 | |
3月②回 | 2,202 | 1,266 | 400 | 3,868 | |
3月③回 | 3,702 | 1,151 | 4,853 | ||
3月④回 | 2,637 | 3,192 | 5,829 | ||
4月①回 | 763 | 953 | 1,716 | ||
4月②回 | 910 | 2,000 | 2,910 | ||
4月③回 | 707 | 400 | 1,107 | ||
4月④回 | 4,251 | 875 | 5,126 | ||
4月⑤回 | 450 | 1,119 | 400 | 1,969 | |
5月①回 | 445 | 1,566 | 400 | 2,411 | |
5月②回 | 403 | 1,629 | 2,032 | ||
5月③回 | 1,027 | 1,027 |
②加工点数の推移(総合)

(3)社員指導のポイント
ポイント①
・商品の品質チェック規準は解りやすく掲示


ポイント②
・障害者だから・・・は禁句.
あいさつ、言葉遣い、話を聴く態度、返事、身だしなみは社会人の最低限のマナー
⇒できない時はその場で注意し、正す。
・『安全第一』で!
建物内の移動、商品の扱い方、危険物の扱い方には特に注意して目を向ける。
通勤時の安全ルートを守らせる。
・保護者との連絡を密にする.
指示したこと、注意したことが守れない時や重要な伝達事項は保護者に連絡をする。
ポイント③

(4)社員の就労状況
生協ひろしまが指定する検品規準及び規格に従って業務を行っている。業務開始当初は検品規準をどこまで理解することができるか不安であったが、カビや傷み、腐りの見本に解説を入れて写真で掲示したり、判断に迷った時には即時管理者や支援担当に相談して指示を受けることを繰り返して経験を重ねていった。
また、検量作業も電子はかりで行っているが、このはかりを使いこなせるかどうかを心配したが、業務開始前の5日間の研修できちんとマスターすることができた。
業務開始当初は、じゃが芋と玉ねぎの2品目で1日当り500~600点のパックであったが、繁忙期には1日当り1,200点のパックができるようになるまで成長した。
中には検品時の見落としがあり、不良品を出荷してしまうこともあるが、平成20年度上半期における当社の不良出荷率は0.017%に留めており納品元の業者や親会社から良い評価を頂いている。
社員は障害を持っていても持ち前の素直さ、こだわり、そして何よりも働ける喜びを感じながら一生懸命仕事をしている。わかりやすい指示を出すことでスピードは遅くても確実な作業をこなしている。
勤務態度も良く、無断欠勤や出社拒否等も無く、皆で声を掛け合いイキイキと働いている。また、社員同士の交流の場も大切にしており、毎月末には食事会や野球観戦、ボーリング大会等を行っている。社会人として、良い消費者として、今後の自立を願っている。
(5)雇用支援機関との連携
支援機関名 | 摘 要 |
---|---|
ハローワーク | ・特例子会社の設立相談・認定 ・社員募集と処遇に関する相談 ・採用面接会の開催 ・トライアル雇用の申請手続き |
広島障害者職業センター | ・重度知的障害者の判定申請 ・ジョブコーチの研修受け入れ |
社団法人 広島県雇用開発協会 |
・障害者職業生活相談員認定講習の受講 ・助成金(作業設備設置・業務遂行援助者の配置)の相談・申請 ・障害者雇用納付金(調整金)の申告・申請(親会社実施) ・平成20年度障害者雇用推進セミナーに於て雇用事例を講演 |
社団法人 広島県就労振興センター |
・職場実習の受け入れ ・平成20年度定期総会に於て雇用事例を講演 ・平成20年度ジョブコーチ養成研修に於いて雇用事例を講演 |
(6)公的助成金の活用
機 関 名 | 助成金名称 | 内 容 |
---|---|---|
ハローワーク | ・特定求職者雇用開発助成金 | 採用者5名に対し助成金を申請 |
・トライアル雇用奨励金 | 採用者5名に対し奨励金を申請 | |
・雇用支援制度導入奨励金 | 障害者の指導援助者を採用し継続雇用したことの奨励金を申請 | |
高齢・障害者雇用支援機構(当時) (雇用開発協会) |
第1種作業施設設置等助成金 (作業設備) |
農産品の袋とじ作業を自動化することで、社員が検品・検量作業に集中でき、作業負担を軽減。安定就労が期待できる。 ・自動搬送袋とじ機 1台 ・デジタルはかり 1台 (平成20年5月8日設置) |
業務遂行援助者の配置助成金 | 支給対象障害者3名に対し、援助者1名を配置 (平成19年12月1日スタート) |
4. 社長等のコメント
(1)社長
ともにはたらき、ともにいきるために
株式会社ハートコープひろしまは、「障害者の雇用促進等に関する法律」に基き、平成19年12月に生協ひろしまの特例子会社として認定されました。
「障害者が、ごく自然に自立できるとともに参加できる社会をつくりだそう」という「ノーマライゼーション」という考え方があります。
生協ひろしまでは、これまで障害のある方に対して介護事業のサポートをはじめ、署名や募金また福祉祭りの開催などを通し、組合員活動としても積極的に取り組んできました。これからは企業としても障害を持つ方が「働く」ことのできる場を設け、この「ノーマライゼーション」を推進することこそ私たちが地域社会に貢献するための大きな責任であると考えます。この障害者雇用の取り組みが地域社会に広がっていくことを説に願っています。
(2)事業部長
社員が一生涯働き続けることのできる会社に
ここで働く皆さんの仕事は、生協ひろしまの組合員さんからご注文をいただいた商品の品質をチェックして包装加工するというとても重要な役割を担っています。
それだけにやりがいを持って一生懸命に、健常者に負けないくらいのまじめさで働いています。この取り組みは「福祉」でなく「ビジネス」です。
今後、規模を拡大し第一期生の社員はもちろん、今後採用する社員も自立して定年まで働き続けることのできる企業にしていきます。
(3)保護者(社員の母親)
自信に満ち溢れ、背筋もピン!
智裕は、毎朝5時半に起きて7時前に家を出ます。その姿は、堂々としていて背筋もピンと伸びています。中学・高校の時はいつも下を向き、猫背で歩いていたのに、ハートコープに入ってからは周りの人からも「姿勢がよくなったね」と誉められるようになりました。家でも、「今日は玉ねぎが400パックもあるから、大変なんだ」と、得意そうに話してくれ、はりきって仕事をしている姿が目に浮かびます。
人とのコミュニケーションが苦手な智裕は、健常者の中で仕事をするとつぶれてしまうのでは、と心配していました。心を開いて話ができる今の職場では、通勤時や休憩中に仲間と野球の話などして楽しく過ごしているようです。この間は、休日に遊びに行く約束もしていたようで良い仲間にめぐり合えたことを本当にうれしく思います。
障害のあるお子さんを持つ保護者の方々と話していると、障害者の雇用がまだまだ厳しいことを痛感します。正社員での採用は少なく、給料も少ない、保険なども完備されておらず、どうやって自立して生活を送ればいいのかみんな不安を抱えています。そんな中、智裕はハートコープという会社に就職することができました。
この特例子会社という制度が広まり、障害者が働き続けられる社会が広がっていくことを心から望んでいます。
5. 今後の課題
社員の健康管理(法定健診・衛生学習)、安全管理に留意して作業改善をすすめながら全体の作業スピードを上げて新たな品目拡大にチャレンジする。
当事業所では、作業スペースが狭く大幅に雇用人数を増やしての事業拡大は難しいため、新たな事業所を設置して農産品加工以外の業務を取り入れていく必要がある。親会社の生協ひろしまでオーバーワークになっている部分や他の障害者雇用事業所の行っている作業を参考にしながら事業の拡大とともに障害者雇用を進めていく。
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