事業所名

株式会社香蘭社

所在地

佐賀県西松浦郡

事業内容

美術陶磁器及び工業用陶磁器の製造販売

従業員数

364名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	5	美術陶磁器の中間検査、出荷作業、新製品の開発・製品の設計
内部障害	0
知的障害	1	拭き上げ作業、出荷作業
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 取り組みの経緯、背景
3. 取り組みの内容及び効果
4. 今後の課題・展望

事業所外観
（本店ショールーム）

1. 事業所の概要

(1)沿革

明治8年、八代深川栄左ヱ門氏が高い技術を持った陶工や絵付師、陶商を一つにまとめ結社をつくり、香蘭社を創設する。その後、世界各国で行われた万国博覧会で数々の金牌を受賞し、明治29年には宮内省御用達の栄に浴する。昭和45年10月、株式会社に変更、今年創業130年を迎え今日に至っている。

障害者雇用については、昭和36年4月頃より、身体障害者を雇用したことに始まり、知的障害者の雇用など、障害者の雇用環境の整備等も進め、平成21年1月26日現在6名の障害者を雇用している。

(2)従業員数364名 うち障害者6名 （平成21年1月26日現在）

（ ）内は重度障害者

2. 取り組みの経緯、背景

香蘭社の従業員数は364人で障害者の雇用は6名、うち、重度障害者1名であるため、障害者雇用率は1.92%となっている。障害者雇用の取り組みは、昭和36年頃より行っているが、これは、障害者を意識して採用したというよりも、一般採用の中にたまたま障害者がおり、仕事に支障がなければ、雇用には問題ないと判断し採用をした。

平成17年頃より、公共職業安定所や高齢・障害者雇用支援協会等からの雇用相談があり、身体障害者を雇用した。また、平成19年11月には、現在まで元気に働いていた職員が病気になり、半身麻痺という後遺症を伴って職場復帰を果たすことになった。このため、これを会社全体で支援することになり、障害者用トイレの新設、事務所入り口のスロープや手すり等の設置をするなど、社内のバリアフリー化を推進し、雇用環境の改善に取り組む等、障害者雇用に積極的に取り組まれている。

平成20年4月からは、知的障害者支援施設からの雇用相談があり、職場実習の結果が良好であったため、知的障害者の雇用も進めている。

事務所玄関のスロープの新設

洋式トイレの新設

3. 取り組みの内容及び効果

（1） 障害者雇用の取り組み

身体障害のある従業員は、美術陶磁器の中間検査や出荷作業に従事している。また、半身麻痺で職場復帰した従業員は、技術部の課長として、新製品の開発や製品の設計等に従事していたが、復帰後もその職責に従事されている。また、職場環境の改善等により身体機能も向上し意欲的に仕事に取り組んでいた。

知的障害のある従業員は、美術陶磁器の製造工場で上絵付の前工程である拭き上げ等の補助作業に従事していた。知的障害者の雇用にあたっては、初めてということもあり、本人との信頼関係を築くことに留意し、作業状況に合わせて本人ができる範囲を見定めつつ、少しずつ仕事を教えながら、自信を持ってやれるよう励まし、仕事の幅を広げていけるよう配慮していた。

また、業務遂行援助者を職場ごとに配置し、作業器具の設置や改善、作業内容や工程の検討等について随時意見を聴きながら対応する体制がとられていた。

（2）雇用の効果

身体障害のある従業員の中には、作業を行う上で特に支障が無い者もおり、その場合、雇用の効果も他の健常者と何ら変わらない状況にある。しかし、中途障害の従業員が職場復帰し、病気になっても雇用が継続できる職場であるということが他の社員に与えた影響は大きいものがあり、同時に、障害に対する理解も社員の中で深まってきている。また、職場復帰に伴う職場環境の改善を進めて行く中で、来客者も含めた会社全体のバリアフリー化も推進されている。

知的障害者の雇用はまだ始まったばかりであるが、遅刻や欠勤も無く、一生懸命仕事に取り組む姿勢は、他の社員にも良い影響を与えており、本人も含めて、社員同士のコミュニケーションもより深まってきている。

（3）生活面での支援

中途障害の従業員の職場復帰に伴い、勤務部署のすぐ近くに、車いすマークを記した専用駐車スペースを設けて、通勤しやすい配慮がされていた。また、知的障害のある従業員の家族との連携を取るために「連絡ノート」を作って、会社での仕事の状況や残業がある場合などの連絡を密接に取り合う体制がとられていた。

香蘭社においては毎月、誕生会が開催され、社長・副社長を囲んで食事会が開催されている。また、ボーリング大会や懇親会等も定期的に実施されており、障害者の方も積極的に参加されているということで、経営者と社員間のコミュニケーションも重視していた。

障害者職業生活相談員や業務遂行援助者を対象にした研修会やセミナーには、積極的に参加しており、障害者の特性や個性を理解した上で働きやすい環境を作っていこうとする姿勢が窺い知れた。また、高齢・障害者雇用支援協会をはじめとして、公共職業安定所や障害者支援施設、障害者就労・生活支援センター等とも常時連携を取られており、必要に応じて、障害者の雇用管理に関する助言や支援を受ける体制がとられていた。

新製品の開発

検査作業

上絵付の拭き上げ作業

4. 今後の課題・展望

障害者の雇用率を達成することは会社として社会的使命を果たすことであるとして、今後もできる範囲での雇用を促進していきたいというのが香蘭社の方針ということであった。

受け入れ側としての準備や研修等も必要であるため、関係機関との連絡調整を進めながら知的障害者の雇用についても、今後更に受け入れを拡充していく予定とのことであった。

しかし、今後4～5年のうちに、退職していく社員が急増することが見込まれており、技術力の高い社員も多く含まれていることから、後継者の育成が今後の課題となってくる。その意味で、障害のある従業員が今後どの程度仕事の技能を高め、補ってくれるのかということも障害者雇用の進展と関係してくると考えられる。

身体・知的いずれの従業員も職場では明るい表情で意欲的に仕事に取り組んでいた。障害者の方と他の社員との意思の疎通も十分に図られており、障害者にとって働きやすい職場という印象であった。これは、障害者雇用の管理責任者が熱心であるということや職場環境の改善に積極的に取り組まれているということもさることながら、人を大切にする会社としての伝統が息づいていた。