事業所名

株式会社木村コーポレイション

所在地

大分県杵築市

事業内容

化成品・半導体製造請負・人材派遣業、介護事業部、メンテナンス事業部

従業員数

500名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	7	製造業務（1）、製品運搬（1）、介護ヘルパー（1）、清掃業務（4）
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	1	清掃業務

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 雇用の促進・安定のための取り組み
4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

事業所外観

1. 事業所の概要

日出から空港方面に向けて国道213号線を走る。途中、相原から農道に入り約10分、坂道を上りきったところに工場らしきものが点在する。周囲はのどかな田園風景がさわやかである。突然右手に周りの工場とは異質の瀟洒な民芸風の建物が目に入る。木村コーポレイションが自社経営している高齢者介護施設「初音の里」である。癒し観を漂わせる大型施設である。会社全体のロケーションや各施設の部屋の間取り・種々の設備へのこだわりの中に、例えば風呂場の男女浴槽（温泉）一つをとってみても起業者の福祉理念が伝わってくる。その理念を実現する実働部隊のリーダーが採用事業部九州地区統括主任本多充氏と採用担当加藤顕氏である。

（1）事業の特徴、経営方針

会社案内の冒頭に「大地に大きく根をはり、力強く伸びる枝葉。そしてそこに集う人々。そんな安らぎと温もりのある会社でありたいと考えます」と会社概要を、また、経営理念には「“発展のパートナー”として価値の高いサービスを提供し、地域・お客様の満足と社員の満足が一致するように【高効率・高品質・高賃金】の経営をめざし、たくましく成長を続けます。弊社の最大のセールスポイントはヒューマンパワー（人材力）です。社員一人ひとりがそれぞれの職場で能力を十分に発揮できるよう徹底した教育指導を行っています。社員は常に（ハートワーク：使命に燃えて、誠実な仕事）（ヘッドワーク：目的を考えて、ムダのない仕事）（ハンドワーク：手抜きをしない、几帳面な仕事）（フットワーク：実行優先で、スピーディな仕事）を念頭に置き、日々の業務に従事しています」を掲げている。主体は、質の高い労働力を企業用に安定供給することを目的として平成元年に設立された人材派遣会社である。製造事業部・介護事業部・メンテナンス事業部の3部門で組織されている。

（2）事業の概要

3つのカテゴリーに対応し、個々の業務は勿論、業務分析から導入、運用に至る一連のフェーズを総合的に支援している。

○製造事業部門では、製造ラインの請負業務と人材派遣を行い、部品の組立・検査・出荷、業務装置の保守・点検などを行っている。徹底した教育指導のもと、各分野での高レベルな人材を、企業の業務の一部、又はトータルに仕事を請け負い、登録スタッフを就業させ、成果品を納入するシステムを確立している。

○介護事業部門では、派遣業等、企業様本位の事業活動は勿論のこと、地域に根付いた地域発展型企業として地域の方に受け入れられる企業を目指し、高齢者介護施設「初音の里（当社運営施設：ケアマンション、グループホーム、デイサービス）」を併設、運営している。そこでのヘルパー業務・運営業務等、高齢化社会に対する対応が急務と言われる昨今に、少しでもお役に立ちたいという創業者の願いを実現したとのこと。

○メンテナンス事業部門では、全員障害者にて、アパートやオフィス・工場・寮等の清掃業務や、施設や庭の管理などを行っている。

障害者雇用については、自社内の様々な業務から、適材適所を見つけ、障害者雇用を進めてきた。

高齢者介護施設
「初音の里」

2. 障害者雇用の経緯・背景

業務請負事業の拡大による、従業員の増加により、法定雇用率を達成するため障害者雇用に着手した。当初は大分障害者職業センターの支援やハローワークの指導、ジョブコーチ制度の活用などで今のシステムの骨格を創った。

障害者を雇用するにあたり、製造の請負では厳しいということもあり、それまでは外部に委託していた従業員の社員寮や、社宅の清掃から始めた。現在では、会社施設の清掃やメンテナンス、植木や芝生の管理、社用車の車輌点検や清掃など、障害者各個人からできることを確認したり、障害者自身の前職・キャリアを活かしたりなどして、仕事の創出をしている。障害者一人ひとりのスキルを活かしたり、諸々の研修でより高いスキルアップを図ったりしながら等、後述するが、派遣会社ならではの個々人の特性を活かしたシステムが散見できる。

芝生の育成等

寮内の整理整頓

3. 雇用の促進・安定のための取り組み

◎障害者の募集・採用・職場配置・従事業務・・・本人の希望・願いを大切に

職場配置の原則は、①本人の希望、②マッチしないときに、こんな仕事はどうですか、と選択肢を用意、③どうしても『製造』へとこだわる方は適性を考慮して、配置している。

現在の8名はほぼ全員が①による決定、主にメンテナンス事業部にて、会社施設の植木の管理、草刈り、寮内外の清掃やメンテナンス、社宅退去後の清掃や、備品の清掃運搬を行い、障害の影響でできない作業をお互いがカバーしながら行っている。

具体的な取り組みとしては、「庭の管理や建物の清掃という専門的にはしたことのない作業を、管理をしている私（加藤氏）も含め皆未経験な状態で、できることから行い、手探りの状態で始めた。必要な道具や、やり方なども、少しずつ毎日の打ち合わせの中で作り上げ行っている」とのことで、「基本的には、その従業員の特性に合わせて仕事をみつける」方式・手作りのメンテナンス事業が障害者のペースに（訓練に）合っていると言える。

求人の際に、単に作業職種：メンテで募集するのではなく、「庭の選定ができる方、とか自動車整備に関心を持たれている方」等、仕事のイメージが具体的に描けるように工夫して募集したことも適性を見つけるのに効果があった。

製造請負業務においては、不良製品の手直し作業を一般作業者と共に行い、本人の障害によって作業に支障を生じないような配置を心がけている。

また、障害者の仕事面や人間関係面での悩みは、ジョブコーチの活用や障害者職業生活指導員の資格取得者を社内に置き、始業と終業時のミーティングや問題があった都度、相談できる体制づくりや、日常的には障害者理解のための社員教育をしている。

4. 取り組みの効果、障害者雇用のメリット

細かく指導していくことにより、できる作業が広がり、また障害者各個人の過去の経歴から、今までは外部に委託していた仕事を、自社内で行うことにより、コスト削減に貢献している。例をあげると、過去の塗装業の経験から、社内の建物の塗装の補修工事の計画を立てたり、また、自動車整備の経験から、社用車の日常点検を行ったりしている。図-1はMさんが日々車輌点検時に用いている表である。

「未経験の庭の剪定作業や、植木や、芝生の育成も、資料を集めて独学し、皆に教えながら行っているので、新しいことも覚えながら自分にできることを少しずつ覚えていくという働きやすい環境にしている」という加藤氏が、試行錯誤の中から作成したのが、図-2,図-3,図-4である。障害者が作業の効率化を図る一助となっていると共に、外部受注の際には、即これが使用できるなど障害者雇用の副産物である。

介護補助事業においても、当初は不慣れではあったが1～2ヶ月で、教えられたことを素直に努力する態度や一生懸命な姿に感動し、協力体制が整った。ジョブコーチのアドバイスや地道な社員教育の成果である。

「雇用してみて、初めて障害者の潜在能力・可能性に気づいたことが多い。創業者は将来空いた土地（1,000坪位ありそう）に障害者専用の働く場を創りたい」と構想していると伺った。