それぞれの個性、状況に応じたやりがいのある仕事
- 事業所名
- アシックスアパレル工業株式会社
- 所在地
- 宮崎県都城市
- 事業内容
- 繊維製スポーツ用品(服装類ならびにこれに関連する用品)などの製造、販売ならびに貿易
- 従業員数
- 302名
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 縫製 肢体不自由 0 内部障害 1 縫製 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
アシックスアパレル工業株式会社は、県庁所在地の宮崎市から南西約50kmの都城市に位置する。昭和48年8月29日に宮崎アシックス工業株式会社として設立し、平成10年10月に株式会社アシックスの九州地区生産子会社の北九州アシックス工業株式会社、大牟田アシックス工業株式会社、宮崎アシックス工業株式会社の3社が合併統合して、現在のアシックスアパレル工業株式会社となった。
事業内容は、繊維製スポーツ用品(服装類ならびにこれに関連する用品)などの製造、販売ならびに貿易を主とする。
従業員数は、宮崎本店41名、隣接する宮崎工場168名、大牟田工場91名、常勤役員2名の総人数302名(平成20年10月16日現在で、役員・嘱託・パート含む)である。国内だけでなく、中国、ベトナム、インドネシアにも生産拠点を持つ。
アシックスアパレル工業株式会社は、株式会社アシックスの生産関連子会社の主力工場として、社名ASICS「Anima Sana in Corpore Sano」(健全な精神は健全な身体に宿されしと祈る)の通り、スポーツを通じて楽しさと健康を提供できる喜びのもとに笑顔のたえない職場づくりをめざしている。又従業員の健康管理について、産業医の問診や相談等を実施し、従業員1人1人を大切に考えている。
地域社会と円滑な連携を図りながら、次のことを基本理念としている。
1.心身共に健全で健康な暮らしと文化の創造に寄与する人を追及
2.従業員の幸せの追求
3.企業市民としての地域社会や生活者との良好な関係の追及
4.地球市民として国際的役割と貢献の追求
障害者数 3名
視 覚 | 聴覚・言語 | 肢 体 | 内 部 | 知 的 | 精 神 | 合 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 |
(0) | (2) | (0) | (1) | (0) | (0) | (3) |
( )は、重度障害者数内数、実雇用率2.0%
2. 障害者の職場配置、労働条件、業務内容
(1)それぞれに合った職場配置
主な従事業務は、工場内の生産チームに属したミシンを用いる縫製である。高度な技術を要求され各工程作業は流れ作業となっている。入社時に縫製の訓練が行われ、障害者、健常者を問わずその人にあった工程を担当する。現在、1班から10班まで工程ごとにグループに分かれて作業が行われているが、3名の障害のある従業員も別々のグループに属している。障害者、健常者といった区別はなく、各人の能力をしっかり見極めた業務、職場配置が考えられている。



(2)それぞれの状況に応じた労働条件
労働形態には、パート、嘱託、社員といったものがあり、本人の状況に応じて選択できるようになっている。工場では工程ごとに分業化された流れ作業によって製品が作られていくため、計画的な人的配置を求められるが、緻密な作業工程プランによって可能となっている。内部障害などで通院の必要のある従業員は、会社に気兼ねすることなく通院でき、育児に忙しい主婦にとっても働きやすい環境となっている。また、緻密な作業工程プランは作業の効率化にも繋がり、障害者、健常者を問わず、できるだけ残業がないように取り組むことを可能にしている。
(3)やりがいのある業務内容
近年、縫製などの分野のみならず国内の工場を海外に拠点を移すことが行われるが、アシックスアパレル工業株式会社も例外ではない。海外の工場(中国、ベトナム、インドネシア)では大量生産の製品を作り、日本の工場ではひとつひとつの発注数が少ない、それぞれ異なった規格のものを作る受注生産となっている。宮崎工場も重要な受注生産の拠点である。大量生産の場合、各工程の作業は同じ作業を繰り返す単純なものでよいのに対し、受注生産では規格書に基づき各工程における従業員の判断も必要になる。そのため、従業員には高い技術水準が要求され、様々な難題を各工程においてクリアしていかなければならない。そのことで従業員に責任感とそれをクリアした時の達成感を生むことができ、やりがいのある仕事となっている。
3. 取り組みの内容
障害者を雇用するという観点よりも、障害者と健常者を区別することなく、一人の従業員として捉え、本人の働くという意識(健全な精神)が重要であって、だれであっても入社した場合には本人の状況に合わせた対応を考慮している。障害者だけに対する特別な活動はない。このことは一見厳しいように見えるが、現在、障害者のある従業員に話を伺うと、職場で障害者だと感じたことはなく、そして障害者であるという理由で特別扱いされることを望んでもいなかった。
しかしながら、聴覚障害のある従業員にとっては、朝礼での話の内容や規格書の作業内容についての相談などコミュニケーションの点で健常者と同じという訳にはいかない。これらは各工程のグループのメンバーによってカバーされている。聴覚障害のある従業員のグループでは、グループの班長が朝礼後に手話や筆談などを交えて対応している。また、作業内容について指導員でもある班長が規格書の質問などに対応し、作業の練習を一緒にするなど十分な体制が整っている。グループごとにいる班長の存在は非常に大きな役割を持ち、障害者、健常者を問わず従業員のよい相談役になっている。
職場内でのコミュニケーションについて、障害者に関する特別な取り組みはないが、職場全体の取り組みとして、年に1、2回程度の懇親会等が催されている。また労使が協力して安全と衛生について取り組む安全衛生委員会を設置して、毎月1回の委員会を開催している。
さらに、従業員の中には職場にいる聴覚障害者と円滑なコミュニケーションをしたいために、地域で開催される手話教室などに通う人もみられる。従業員の中で、職場の中で、それぞれが努力、そして協力し合って、喜びと笑顔のたえない職場環境が自然に作られている。
4. 従業員の意見
障害のある従業員には、27年以上の勤続年数の者がおり、昔の状況を尋ねると、「以前は大量生産で同じ作業の繰り返しで大変だった」ということであった。そして、入社して最初のころは、手話がうまくできる人がいなかったので、コミュニケーションをとるのが難しかったということである。しかし、現在は同じような悩みはあるが、班の中には自ら手話の勉強をしてくれる人もいて、身振り手振りで話の内容もわかりコミュニケーションができるようになったということである。以前と現在の状況を比較すると、作業内容においても職場内のコミュニケーションについても満足されていた。
具体的に話していただいたものを整理すると次の通りである。
①障害の区別関係なく同じ作業内容
②難しい仕事もクリアして皆と同じようにしている
③忙しいときもあるが、いろいろな工程があって楽しい
④グループに分かれるため、グループでコミュニケーションができる
すなわち、他の従業員と同じ目的を持って(①)、同じ達成感を味わい(②)、責任を持って取り組む(③)ことが本来の「働く」ということで、アシックスアパレル工業株式会社で同じ労働ができることに満足している。そして、これらは本人の努力とグループ内での従業員のサポート(④)によって支えられている。
5. さいごに
アシックスアパレル工業株式会社の取材で、障害のある従業員が工場内で仕事をしている様子を拝見する機会があったが、それぞれの皆さんが専門の職人に見え、規格書を片手に作業をされる姿は非常に頼もしく見えた。あるグループの班長の方は、「仕事にも一生懸命で、グループ内を非常に明るくしてくれている必要な人材だ」と答えてくれた。
ノーマライゼーションには、「障害者であろうと健常者であろうと、同じ条件で生活を送ることができる成熟した社会に改善していこうという営みのすべて」とあるが、アシックスアパレル工業株式会社の宮崎工場はそのような環境に近いと感じた。
このような素晴らしい職場環境になったのは、障害のある従業員が長年継続して勤務していたことで、従業員にノーマライゼーションの意識が自然に受け入れられたことも一つの理由であろう。
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