障害者(精神)雇用の拡大・定着のポイント
~スロースローの実践~
- 事業所名
- 山形屋商事株式会社
- 所在地
- 鹿児島県鹿児島市
- 事業内容
- 繊維製品販売・一般雑貨販売・食料品販売
- 従業員数
- 170名
- うち障害者数
- 1名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 1 総務事務 - 目次

1. 事業所の概要
当社の創業は、山形屋百貨店と機を一つにする宝暦元年(1751年)であり、創業250有余年の歴史を持っている。その後、山形屋百貨店との独立・解散を繰り返す時代もあったが、戦後は、株式会社山形屋の一部門として再発足するも、商法の改正によって、昭和22年10月29日、株式会社山形屋卸部として独立した。
昭和35年9月には、食料品の取り扱いを加え、称号を山形屋商事株式会社として改める。
さらに、昭和48年8月に現在の地に新築し、県内は勿論のこと商圏を九州一円に拡大している衣料・食料の卸業である。
(1)事業内容
当社の業務は下記の4部門があり、170名の従業員のもと、繊維製品販売・一般雑貨販売、店舗改装・器具什器リース及び販売、及び食料品販売の主要営業品目を取り扱っている。
① 総務部
┌ 総務課
└ 企画開発課
② 衣料雑貨事業部(衣料品等の卸販売)
③ 物流事業部(商品管理~輸送)
④ 食品事業部



※物流部の工程
商品卸販売~商品置場~
商品管理~物流(搬送)


○ 商品仕分・管理
○ 値札付け・包装



○ 今後の障害者雇用(知的障害者)の最も可能性のある部門である。

※ 食品事業部(ターミナル)
食料の仕入れ・管理・販売・輸送の一連の作業がなされる。
物流事業部及び食品事業部の2部門と思われる。
業務内容の見直し検討が望まれる。

(2)経営方針
「人を結ぶ、人へ結ぶ、すべての思考をひとのもとに」の企業グループ(25社)の共通スローガンのもと、全てのお客様に対して、心のこもったサービスを届けること。また、運営についてはトップダウン方式ではなく、常に課長会議で検討され、部下への指示が明確である。特に社員同士の接し方にも、お客様に対する気持ちと同じようにすることにより、社内が明るく、メリハリのある雰囲気を醸しだしているのは評価に値する。
(3)障害者雇用の理念
率先垂範型の社長は職員間の親睦融和を第一とし、メリハリのある経営を目標としている。当然、障害者の雇用についても、全く他の職員と同じ条件・待遇で採用し、自然な雰囲気の中で、定着推進できるように配慮されている。
特に、障害者(精神)に対しては職場定着を第一と考え、無理をさせ一気に職務遂行を期待することなく「ゆっくり・ゆっくり」を合言葉に、本人の勤務状況を十分に見極めながら、正規業務に近づけるという「雇用理念」を一貫して実践している。
2. 障害者雇用の背景・経緯
(1)雇用の背景
雇用率制定(1.6%)時には、雇用率を充足していたが、雇用率改定(1.8%)以降、しばらくの間障害者雇用はなかった。しかし、当社としては常に社会的責任とし、「必要な部門に欠員は出れば」と雇用率達成の機会を伺っていた。
今後も、各部門で欠員が生じれば必要に応じて、後2名の補充も考えていきたい。
(2)雇用の経緯
2008年6月に総務部に欠員が生じ、課内で相互にカバーしてきたが、やはり無理な面もあり、この機会に障害者雇用に踏み切る。会社の方針として、障害者雇用率の充足を「社会的責任」と考えていたので、9月の障害者就職面接会に積極的に参加する。
欠員は事務職(女性)であったため、以前、事務職経験のあるAさんと面接し、現場実習2週間を経て10月1日付けで採用した。
Aさんは統合失調症であるが、以前に事務職の経験もあり、能力が高く、総合事務職として総務課に配置した。
現在、雇用して4ヶ月になるが職務適応は良好である。
(3)就労・生活支援機関との連携
①かごしま就労・生活支援センター
現在、採用後4ヶ月が経過するが、採用後月1回の担当者の会社訪問を受け、本人との面接も実施され、本人の心の安定が図られている。
②財団法人鹿児島県雇用支援協会(障害部)
知的障害者及び精神障害者についての「業務遂行援助者の配置助成金」や障害者介助等助成金の活用等検討している。
3. 障害者の職場配置と業務内容
目下、障害に配慮しながら、仕事に慣れるまで業務内容を軽減し、徐々に仕事量を増していくカリキュラムを導入している。一般的には、正規の勤務時間内で仕事量や仕事内容を調整することでカバーしているが、本人の希望等を十分に考慮し、当分の間パート職として、1日6時間勤務、休日月8日、1ヶ月単位の変形労働時間制が導入されている。
主な職務内容として、下記の6項目と発生主義で対応している。
① 郵便物の処理(午前・午後の2回)
② 勤務体制の処理(出勤簿・年休簿・各種帳簿等)
└ ロ.総務課長の補助(貿易の担当者は課長のみ)

④ 総務課の雑用業務
⑤ 社内の電話対応
(外線は本人の心理を考えて対応しない)
⑥ 環境マネジメントシステム認証工場
・・・(関係事務処理)
・Aさんは前任者と同じ、総務部の総合事務職として配置された。
担当者が総務課長である為、直接指導を貰えるポジションで、
安心して仕事に集中できている。

4. 取り組みの内容と効果
(1)プログラム内容
○ 1日6時間勤務のパート職導入
○ 1ヶ月単位の変形労働時間制導入
○ 原則、仕事量については発生主義で対応する。
┌ ・ 1日で処理する仕事
┤ ・ 1週間内で処理する仕事
└ ・ 1ヶ月内で処理する仕事
に区分して、本人に負担をかけないように配慮したプログラムを実施している。
(2)雇用の効果
① 責任感が強い為、他の職員についていきたいという気持ちが出るので「スロースロー」「ゆっくり・ゆっくりね」を合言葉にセーブすることで、心に余裕が出てきた。
② 仕事上のことで、少しずつ自分の意見が言えるようになってきた。
③ 報告終了の後は、次の指示を仰ぐようになってきた。
④ 職員には、事前に本人の様子について説明がなされていた為、事務室の雰囲気も良く、全く仕事上の支障も生じていない。
⑤ 精神障害があっても、周囲の配慮と取り組みの内容次第では定着率も良くなる。
(3)本人のコメント
仕事のしやすい雰囲気で毎日楽しく、総務課では結構雑務も多く一日が早く終わるような気がする。また、食事を一緒にできたり、笑顔が出せるようになってきた。しかし、皆の中に積極的にはまだ入っていけない。
5. 今後の課題と考察
(1)現在の業務内容、勤務時間(現在パート6時間)のフルタイム勤務への移行等、課題解決に向けての社内での有効なプログラムの設定。
(2)業務遂行上、カベにぶち当たった際の解決策の事前準備。
(3)障害者雇用率の充足(あと2名)に対する各部門の業務内容の見直し、特に物流部門での障害者(知的障害者)雇用の可能性、次なる雇用率達成に向けての努力を期待したい。
障害者雇用は、雇用率改定(1.8%)後はじめてであったが、以前の障害者雇用の経験を通して、社長はじめ、障害者担当者の理念や対応策が常に前向きで意欲的である。
また、従業員の業務遂行への意識が高く、「メリハリ」のある雰囲気作りが醸しだす独特なものがあり、障害者従業員をあたたかく包んでいる感じだ。
Aさんのとても几帳面な性格への対応として「スロースロー」の実践が生きている。
・仕事の報告に際しては、声かけの実践「早かったネ!明日でもよかったのに!」で心に余裕を持たせる。
・「ぼちぼちネ」を合言葉にして、何事に対しても意識過剰にさせない工夫等。
このように、本人の特性を十分に考慮して、障害者の定着に努めている取り組みは評価に値する。今後とも社会的責任として、障害者雇用率の達成に従業員一丸となって邁進してほしい。
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