リハビリがゴールではない、就労こそ生き甲斐

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1. 事業所の概要等
(1)設立等
設立:昭和42年8月1日(法人設立 平成9年4月)
許可病床数:393床
精神科救急病棟(1)42床
精神病棟入院基本料(3)147床
精神療養病棟入院料(1)120床
療養病棟入院基本料(1) 84床
(2)事業内容・障害者雇用の動機
当法人は、「こころ病める人にへいあんを」の基本理念のもと、精神科専門医療機関として精神科救急医療を含めた急性期治療から回復期の精神科リハビリテーション、 在宅療養者のデイケア、デイナイトケア等の医療を一貫して行っている。療養者のよりよい生活の実現のため、家族も含めたチームを築き、社会復帰を目標とするチーム医療や種々の地域医療活動、就労支援活動も実践している。
そして、それ等を実践する付属施設に精神障害者社会復帰施設(生活訓練施設)「経塚苑」、通所授産施設「就労プラザわく・わく」在宅療養者を支援する訪問看護ステーション「ナース・ログ」を設置運営している。
その就労支援活動の中で、利用者は徐々に回復してくると就労意欲が高くなってくる。就労意欲の高くなった利用者は、これまでは就労意欲に応じて外部企業に紹介し、約40名の就労支援を実現した。就職後はジョブコーチが企業担当者と連携して定着支援に当たってきた。
そこにタイミングよく外注していたクリーニングの委託業者との契約終了があり、この際、通所授産施設の利用者の中から社会復帰可能性の高い者4人を新たに雇用し、院内クリーニング業務に配置することとした。
現在、当法人で雇用している精神・知的障害者は9人である。
その職種は介護助手1人、美化作業員3人、洗濯作業員5人であり、各々の職務で働く喜びを実感しながら共に支えあい頑張っている。
彼等の真面目に黙々と働いている姿は、真に当院の目標「就労こそ生き甲斐」である。





2. 取り組みの内容
(1)雇用支援機関との連携
①ハローワーク(公共職業安定所)
障害者の雇用義務制度の法定雇用率のカウントの関係、トライアル雇用、特定求職者雇用開発助成金等の指導助言があり、障害者の求人申し込みから紹介までを利用している。
②障害者職業センター
障害のある従業員の特性に応じたきめ細やかな雇用管理を行うため、ジョブコーチ支援を利用している。現在は、従業員であるジョブコーチ2人を配置し、センターからの助言を受けながら雇用管理を行っている。
③その他
また、当法人は、平成18年度から浦添職業能力開発校から委託を受けて障害者職業委託訓練事業も実施し、ジョブコーチを含め心理士、精神保健福祉士、作業療法士、栄養士などが支援を行っている。今後も求人については、ハローワーク(公共職業安定所)を利用し障害者雇用を促進していく考えである。
(2)障害者雇用のための工夫・対策
当法人の理念は治療共同体を目指すことである。
治療共同体とは、院内だけの医療サービスではなく、患者・家族・院内外の治療スタッフ及び地域も含めた患者を取り巻く全ての環境が全体として治療的な構造になることである。その目標は治療とリハビリそして就労と生き甲斐作りである。
この治療共同体の中で院内外の就労・定着支援を主に担っているのがジョブコーチや精神保健福祉士である。
そこで当法人では、ソフト面の工夫・対策として障害者の就労・定着を支援するためジョブコーチ2名を総務課に配置し、院内外の就労・定着支援をすることとした。
精神(知的)の障害者は、グループ就労の方が精神的に安定し定着していくことから、新たにスタートしたクリーニングチームは4人体制とした。
初めてクリーニング業務に就く従業員のために、クリーニング作業の流れ、方法等を本業のクリーニング店を見学させてもらい、クリーニング業務の研修と能力向上に役立てた。お陰で実践の場ではスムーズにこなしている。
メンバーに欠勤者が出るときは、美化チームから応援を入れてメンバーの負担増にならないように配慮している。
精神・知的障害者にとっては何よりも気持ちの安定が大切であり、そのために治療共同体の中にも位置づけしている家族との連携が必要である。
そこで、家族に必要に応じて職場見学をしてもらいながら、障害者の自立支援の一助にしている。
次にハード面の工夫・対策としては、老朽化した乾燥機の取替と洗濯物の選別場所に架台を設置し労働負担の軽減を計った。その他作業環境の改善は順次行う予定である。
労働条件のうち労働時間は、基本的には1日5時間勤務の週5日出勤とし、早番と遅番の時間差勤務でローテーションが組まれている。
また、季節により勤務時刻を変える配慮もなされている。(冬は夏より30分遅い)
賃金は時給制であるが、働く喜びと収入を得る喜びを分かち合う自立支援のためには、最低賃金除外認定はせず、時給単価は最低賃金以上である。
健康診断等の福利厚生は他の職員と同じ処遇である。
(3)社員のサポート体制
サポート体制は、基本的には前出の治療共同体の一貫の流れの中でサポート体制がとられている。
その中でも特に直接障害者の就労・定着支援を担当するジョブコーチを総務課に配置し、院内の就労者はもとより、当法人から外部企業に就職支援した障害者の定着支援等を行い、「職業リハビリがゴールではなく、就労こそは生き甲斐である」を目指してサポートしていると話されていたのが印象的である。
一方、クリーニングチームの皆さんとの会話の中で「ここで働ける間はずっと働きたい」、「ここで働けることを願っていた家族の願いも叶いとても嬉しい」等の話を聞くと、この部署の仕事は冬は寒く夏は暑いにも拘らず、彼等にとっては生き甲斐を実感するかけがえのない職場である。その他には特にサポート体制はとられてないようだった。
クリーニングチームのメンバーの通勤は、徒歩かバス通勤である。
遠距離通勤者は、バスを乗り継ぎしてでも、きちんと時間を遵守して通勤できる心構えをもっている。
やはり、精神障害者にとって、何より大切なサポートは「こころにへいあんを」の基本理念に基づいた気持ちを安定させる支援がよりよいサポートである。
3. 今後の課題と展望
国の医療制度改革や疾病構造の変化の流れの中で精神科医療においても、長期入院から短期入院へ、そして社会(職場)復帰、就労支援へと舵取りしていかなくてはならない。そこから派生してくる大きな課題は就労支援の問題が見えてくる。
この事は当法人だけの問題ではないと思料する。
そこで、当法人ではやはり障害者雇用の基本理念として治療共同体の概念を共有しつつ、合わせて障害者職業生活相談員の選任、関係機関との連携により院内外の就労・定着支援、生き甲斐作りに取り組んでいく、方針である。
今後の精神障害者の雇用促進に当たっては、個々人の特性にあった就労が可能になるよう職種を増し、人事考課も職員に準じて導入し、人事異動もできるようにして、やり甲斐、生き甲斐を味わいつつ健全に成長していける職場にしていくこととしている。
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