同社では、前述の事項をはじめ、2人からの要望や障害特性を鑑み、様々な配慮がなされている。
　例えば、Aさんについては座席の配置が挙げられる。
　Aさんは、対人関係だけでなく周囲の刺激に敏感な特性もあるため、約30人が在籍する課内での座席の位置を考慮してほしいとジョブコーチを通して要望したことがあった。会社側はその要望に応え、座席位置を変更し、Aさんが業務に集中できるように配慮した。
　また、本人の口から言い出しにくい悩みや、困っていることがある場合は、ジョブコーチが聞き取り、それを会社側に伝え、解決するような流れが取られている。ジョブコーチが仲介し、連携を図ることで、直接、話しにくいことも上司に伝えられ、対処することができている。
　2人の業務内容についても、障害特性に合わせた配慮がされている。
　Bさんは単調な作業が得意であるため、ボリュームがあり継続的にできる業務を割り当て、作業内容が頻繁に変化することがないように工夫するとともに、時間的に余裕のある工程での業務を担当させることで、安心して取り組めるよう配慮されている。
　障害の特性上、タイトな工程で作業をさせると、プレッシャーからストレスを感じることもあるため、それを防ぐための配慮である。Aさんについても同様の配慮をしている。
　会社側は期限に余裕がある仕事を提供する工夫が必要となるが、十分な時間を与えることで、2人とも完成度の高い仕事ができている。
　取材中、どのようにして業務を教えているのかと責任者に質問したところ、最初に見本を見せて説明し、分からなくなったら再度指導する。根気強くそれを繰り返すことによって、仕事内容を伝えているとのことであった。
　例えば、データ入力作業の場合、分かりやすい見本を示しながら仕事の流れを説明し、何をしたら良いのか分かるように工夫しているとのことであった。
　このような様々な配慮がなされているからこそ、障害をもつ社員でもスムーズに業務に就くことが可能となり、働きやすさにつながっていると感じた。
　また、Bさんは業務をこなした上で積極的に休暇を取得し、仕事のオン、オフをうまく使い分けることで、私生活を充実したものにしているそうである。
　休暇の取りやすい職場であることも長期で働くための重要なポイントだと考える。
　2人とも社内の懇親会にも積極的に参加し、他の従業員とも交流を図っていることから、周りの理解も進んでいるということであった。
　このように働きやすい、過ごしやすい職場の環境や雰囲気が、Aさんは5年と3か月、Bさんは4年と11か月という長い期間、就業することにつながっている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　就業場面