障害者と向き合う会社を目指して
ものづくりの現場で特性を活かして必要な人材に
2019年度掲載
- 事業所名
- 株式会社 ざまみダンボール
(法人番号: 1360001000953) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 沖縄県糸満市
- 事業内容
- ダンボール製造販売、紙、事務機、事務用品卸・小売り販売
- 従業員数
- 150名
- うち障害者数
- 10名
-
障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 2 合紙作業機長、検品作業責任者 肢体不自由 1 商品出荷、受入作業 内部障害 1 営業 知的障害 3 打抜作業員、補助員 精神障害 2 積上げ作業 発達障害 1 積上げ作業 - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害、発達障害
- 目次
-
事業所外観
1. 会社概要、会社沿革、障害者雇用の経緯
(1) 会社概要
株式会社ざまみダンボール(以下「当社」という。)は昭和34年12月にダンボールの専門メーカーとして設立。設立当初の事業内容は各種ダンボールの製造・販売であったが、平成14年7月に「紙」「事務機」「事務用品」「文具」の卸・販売を行っていた(株)ざまみと合併し、現在の業態とした。そして、次の「基本理念」を掲げて活動をしている。
《基本理念》
『お客様が必要なときに、必要な商品を適正な価格で提供する』姿勢を基本に『県産品をこころで包むお手伝い・お客様の事務効率を推進するお手伝い』のこころを持って、パッケージ商品の製造販売また、紙、事務機、事務用品、文具の販売を通じ地域の発展に貢献し、社員の生活向上に努める。
(2) 会社沿革
昭和34年12月 沖縄県那覇市にてダンボール製作会社として設立
昭和57年10月 沖縄県西原町に移転
平成4年10月 沖縄県糸満市に移転
平成14年7月 (株)ざまみと合併
(3) 障害者雇用の経緯
ア.年度別・障害別の雇用状況聴覚障害肢体不自由内部障害知的障害精神障害発達障害合 計平成19年4月3115平成20年4月5117平成21年4月5117平成22年4月4116平成23年4月5117平成24年4月4116平成25年4月51118平成26年4月511310平成27年4月311319平成28年4月211318平成29年4月2113119平成30年4月2113119平成30年9月21132110注)平成30年については本稿執筆時の状況も掲載。
イ. 経緯
当社における近年の障害者雇用状況は前出の表のとおりである。平成19年4月における雇用状況は、聴覚障害者3名、肢体不自由者1名、内部障害者1名の5名で障害者雇用率は5.7%で法定雇用率は達成していたが、障害者雇用は社会的義務であるとの経営方針からいっそう進めることとしていた。そのため、福祉施設を利用している知的障害者を施設外実習で受入れ、定型的な作業を経験してもらい、希望や適性があればその中から採用することを考えたが、その時点では社内の受け入れ環境が整っておらず実現しなかった。
聴覚障害のあるAさんはコミュニケーションにおいて採用当初は慣れるまでに時間がかかったものの、積極的に周囲とのコミュニケーションを図ろうという本人の前向きな姿勢があった。紙を貼り合わせる合紙作業に配属したところ見る間に仕事を覚え、その作業の責任者が退職した際には合紙作業の責任者となるまでに成長した。周囲から頼りにされている仕事ぶりから、聴覚障害者4名の採用を目標に採用活動を行い、何名かを採用し、週1回手話通訳者の派遣を依頼しミーティングを重ね、雇用の定着を図ったが、残念ながら現在のところ1名の定着・増員にとどまっている。しかし定着したBさんは現在検品作業の責任者として、当社にとって必要な人材となっている。
知的障害者の採用については引き続き取り組み、平成24年4月にハローワークからCさんの紹介があった。面接を行ったところ、ほとんど障害を感じさせないしっかりとした受け答えであった。すぐに採用し製品の積上げ作業担当としたところ、確実に作業を行った。3年後には、打貫き工程の助手として異動し、現在は機械操作も任されるようになっている。その仕事ぶりから知的障害者の採用を検討しているところに、就労支援事業所を利用していたDさん、Eさんの紹介があった。面接をしたところ、2人とも当社においての作業に従事するのは難しいと考えたが、何も試みないで不採用にするのもよくないと考え、採用を決定した。製造ラインの現場にて単純作業を実際にさせてみたところ、作業速度が遅く次の工程に支障をきたすことから当該工程では厳しいとの声が聞こえてきた。つぎに最終工程での作業であれば自分のペースでの作業が可能ではないかと考え、検品した製品の積上げの作業をさせることを試みたが、なかなかうまくいかなかった。それでもそのグループの社員に何とか育ててほしいと筆者(当時の社長)からお願いしたところ、「何とかやってみましょう。」と承諾が得られ、いろいろな試行錯誤をしながら続けさせた。その結果、現在ではDさんはほぼ障害のない社員と変わらないまでに成長して、最終工程でいろいろな作業の補助を行っており必要な人材となっている。一方、Eさんについてはもう少し時間がかかりそうだが、打抜き工程の責任者である機長が前準備をさせたりしている。機長の人柄の優しさや指導力でEさんも大きく成長しており、まもなく必要な人材になると当社では考えている。
精神障害者の採用は就労支援事業所からの紹介で面接を行った結果、別に問題なしと考え採用し、製品の積上げ作業をさせている。勤務態度もよく周囲からも好感をもたれているので、近いうちにワンランク上の作業に従事させる準備を行っている。
発達障害者の採用はハローワークからの紹介で面接を行い採用した。採用当初配送係に配属していたが、障害の内容がわからないことから社内での業務が望ましいとの意見があり、製造の製品積上げ作業を行っている。機長からの信頼もあり担当業務と処遇をワンランクあげたいとの申し出もある。
2. 取組の効果(社員の感想)、作業内容
(1) 取組の効果(社員の感想)
障害のある社員の成長、そして必要な人材となってきた経緯について述べてきたが、障害者雇用の効果・意義はそれだけではないと筆者は考える。一緒に働く障害のない社員の考え方や仕事への取組も変化してきた。次に、そうした社員の感想を紹介する。なお、この感想は社員全体が感じているものである。「私は障害者との接し方を特別学んだわけではないが、障害者の方と仕事をする体験の中から私なりの障害者との接し方を述べたいと思う。
私が(株)ざまみダンボール(以下「会社」と呼ぶ。)に入社して驚いたのは、聴覚障害のあるAさんが合紙作業に携わっていたが、周囲とのコミュニケーションもスムーズに行い耳が不自由なことを感じさせず、責任を持った仕事をする姿勢を見て、障害を持っている人でも本人の努力でまったく周囲に違和感を感じさないことから障害者との仕事を共有することに問題ないと思った。
しかし、それは障害を持っている方への認識不足で、聴覚障害者の方は耳が不自由ではあるが、目で読める本や新聞などによる知識は豊富なので、仕事をするうえでほとんど健常者とは変わらないことではあるが、障害者はその症状によって仕事への適用能力が異なるということを知的障害者と仕事をするうえで理解できるようになった。
会社が2013年にCさん、2014年にDさん、Eさんを採用した時にCさんはすぐに作業を覚え、健常者とほとんど変わらなかったが、Dさん、Eさんはなかなか職場にはなじめない状態で、周囲の社員からも「教えてもなかなか作業を覚えてくれない」との苦情が出てきた。障害者を特異の目で見ることなく健常者と同じ扱いで接することはとても良いことだが、健常者と障害者では社会的な経験がかなり違うように考えられることから、同じように教えても同じようにできないのは当然の結果だと考え「何もできない」「何も知らない」との前提で接することに決め、個々の能力や性格を見ながら、業務や社会的なことを教えることからスタートをした。
その結果、Dさんは現在健常者と同等の作業を行っており、Eさんはコミュニケーションが全くできない状態のスタートではあり、一進一退の日々だったが、確実に成長しており健常者と同等の作業ができるのも間近だと考えられる。
障害者の方との接し方で重要なことは、普通に接し個々の能力を認識して、適切な指導を行っていくことが大事であると共に、同じ仕事をしている仲間であることの認識が大事だと思う。
障害者を雇用するに当たり、不安やデメリットの考えが先行しがちであるが、遅刻や休みが少なく、作業を一生懸命する姿には感銘を受けることが多い。
当社において10名の障害者の方に働いて頂いているが、もうしばらくするとEさんも健常者と同じように作業ができるようになり我社において貴重な戦力になりうるということから、我社において障害の症状を持つ方はいるが、仕事においての障害者はいなくなる。
他社の皆様にも障害者の雇用に目をむけてもらいたいと思う。」
(2) 作業内容など
ア.在籍者の障害・担当作業など一覧
障 害勤続年数担当作業等A聴覚障害18年2か月合紙機長作業の詳細(以下、同):片面ダンボールに用紙を張る工程B聴覚障害10年9か月検品責任者特定の製品の検品作業C知的障害6年6か月打抜機助手製品包装、梱包、糊止補助作業D知的障害5年7か月仕上補助打抜機作業に従事し、前段取り、機械操作も行うE知的障害5年7か月打抜補助作業シートの設置などの作業を行うF精神障害3年7か月印刷補助作業印刷され結束された製品をパレットに積上げるG発達障害1年6か月糊止作業糊止され結束された製品をパレットに積上げるH発達障害2か月印刷補助作業見習い期間I肢体不自由17年11か月入出荷係商品出荷、受入確認作業J内部障害40年3か月営業文具店への卸(2004年に障害を持つに至る)
イ. 作業上の配慮など
障害に応じた配慮については個人あるいは職務に応じた様々な取組を行っている。先にも触れたように、聴覚障害のある社員とのコミュニケーションのために、週1回程度、手話通訳を交えた会議を開催したり、作業場のところどころにホワイトボードがあり、社員全体で活用している。また、知的障害のある社員については作業手順を分かりやすくまとめた資料で指示をするなどの配慮を講じている。
Bさんの検品作業
3. 今後の展望と課題
筆者がこの十数年障害者雇用に取り組んできたことを思いかえすと、当初は障害者雇用を進めていくうえで聴覚障害者を採用することが望ましいと考えていた。そして、実際に聴覚障害のある社員として採用し検品業務を行っていただいたが、そのなかで私の考えが障害者のことを理解していないことに気付かされた。その理由は、聴覚障害者の方は耳が聞こえない分、雑誌や新聞、本などの活字情報からいろいろなことを学び、様々な知識を有している人が多い。当社において検品作業のような単純な作業を担当させることは適切ではないと考え、豊富な知識が生かされる作業につくことが望ましいと考えるようになり、検品作業での聴覚障害者の採用は控えるようになった。現在は聴覚障害のある社員が2名いるが、知識を活かし、二人とも責任者として重要なポジションにいる。
その後の障害者の採用については、聴覚障害者以外にも広く募集・採用する方針に切り替え、知的障害者、精神障害者、発達障害者を採用して今日に至っている。障害者も健常者と同様にそれぞれ個性があり、個々人に適した作業に配置すると、その仕事に真剣に取り組み成果を上げることができた。作業を行う過程において周囲との人間関係もでき、より高度な作業にも取り組み、障害の有無を感じなくなっているのが当社の障害者雇用の現状である。
一方で、これまで障害者を雇用して感じてきたもうひとつは、障害の有無にかかわらず「人」を雇用することは難しいということである。ただ、目標を明確にし、目標に全員で向かっていけば必ずや達成できると考えている。各個人の能力を把握し、それに適した仕事に配置する。時期を見てステップアップするための課題を与え、能力を高めていくことを支援することにより本人の就労意欲も高くなる。
障害者、健常者、高齢者が仕事の意欲が高まる会社にすることが障害者雇用を適切に実現することができると考える。
「仕事」という観点でみると健常者と障害者の区別はなくなる。障害者だからといって特別な意識は持たず、仕事ぶりで評価することで、障害のある社員の力量があがり、各人が1人でできる業務が増えてくる。
障害者の特性によっては、コミュニケーション面で慣れるまでに時間がかかる場合もあるといわれるが、それは健常者も同じことがいえる。社員同士が互いに遠慮し合ったり、意識したりしない雰囲気をつくり、一人ひとりの特性を見て同じ社員として向き合うことが大切だと考えている。
執筆者:株式会社 ざまみダンボール 会長 座間味 勲
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