グループ全体で障害者を支える
2019年度掲載
- 事業所名
- ゆうび株式会社
(法人番号: 6320001002783) - 業種
- サービス業
- 所在地
- 大分県大分市
- 事業内容
- 一般及び産業廃棄物の収集運搬、再生
- 従業員数
- 119名
- うち障害者数
- 3名
-
障害 人数 従事業務 肢体不自由 3 本社工場内清掃業務、瓶の選別業務 - 本事例の対象となる障害
- 肢体不自由
- 目次
-
事業所外観
1. 事業所及びグループ会社の概要
ゆうび株式会社(以下「同社」という)は、大分市に本社を置く一般及び産業廃棄物収集運搬、リサイクルの事業所である。昭和56(1981)年5月に同社の前身である有限会社ゆうび企画を設立して以来、約40年にわたって創業当時に掲げた企業理念(後述)を忠実に実践し、今では、大分県内の官公庁や製造会社、スーパーなど多くの顧客を有し、産業廃棄物処理業及びリサイクル事業者として、確固たる基盤を有するまでに成長を遂げている。また、同社を中核として5つの会社でゆうびグループを形成しており、グループ全体で障害者雇用を積極的に進めている。本稿ではグループ全体での障害者雇用の取組を紹介する。
〇同社の企業理念
「社会の環境ニーズに対し、信念と誇りを持って誠実に取組み、お客様へ最高のサービスと信頼で応えてゆく企業を目指します。」
〇ゆうびグループの構成会社と社員数及び障害のある社員の状況
会社の名称
社員数
障害のある社員数と内訳
ゆうび株式会社(中核)
119名
3名(身体障害3名)
ゆうびクリーンサポート有限会社
28名
シンエイ車輌有限会社
16名
中津ゆうび有限会社
38名
1名(身体障害1名)
スカイファームゆうび株式会社
19名
15名(身体障害6名、知的障害9名)
2. 障害者雇用の経緯
同社が障害者雇用に関心を持つようになったのは20年ほど前にさかのぼる。きっかけは特別支援学校(以下「支援学校」という。)の依頼により、職場実習として知的障害者を受入れたのが始まりだった。それまでは知的障害者に対する専門的な知識がなく、どのように雇用していいか分からず、身体障害者のみの雇用にとどまっていたが、職場実習を契機に知的障害者の雇用がなされた。また、同社における障害者雇用の歴史を語る上で、現会長の内野優氏の存在が大きい。当時、会長は知的障害のある社員が目を輝かせ一生懸命に働く姿を見て、障害の有る無しにかかわらず、人や環境に優しい経営を貫いてきたことに間違いはなかったと確信したという。それが如実に表れているのが、やる気のある人は年齢・性別・障害の有無に関係なく雇用し、最後まで面倒をみるという会長の強い信念だ。会長は今でも社員が困っていたら、自らの私財を投げ打ってでも、手を差し伸べることを惜しまないと聞く。それはまた同社の雇用方針にも反映している。同社の障害者雇用の中核をなしているのが、障害のある社員をゆうびグループ全体で支えるという考え方だ。同社で雇用継続が難しい場合は、本人の適性と希望を踏まえ、他のグループ会社への配置転換なども柔軟に行っている。3. 障害者雇用の取組と効果
同社では障害者雇用に向けたさまざまな取組を進めており、それらについて次に紹介する。
(1) 特別支援学校との連携
新卒者の採用については、支援学校からの職場実習を契機に継続的に進めている。新卒採用がうまくいっている理由について、今回取材した同社総務経理部の中内氏に聞いた。
中内氏がグループ会社の一つであるスカイファームゆうび株式会社(以下「スカイファームゆうび」という。)の代表をしていた当時、大分県内にある全ての支援学校が参加する技能発表会の各会場を訪問し、ゆうびグループの事業内容や採用方針・状況などについての説明や相談を行い、職場実習の受入れや新卒採用に向けた基盤作りを行った。その結果、いつでも支援学校からの要請に応えられる体制は整っていると中内氏は自信を持って話していた。職場実習時には生徒はもちろんであるが、支援学校の教員や生徒の親に実際の作業風景、職場環境などを見る機会を設け、同社を十分理解した上で応募できるようにしている。
(2) ハローワークへの求人はあくまでも一般求人
新卒以外の採用については、ハローワークに一般求人として募集を行っている。障害者ということで特別に条件を設けず、働く意欲のある人は障害の有無に関係なく働いてもらいたいとの思いがある。これまで採用時にはトライアル雇用や助成金は一度も利用したことがなく、障害のある社員と障害のない社員とを区別せず働く意欲のある人は雇用していくという同社の姿勢がよく表れている。
(3) 最優先すべきは障害のある社員の気持ち
ゆうびグループ全体で、障害者手帳によって障害者として確認できている社員は現在 19名である。グループ全体の社員数は220人で障害のある社員の割合は8.6%に達する(詳細は前出の表参照)。その他にも会社として把握している障害のある社員が3名(精神障害2名、知的障害1名)いるが、手帳を提示することを本人が希望していないため、障害者雇用とはしていない。しかし、その3名についても現場責任者を通じて必要な配慮は他の障害者と同じように行っている。同社は雇用率へのカウントや障害者雇用納付金の問題よりも、障害のある社員に安全かつ安心して働いてもらうことを最優先に考えているため、手帳の提示にはこだわらずに採用し、配慮している。
(4) グループ会社の存在が大きい
同社の障害者雇用を語る上でグループ会社の存在が欠かせない。いったん雇用した社員は、同社だけではなく、グループ全体で支えるという長年培ってきた風土がある。以前、知的障害のある社員4名が在籍していたが、平成27(2015)年にスカイファームゆうびの設立と同時に全員が移籍し、現在では15名に増えた障害者とともに、なすやカボスなどの生産に従事している。また、雨のため外で作業ができない時には、もう一つのグループ会社である中津ゆうび有限会社(以下「中津ゆうび」という。)で、建築廃材などの廃棄物の仕分け、パソコンの分解選別などの業務に従事するなど、グループ内で多様な仕事を準備するなど働ける環境を作っている。管理者、現場責任者が本人の適性を見出すとともに、本人の意向を尊重して、グループ会社のどの業務が本人に適しているか判断し、積極的に配置転換を行ってきた。業務内容もそうだが、通勤上の問題が生じれば、通勤しやすい事業所に配置転換を行うことも厭わない。これができるのも知的障害者を積極的に受け入れる場として設立したスカイファームゆうびや大分県の北部を担当する平成15(2003)年設立の中津ゆうびの存在が大きい。
以前、同社を退職した障害者が、スカイファームゆうびで働きたいと戻ってきたケースもある。逆にグループから離れていくケースもある。スカイファームゆうびを経て中津ゆうびに就職した社員が、自ら大型運転免許を取得し、それを生かしたいと他の会社に転職する場合には、全力で応援し送り出す。そういった懐の深さもゆうびグループの強みである。
(5) 採用時の面接はトップダウン。だから結論も早い。
障害者の採用にあたっては会長がトップダウンで判断を下すこととしている。今では会長の人柄を頼って様々なケースで応募があり、その一つひとつに真摯に向き合っている。特に障害者が応募してきた時には、会長自らが対応する。働く意欲を持っているかなどは一瞬でわかるというが、これまで多くの障害者と関わってきた経験がここにも生きている。
(6)雇用・配慮の実際
ア.Aさん 肢体不自由(右腕欠損)勤続17年
担当業務:工場内でビンの選別と清掃業務
(配慮)回収してきた大量の廃棄物処理の最終工程で選別作業をしている。障害の特性上、片手での作業となるため、ベルトコンベアの上を高速で移動する廃棄物の選別は難しく、入社時から比較的流れが緩やかなビンの選別のみを行う最終工程を担当することになった。Aさんの選別する時の目利きは的確で、一瞬で見分け、選別を行うことができるなど貴重な戦力となっている。選別されて集められたビンは、定期的に所定の場所に移動する必要がある。しかし、重量があり持ち上げることができないAさんに代わって、周りの社員が日常的に手伝っている。
イ.Bさん 肢体不自由(指欠損)勤続7年
担当業務:製造した固形燃料の袋詰め作業・清掃業務
(配慮1)この仕事は、別の工場で勤務していたBさんの通勤を容易にするために、新しい勤務先である本社工場内で新しく切り出された
業務の一つ。業務を切り出す際に、極力負担がかからないで作業ができる業務は何かを十分に話し合った結果、現在の業務とな
った。
(配慮2)Bさんへのもう一つの配慮として、勤務時間の弾力的運用を行っている。Bさんは75歳と高齢でもあり、働ける時に働いてもらえ
ばよいと伝えてある。特に夏場などの環境が厳しい時期は、特に本人の体調面に配慮して、柔軟な運用を行っている。
(Bさんの声)とにかく会社が良くしてくれるので助かっています。
びんの選別作業風景(Aさん) 固形燃料の袋詰め作業風景(Bさん)
スカイファームゆうび株式会社でのパソコン分解選別作業
(7)採用後の配慮
ア.配属先の決定、配置換え
面接時や採用後に現場責任者を交えて、本人の意向を十分聞き取った上で、現場に配置している。しかし、採用後に通勤や本人の体調、仕事との適性などの問題が生じた場合は、本人にとって働きやすい職場に配置転換を行うなど柔軟に対応している。それでも本人に合う仕事がない場合は、新たに仕事を切り出したり、他のグループ会社へ配置転換することも厭わない。
イ.作業環境への配慮
回収した廃棄物の投入時や分別時には大量の粉塵が舞い、また、機械周辺には大量の廃棄物が散乱する。そのまま放置しておくと、安全面の確保ができなくなるばかりか、作業効率の低下を招いてしまう。そのため同社では業務時間を削ってでも清掃の時間を確保し、作業環境の維持に努めている。また、スポットクーラーやヒーターは十分な台数を設置している。
ウ.通勤、勤務時間の配慮
同社の事業所は全体的に公共交通機関の便が悪く、社員の大半は自家用車で通勤している。障害のある社員にとって通勤は相当の負担を感じる部分であり、少しでも通勤を容易にするために、他の工場への配置換えを積極的に行っている。また、高齢の社員については、体調面を考慮して、勤務時間の弾力的な運用も行っている。4. 今後の展望と課題
これからも働く意欲のある人は、年齢や性別、障害に関係なく積極的に雇用する考えに変わりはないが、障害者雇用を進めていく上で、次のような課題と向き合っていく必要がある。その一つひとつに真摯に向き合うことで、同社が掲げる企業理念が、より充実したものになっていくものと考えられる。
ア.障害者が安全・安心して働ける業務の切り出し
障害者本人の意向を踏まえ、現場に配置しているが、各人の障害特性に配慮して、安心して働いてもらうためには、グループ全体を通して更に新しい業務の切り出しや創出を継続して行っていくことが必要になってくる。
イ.障害者の高齢化
障害のある社員も年々高齢化が進んでおり、最高齢は75歳に達している。高齢化した様々なケースにも対応できるように、新たな仕事の切り出しや労務管理の見直し、通勤対策など障害者一人ひとりに合った柔軟な経営を更に進めて行く必要がある。
ウ.業種的イメージの払拭
昨今の人手不足の中、業種的なイメージは求人活動にも影響を及ぼしている。そのため産廃業者という業種的イメージから脱却しようと様々な取組を行っている。同社が以前から環境問題や地域社会への貢献に積極的に取り組んでいることもその一環だ。このことが社員の安定的な確保や障害者雇用にすぐに結びつくものではないが、環境問題に関する啓発と会社のイメージアップを兼ねて地域社会との連携に取り組んでいる。小学校からの社会科見学の受入れやゴミひろい活動、自治会の集団回収へのパッカー車の派遣など地域に溶け込む活動にも積極的に取り組んでいる。5. 最後に~取材を終えて~
今回の取材を通して改めて分かったことは、障害者雇用が経営者トップの考えに大きく左右されるということである。同社は、会長や社長の考えが会社の隅々まで浸透しており、障害者に優しい経営を続けている。中内氏は最後に、「障害のある社員も障害がない社員も一緒に楽しい時間を過ごして欲しいと、今年から新年会や忘年会を社内全体で開催することになりました、もちろん費用は会社負担です」と笑顔で話していたことが印象に残った。また、会長の兄が大分県の代表を務める、スペシャルオリンピックスの大会にもこれから参加する人が出てくれば、もっと活気あふれる職場になると期待を寄せている。
注)スペシャルオリンピックス(SO)とは、知的障害のある人たちに様々なスポーツトレーニングと その成果の発表の場である競技会を年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織。国別の組織もあり、日本では公益財団法人スペシャルオリンピックス日本(SON)がある。SOでは4年に1度夏季・冬季の世界大会が開催されており、SONでは、各都道府県の地区選手団が参加する夏季・冬季のナショナルゲーム(全国大会)を4年に1度、開催している。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
大分支部 高齢・障害者業務課 山口 広継
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