（1）経緯
　同社では、従来から障害者雇用に取り組んでいたが、平成27（2015）年4月に株式会社ツルハホールディングスとの資本業務提携契約締結により経営基盤を強化したことに伴い、障害者雇用への更なる取組を進めた。
　障害者雇用を本格的に進めるに当たり、まず、本社の人事担当者による障害者雇用事例や支援機関などに関する情報収集、特例子会社見学や特別支援学校訪問、および障害者職業生活相談員の資格取得などを行い、障害者雇用に関する知識と理解を深めた。続いて、社内における障害者の就業場所の拡大に取り組むこととした。
 

（2）就業場所の拡大と整備
　同社において、これまで障害のある社員の働く場は、ほぼ本社事務や物流センター業務に限られていた。一方、同社は更なる成長を目指しさまざまな改革と実現に取り組みながら店舗数を増やしてきた。その結果、障害者雇用の取組を進めるには働く場の拡大が不可欠と考え、店舗にも広げることとした。当時、愛媛県内の店舗での障害者の雇用事例はあったが、数は少なく、不安は多かったが、店舗業務の見直しから始め、職場環境や労働条件などを整備することとした。
 

（3）店舗での雇用拡大に向けた取組
　具体的には、まず、人事担当者が店舗を訪問し、店長と面談して受け入れ可能かどうかを確認した。受け入れ可能な店舗については、障害のある社員にどのような仕事をしてもらうか、作業手順はどうするか等、業務内容を明確にした。複数工程の作業については細分化し、単純作業として行える準備をした。
　店舗では主に午前中に納品作業が集中する。単純作業であり短時間勤務のため、無理なく続けることができることから、障害のある社員の就業枠に設定した。まずは、単純作業である納品作業から始め、店舗内の清掃、商品の賞味・消費期限チェックとステップアップしながら業務を覚えていく。
　また、店舗で障害のある社員からの相談等があった場合には、原則として店長を通じて解決するが、解決できない場合は、障害者職業生活相談員である人事担当者が対応する。
　障害のある社員に対しての雇用継続に向けたサポートだけでなく、実際に現場で一緒に仕事をすることとなる店長や同僚が障害特性を正しく理解し、障害に応じた適切な配慮や対応ができるよう、店舗内での障害者雇用を支える仕組みを整備した。
　現在38名の障害のある社員が店舗業務に従事している。知的障害のある社員が多く勤務しており、定着率が非常に高い状況にある。障害のある社員の担当する業務の幅も広がっており、「レジ業務をやりたい。」と希望し、実際にレジ業務を行っている社員がいる。また、個人のモチベーションも高く、店舗業務に従事し、登録販売者（一般用医薬品販売を行うための国家資格）の資格を取得した社員もいる。
　障害者雇用が定着している店舗は雰囲気が良い。障害のある社員にとって働きやすい職場環境は周りの社員にとってもプラスとなっている。店舗の受け入れ体制を更に整え、今後は知的障害者だけでなく精神障害者の雇用も積極的に進めていく予定である。
 

 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　店舗の様子　　　　　　　

（4）支援機関の活用
　当初は障害に対する知識不足から、「店舗において障害者雇用をしても大丈夫なのか？実際に業務を任せることができるのか？」など、社内に不安の声があがったが、愛媛障害者職業センターの障害者職業カウンセラーに相談し、ジョブコーチ支援を活用して障害のある社員との関わり方や指導方法などのアドバイスを得た。
　そのほか、一緒に仕事をする店長や同僚の負担軽減のため、人生経験豊富な高年齢者がサポート役となり、スムーズな入社と職場定着を支援する障がい者サポート事業（国の生涯現役促進地域連携事業）の「障がい者サポーター」も活用して障害のある社員の職場定着を図っている。
 

（5）福祉施設への協力
　障害のある社員の採用につなげるため、朝の品出しや陳列作業を障害者就労継続支援事業所へ業務委託している。まずは、週20時間働けるよう慣れてもらう。最初はお客様に話しかけられると緊張していたが、今では商品の場所も案内できるようになり、作業スピードも速くなっている。同社で働いてみて元気になり自信もついたという声もあり、入社することを目標に業務に励んでいる。
 

（6）特別支援学校との連携
　在学生の職場実習を積極的に受け入れ、卒業後そのまま採用というケースも増えてきている。今後、職場実習の機会を多く提供し、相互理解を深めて卒業後の就職先となるよう努力したいと考えている。