(1)採用
　同社では、一人ひとりの特性を理解し、就職後に、適切な配慮・指導を行っていくためにも、就職を希望する者には、できる限り複数回の職場実習を体験してもらうこととしている。
　例えば、特別支援学校生を採用する場合、高等部の1年生から3年生に実習の機会を設けている。また、ハローワークの就職面接会などを通じた採用においても、できる限り複数回の実習の機会を設けることや、トライアル雇用の利用を行うことを基本としている。
　また、後述するように、同社では、積極的な情報発信などにより、地域の特別支援学校、就労支援機関、ハローワークなどの関係機関との連携強化に取り組んできた結果、実習受入れ件数は年々増加傾向にあり、平成30（2018）年度は17名、延べ24回で過去最高となっている。

(2)障害のある社員の従事業務
ア　本社業務
（ア）用度品取扱業務
　　　百五銀行の営業店などからの注文内容に応じて、用度品（百五銀行などで使用する伝票、広告宣伝物や各種事務用品）を倉庫から出
　　し、箱詰め・発送を行う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　出庫作業

 
(イ)発送業務
　　百五銀行から顧客への郵送書類の仕分け、封入、宛名シール貼りなどを行う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　発送作業

 
(ウ)手形小切手帳・入金帳、ゴム印作製業務
　　・印刷機の操作や製本作業を行う。
　　・台木やゴム版を切断し、接着する作業を行う。
 

 　　　　　　　　　　　　手形小切手帳作製　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゴム印作製

 
(エ)文書保管・廃棄業務
　　営業店などからの保存文書の引き取り・保管作業を行うとともに、保管期限が過ぎた文書は大型シュレッターで細断し、リサイクル業
　者へ引き渡す。

イ　分室業務
　　分室においては、主にパソコン操作（文字入力）が可能な障害のある社員がパソコンを使用する業務に従事している。

（ア）名刺等の印刷業務
　　　・パソコンを使用して、百五銀行などの行員用の名刺を作成する。
　　　・また、各種帳票で定例的に使用する宛名などをあらかじめ印字する。
　　　あわせて、プリンターでの印字が困難な箇所については、ゴム印で文字・数字を挿入する作業も行う。
　　

　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　名刺印刷　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　帳票印刷

（イ）会議資料・チラシなどの印刷業務（高次脳機能障害のあるAさんが従事）
　　　百五銀行などで使用する会議・研修資料や、顧客に配布するチラシなどの印刷について、各部署からメールで依頼を受け、輪転機や
　　複合機を使用して印刷の上、配布を行う。

　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　メールチェックと印刷設定　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　印刷物の仕分け　

　同社では、特例子会社の認定を受けて以降、従来外注していた業務の内製化や、銀行各店舗のパートタイム社員などが担っていた業務の切り出し・集約化を通じて、障害のある社員が従事する業務の拡大に積極的に取り組んでいる。また、百五銀行の各部署との間で定例の意見交換の場を設け、当該部署で人手を要するが「雑務」と位置付けられる細かな作業などの洗い出しや、同社側から提供可能なサービスの提案を行うなど、継続的な業務開発に努めている。

（3）職場定着への支援
　　同社では、「一人ひとりを理解し、個々に合った配慮・指導を心がける」という基本方針の下で、障害のある社員本人とともに障害の
　ない社員員へのサポート、職場環境の整備など各種の対応を講じ、障害のある社員が働きやすい職場づくりが進めてられている。

ア　企業在籍型ジョブコーチの配置
　企業在籍型ジョブコーチ研修修了者が2名配置（本社・分室）されており、現在、さらに2名が研修受講中である。今後も研修修了者を増やし、三重障害者職業センター（以下「職業センター」という。）と連携して、ジョブコーチ支援を充実していく予定である。

イ　目標管理シートの活用によるステップアップの支援
　障害のある社員を含め、期首には「目標管理シート」の作成を行っている。「自分で挑戦できる目標を立て、そのために何が必要かを考える」⇒「実践する」⇒「振り返る」⇒「できなかった点は、どのようにしたらできるようになるか再度考える／達成できたら次のステップを考える」といった取組を行い、指導担当者との面談で、ともに成果を確認して、ステップアップを支援している。
　このような個々のステップアップ、キャリアアップの支援は、正社員として採用し、60歳の定年、希望者全員の65歳までの継続雇用という将来を見据え、重要な取組と位置付けている。
　

 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　目標管理シート

ウ　定期のカウンセリング
　3か月に一度、直属の上司は参加しない形で、障害のある社員と社長・部長・ジョブコーチとの面談を行っている。本人が事前に記入した「ヒアリングシート」をもとに実施し、日頃の仕事で困っていることや、業務外の日常生活の話を含め、障害のある社員個々人の状況を確認できる機会としている。

エ　業務チェックシートによる確認
　高次脳機能障害のある社員の場合、作業が長時間に及ぶと注意力が低下し、うっかりミスが生じる特性があることを踏まえ、小まめに休憩をとってもらうとともに、自ら業務のフローチャートを作成してもらい、随時、自己チェックが可能な形をとるなどの配慮を行っている。

　　　　　　　　　　　　　

 　　　　　　　　　　　　　　　　　　うっかりミス防止の業務チェックシート

 
オ　社内LANを活用した情報共有の取組
　社内LANの共有ファイルを用いて、周囲の社員が、障害のある社員の職場での様子などで気づいた点があれば、それをタイムリーに記載し、それに対し、指導担当者が説明や助言などを行うとともに、その情報を社員間で情報共有できる仕組みを整えている。
　障害のある人と初めて一緒に仕事をする社員にとっては、職場での接し方や指導などのノウハウが分からず、不安になる場面が少なからずあるが、関連情報の共有や、助言のコメントがすぐに得られることで、職場全体で障害のある社員をサポートする意識の醸成につながり、同じ職場の社員が安心感をもつことができる。また、個々の障害特性に合わせた接し方を情報共有することで、個々の社員と職場全体のサポート力が自然にアップする学びの場になっている。

 
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　社内LANでの気づきの共有

カ　社内勉強会（月1回実施）
　同社では、障害のない社員が障害について学ぶ勉強会を毎月開催している。初回は、職業センターの障害者職業カウンセラーを講師に招き、障害特性の基礎知識を学び、ケーススタディを行った。その後は、障害のある社員のケーススタディを継続的に行っている。
　「こういうことで困っている」という事例に対し、出席者全員で検討することで直属の上司などは、普段とは違ったものの見方ができるようになるとともに、チームで支援しているという意識が培われる。また、身近で接している社員にしか分からない個々の障害者の得意な作業などが新たに判明し、新たな職域開拓の一助にもなっている。

（4）職場環境の整備

　特例子会社の認定時に、障害者対応のトイレの設置、正面玄関の自動扉化、車いす用スロープの設置や、執務室の扉を引き戸とするなどの対応を行った。
　また、本社の立地は公共交通機関によるアクセス面が課題であったことを踏まえ、平成28（2016）年に社員の送迎バスを導入し、通勤の利便性の向上を図った。これを機に、実習の受入も、本社のある津市近隣のみならず、県内各地の特別支援学校や就労支援機関からの依頼にも対応することで、受入れ先が多様化するなどの効果が生じている。
　さらに、百五銀行の様々な部署とフロアを共有する同分室では、パーテーションで囲った休憩スペースを設置し、落ち着いて休憩時間を過ごすことができる環境を整えている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　休憩スペースの設置

（5）関係機関との連携の強化

　同社では、障害者雇用を推進していくためには、障害者本人やその家族のみならず、企業に送り出す側である、特別支援学校、就労支援機関、ハローワークなどの関係機関に広く自らの取組を認識してもらうことが重要と捉えている。そのため、企業理念を制定するとともに、実際に働くイメージが理解しやすくなるように、現場の写真を積極的に活用した同社のホームページや会社案内を作成し、積極的な情報発信に力を入れている。
　また、特別支援学校の学校見学会、ハローワーク主催の障害者就職面接会や、県や労働局主催の障害者雇用促進セミナーへの出席のほか、関係機関に積極的に出向き、意見交換を行うことで、同社の取組への理解を深めてもらい、信頼関係の構築に努めている。


　　　　
　　　
　　　　　　　　ホームページ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会社案内