(1)設立
　・会社設立　：　平成20（2008）年 4月14日
　・特例子会社認定日　：　平成20（2008）年10月30日
　・資本金　：　8000万円

　　株式会社KDDIチャレンジド（以下「当社」という。）は、平成20（2008）年4月にKDDI株式会社（以下「KDDI」という。）の
　特例子会社としてKDDI本社ビル内に設立。平成26（2014）年には大阪にも事業所を設立した。

（2）事業の概要　
　親会社であるKDDI及びKDDIグループ各社からの委託業務、ビルクリーニングの委託業務を実施。

（3）企業理念

　　　わたしたちは
 

　　　　社員の幸せ
　　　　　すべての社員が明るく前向きに協働し、
　　　　　働きがいをもてる職場であり続けます。

　　　　お客さまの満足
　　　　　それぞれの能力を発揮して、
　　　　　お客様に価値あるサービスを提供します。

　　　　相互の信頼
　　　　　働くことを通じて、関係するすべての人と
　　　　　信頼の絆を築きます。

　　　　社会の発展
　　　　　あらゆる人が障がいのあるなしにかかわらず、
　　　　　いきいきと働くことができる社会の実現に貢献します。

　
　　　をめざします。

（4）組織構成
　当社の組織概要は下の「組織図」のとおりであり、東日本物流センターと大阪事業所以外は都内が就業場所で、事業推進部の各業務に従事している者が多い（事業推進部及び大阪事業所の業務内容は「2.取組の内容と効果」を参照）。
　なお、当社独自の部署として、事業企画部の就労移行支援準備室と社員相談室がある。就労移行支援準備室は、KDDIグループ子会社の障害者雇用を支援する体制を整えるためのものであり、社員相談室は社員の安定就労を支える部署として設置している。　

　

                                                   組織図

 

 

（5）障害者雇用の理念など
　一人ひとりの可能性に着目し、それぞれの状況に適した就労環境を整備することで、それぞれが活躍し安定就労できることを目指している。

（6）障害者雇用の経緯、背景
　KDDIでも従来から障害者雇用に取り組んできたが、その業務内容や就労環境のままでは、法定雇用率を充足するための多くの採用人数が見込めない状況であったことから、就労環境整備や支援が十分配慮できる特例子会社を設立した。そして障害者雇用に力を入れ、法定雇用率を満たしただけではなく親会社が目指してきた「ダイバーシティ＆インクルージョン」実現に向けた取組が強化された。
 

（1）各業務の内容と就労状況など

ア　携帯端末分解分別業務
　使用済み携帯電話を資源としてほぼ100％リサイクルするために、精密ドライバーを利用して手作業で分解し、18種類の部品に分別している。知的障害のある社員が多く従事しており、集中力が高いという特性が活かされ、平均的な処理台数の2～3倍を処理する社員もいる。

イ　リフレッシュルーム
　理療の国家資格を持つ視覚障害のある社員が、KDDI社員に鍼・マッサージサービスを提供している。予約表やお客様カルテはパソコンを使用するため、パソコンに「音声読み上げソフト」を使用している。また利用料の支払いを電子マネーに限定するなど、視覚障害に配慮のある環境で施術から支払いまでの一連の業務を担っている。

ウ　経理・購買業務支援
　業務委託元のKDDIの取引先向け支払伝票や社員が立て替えた経費の精算伝票の審査などを行っている。また、KDDIからの工事発注や物品購入のための発注申請に関わる審査も行っている。これらの業務はパソコンを使用して業務を行うが、常に正確かつ迅速な事務処理が求められるため、経理上のルールや仕様書に基づき、誤りを起こさない仕組みづくりを行っている。

エ　PCキッティング業務
　KDDIの各部署で使用されるPC（パソコン）をKDDI独自仕様により実用段階にもっていくためのOS（基本ソフト）のセットアップ、各種ソフトウェアのインストールを行っている。また、使用済みPCのデータ消去、レンタルPCの出荷・初期化対応、業務用携帯電話（スマートフォン）の初期設定、貸出メディアツールの出荷・返却処理、USBメモリーの作成やフォーマット作業も担っている。パソコンに詳しくなくても正確に業務遂行できるよう、画面キャプチャー付きで作業手順を記載した分かりやすいマニュアルを整備している。

オ　携帯保守センター業務
　KDDI社員に一人一台貸与されている業務用携帯電話の故障修理受付や代替機の貸出を行っている。また、入社する社員への携帯電話の払出し、機種変更の受付、不要となった携帯電話の解約受付や回収も担当。業務用携帯電話のメンテナンスやトラブルにも対応している。窓口業務もあることから事務処理だけでなくコミュニケーション力も必要な業務となっている。

カ　法人端末リサイクルセンター
　法人顧客の不要になった携帯端末の廃棄処理業務を行っている。端末一台一台のサービス終了状況を確認したうえで、端末やカード類を分別・破砕して精錬リサイクルを行う企業へ送付する作業を行っている。

キ　施設管理・メール便業務
　KDDI本社ビルなどでビル管理の各種補助業務を行っている。来訪者への入館証の交付・回収やビル内社員向け備品貸出と回収業務、経費処理業務などその業務は多岐にわたる。
　メール便業務（社内便と郵便物の受取・仕分け・発送及び宅配便の受取・仕分け）を担当している。また要望のある部署には、フロアまで社内便を届けるメールデリバリも実施している。

ク　関連会社支援業務
　KDDIグループから工事を受注した会社への従事者証や入館証の作成、業務用携帯電話の発注補助業務、さらに工事完了報告書の検収業務に必要な書類のチェック業務も行っている。このチームはグループ会社の事務所で業務を行っている。
　　
ケ　ビジネスセンター業務
　契約書や工事図面をPDF化し専用データベースシステムへ登録する業務、アンケートのデータ入力や集計、社内ホームページの作成、ダイレクトメールの発送など、多岐にわたる事務業務を実施している。

コ　ビルクリーニング業務
　応接室や会議室、食堂、喫煙室、トイレ、廊下など共用部清掃を行っている。清掃のプロとして場所ごとに異なる道具の使い方や汚れの落とし方など、業務に必要となる技術を身につける実習を行った後に業務を開始する。トランシーバーを活用した報告・連絡・相談の徹底といった、一人ひとりが自立して動くことができる仕組みを導入し、お客様に快適で安全な環境を提供している。

サ　カフェ業務
　KDDIの社員向けにシアトル式カフェ「Cafe Challeged」でハンドドリップにより一杯ずつ丁寧に淹れたコーヒーを手頃な価格で提供している。コーヒー豆にもこだわった「チャレンジドブレンド」のほかに、本格的なエスプレッソマシンで淹れるカフェラテ、エスプレッソ、4種類の茶葉で抽出する紅茶を提供している。東京と大阪の3店舗のうち1店舗では手作りのパンも焼き、カフェで販売している。　

シ　東日本物流センター業務
　KDDIの物流倉庫でスマートフォンを梱包するための緩衝材の発送、携帯端末の取扱説明書や付属品の分別、保管書類の文書倉庫への発送、清掃業務などを行っている。

ス　大阪事業所
　大阪ではビルクリーニングと携帯端末分解分別、書類のデータベース登録業務の他リフレッシュルームやカフェ業務も行っている。

                                                           

                                                                                               カフェ業務

 

 

（2）職場での工夫

ア　ハード面の整備
　・車いすを利用の社員のためのスライドドア設置
　・視覚障害のある社員のための導線の整備
　・見渡しの良いフロアレイアウト

                                                 

 

                                                        　        見通しの良いフロアレイアウト

  

イ　ソフト面での整備・工夫
　・職場でのマニュアル、ツールの整備
　・通院休暇：通常の年次有給休暇とは別に、定期的な通院を要する社員に対しては、年間20日間を限度とする通院休暇が取得できる。
　　（通院休暇は時間又は1日単位で取得可能）。
　・資格取得奨励金：会社が業務上必要と認めた資格を受験した社員には、受験料が補助される。
　・支援者との連携：入社時には就労移行支援事業所や障害者就労支援センターの支援者についてもらい、本人、支援者、会社の三者が
　　連携して関わり就労をサポートすることで定着につながっている。
　・ラジオ体操とストレッチ体操：毎日朝礼後とお昼休み後に全員でラジオ体操を行っている。また業務開始1時間半が経つと、休憩とス
　　トレッチ体操をして、体をほぐした上で仕事に戻ることとしている。
　・お昼をみんなで食べる：みんなでお昼を食べ、食事をしながらコミュニケーションをとることで、不調の早期発見やリーダー以外の
　　社員との関わりを持つなど有意義な時間となっている。
　・社内イベント：原則として全社員が参加する年1回のバーベキュー大会、忘年会を開催している。ふだんは別の部門で働く社
　　員がともに参加することで、一体感を持つことにつながっている。なお、こうした場が苦手な者もあることから参加は任意である。

 

                                   

 

                                                               バーベキュー大会

 

ウ　研　　修
　研修の機会を設け、一人ひとりが自分の特性を理解するためにナビゲーションブック（注）を作成し、それをリーダーと会社側に共有してもらう内容としている。

　　（注）ナビゲーションブックとは、障害者職業総合センターによって推奨されている、障害のある人が就職活動や職場定着のために
　　　　　自己理解と特性を伝えるために活用するツール。

（3）チーム作りと相談体制の工夫
　会社設立後、採用数を増やしたくても増えていかなかったところ、ハローワークの雇用指導官のアドバイスで精神障害者を採用することになった。この社員の入社後の活躍が、精神障害者を多く採用していくきっかけとなり、現在では半数以上が精神障害と発達障害のある社員となっている。
　精神障害のある社員が働き続けている要因には、チームの編成と相談体制によるところが大きいと考える。チームは5～6名のメンバー（障害のある社員）で編成し、そこに1名の管理者（リーダー）がつく体制をとり、メンバーは就業する中で何か気になることがあればすぐに管理者に相談できることが継続就労につながっていると感じる。また社内に複数の業務とチームがあることで、個々の状況や人間関係などでの課題が起きても、業務間・チーム間での異動による解決を図る方法もとれることが、社員の安定就労につながっていると考える。また、管理者にはKDDIグループでマネジメント経験のある定年後再雇用の社員が就いて、長年の就業経験から培った知識と経験を生かして活躍している。

（4）カフェ業務の取組から
　カフェの運営を始めたことでKDDI社員とKDDIチャレンジド社員が接する機会が増え、コミュニケーションが取れるようになったことが一番の効果だと感じている。お客様（KDDI社員）から「美味しかった」と直接感想を聞けることに仕事の喜びを見出している社員もいる。お客様側からは「優しい接客で心が癒される」という声も届いている。またカフェの利用を契機にKDDI社内での障害者雇用への認識も高まり、当社が新たな業務の受託を得るきっかけとなり、更なる雇用拡大へとつながっている。