"働く喜び"
~誰もが生きがいを見つけられる職場を目指しています。~
- 事業所名
- 株式会社共進
(法人番号: 8100001018288) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 長野県諏訪市
- 事業内容
- 精密機械部品・医療機器部品の製造販売
- 従業員数
- 157名
- うち障害者数
- 5名
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障害 人数 従事業務 知的障害 4名 製品の洗浄、梱包・出荷、コンテナ洗浄、切粉処理、材料の供給、燃料の補充 精神障害 1名 製品の測定 - その他
- 障害者職業生活相談員
- 本事例の対象となる障害
- 知的障害、精神障害
- 目次
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事業所外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社共進(以下「当社」という。)は昭和37年(1962年)に設立され、諏訪市に本社を置く精密部品メーカーである。当社の主要事業は主力商品である「ソレノイド・バルブ鉄芯」の製造で、業界の固定概念を大きく変えた独自の金属加工技術「カシメ接合法」により、オール切削加工部品の一部をプレス部品に替え、これを接合する技術で作業時間の短縮、材料使用量の節減を図り大幅なコストダウンに成功した。さらに、回転部品にも対応できる「新カシメ接合法」も開発し、特許を取得した。今注目の電気自動車のモーター部品にも活用されている。
「カシメ接合」ができる素材は、同種材はもちろん、異種材や、熱処理・めっきを行った素材でも可能である。「カシメ接合法」は冷間で行うため、材料が変質せず、また、浴接や圧接のような熱歪みもないため、接合後の追加工が必要ない。その他、圧入長さが取れない薄い部品の組立や、圧入すると曲がってしまうような細いシャフトの組立にも適している。
自動車部品や油圧機器製造が主力だが、医療機器製造業登録証を取得しており、接着剤や熱を使わず、金属の塑性変形だけで接合する「カシメ接合法」を用いて、医療機器の開発にも取り組んでいる。自社での医療機器開発に加え、SESSA(中小企業医療機器開発ネットワーク)に加盟して、医療機器開発を行っている。
<経営理念>
仕事を通じて社会に貢献し、社会から必要とされる企業となる。
<経営方針>
1.人間性及び能力の向上に努め、常に改善の意識を持ち、質の高い仕事をする。
2.市場に良質で安全な製品を供給する。
3.グローバルな視点で物事を考える。
4.地域に貢献し、地域の発展のために寄与する。
5.法令を順守し、透明性の高い経営をする。
(2)障害者雇用の経緯
当社の経営理念は「仕事を通じて社会に貢献し、社会から必要とされる企業となる」ことである。当社は私企業ではあるが、従業員を雇用し、お客様がいるからには、永続する必要がある。もちろん、お客様・従業員・地域社会から必要とされる存在でなければ永続することは難しくなるため、障害者雇用も社会から必要とされる企業になるためのひとつとしてはじめた。
障害者雇用は知的障害者を19年前に1名採用してから継続的に雇用しており、近年では精神障害者も雇用している。
障害者雇用を始めた当初は、知的障害者ができる業務・できそうな業務があるか、職場との相性はどうか、開始・終了・不明点を伝えられるか、指示内容や手順をどこまで理解できるのか、配慮しなくてはならないことは何なのか、健康上の心配はないのかなど、様々な不安があった。
そのため、障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)、ハローワーク、市町村などに相談し、制度を利用したり、助力を得たりしながら進めてきた。採用前には長野県の「障がい者民間活用委託訓練」(注)を活用したり、採用後には雇用定着に向けて、どのような作業が可能か、どのようにコミュニケーションをとったら良いか、指示が理解されているかなど、試行錯誤しながら能力の見極め、ルール作りや分かりやすいマニュアル作りを行い、安定した雇用が実現できた。また、全社挙げてノーマライゼーションの実践(障害の有無に関わらず同じ職場で働く、社内行事にも周りの従業員のサポートで参加する、障害者雇用の制度や会社の方針などに関する従業員への説明など)に取り組んできた結果、障害者雇用を始めてから、今まで障害のある従業員の退職者がほとんどいないことは特筆すべきところである。障害者雇用をしたことで、他の従業員がフォローをすることを通して業務改善のきっかけになったことが幾つかあり、これは大変に良かったと思っている。また、障害のある従業員は休むことなく出勤し、真面目な仕事ぶりと明るい性格で周りに元気を与えてくれている。
また、平成30年に障害者雇用優良事業所として高齢・障害・求職者雇用支援機構の理事長表彰を受賞したことも全従業員の励みになっている。
注:長野県では、求職者の早期安定就労を促進するため、工科短期大学校及び技術専門校(以下「技専校等」という。)を実施主体
とし、専修学校、社会福祉法人、NPO法人等に業務を委託して公共職業訓練「民間活用委託訓練」及び「障がい者民間活用委託
訓練」を実施している(長野県のHPから)。
2. 取組の内容と効果
障害者雇用を進めるに際し、当社が取り組んでいること、留意していることは次のとおりである。
(1)障害のある従業員と家族・各種支援団体・会社が密なコミュニケーションをとる。
・障害のある従業員と、指導担当者・障害者職業生活相談員とのコミュニケーション
障害のある従業員の配属先で日常的に指導や相談を担当する者(以下「指導担当者」という。)を決めており、指導担当者と障害者
職業生活相談員は連携しながら、業務前後、業務中、昼食時、休憩時での相談などにより本人とのコミュニケーションを図っている。
・管理監督者との定期面談(月・週単位で実施)
指導担当者とは別に、配属部門の管理監督者(主として職長)は本人との定期的な面談を行っている。なお、管理監督者は指導担当
者からの報告などにより本人の状況を把握するように努めている。
・ご家庭とのコミュニケーション
ご家庭とのコミュニケーションツールとして「連絡帳」を活用している。指導担当者は連絡帳や電話により会社であったことや連絡事
項をご家庭に伝え、ご家庭は回答や心配事などを記入するなどにより、コミュニケーションが図られている。
・支援センターとの定期面談と都度相談
支援センターと障害のある従業員は定期的に面談を行っている(概ね月1回)。それ以外にも必要が生じた際には随時行っている。会
社とは異なった立場の者との面談で聞けることもある。相談内容については、本人の了解を前提に当社との共有を図っている。
・支援者の会との連携
「支援者の会」は、グループホームを利用した者について関係する専門機関と協力して立ち上げたものである(詳しくは後述)。
障害者雇用で重要視していることのひとつが「関係者間でのコミュニケーションに基づく協力体制の構築」である。障害のある従業
員・家庭と当社のコミュニケーションは、指導担当者はもちろんのこと、職場の職長、配属先のメンバー、総務部門が連携して密に行
い、日々の様子を把握し、対応している。
また、会社は障害についての専門的な知識を有していないので、支援センターをはじめとする専門機関などとの連携・協力も重要で
ある。支援センターとは定期的に情報交換を行い、アドバイスを得ているほか、課題が生じた際にはその都度相談し、アドバイスなど
を得ることで、雇用環境の整備や個別の課題への対応を図っている。支援センター以外の各種の団体や機関との連携も図っており、
ある従業員がグループホームに入所する際には関係者による「支援者の会」を立ち上げ、スムーズな入所、職業生活の維持につな
げることができた。
そうした様々な経験から、関係者間のコミュニケーションと協力がとても重要と感じている。
(2)配慮はするが、特別扱いはしない。
障害に応じた業務上の配慮が必要となることもあるが、障害のある従業員も障害のない従業員と同様にできること(清掃など)については特別扱いせず、みんな同じように行うようにしている。それにより、全員が同じように働けるように過ごしやすい環境づくりができてきている。
(3)適切な「役割」と「責任」を持たせる。
・目標を掲げる指導はしても、厳しいノルマは課さない。
障害のあるなしに関わらず、従業員一人ひとりの力量にあった業務を設定することとしている。担当業務で個々に「目標」を設定することはあるがそれはノルマではない。各人の役割や課題に関連して設定したチャレンジの目標である。したがって、作業に関する目標(数量や正確さなど)もあれば、行動などに関する目標(勤怠や報連相など)の場合もある。
・目標を設定して業務を行い、日々チェックシートで指導担当者と共に評価をしている。
設定した目標については、チェックシートを使って日々の業務遂行状況や職場における行動などをもとに指導担当者と本人とで確認し、評価すべき点は評価し、指導すべき点は指導することでモチベーションアップに役立てている。指示された業務をただこなすだけでなく、「役割」と「責任」を持って業務を行うことにより、やる気と適度な緊張感を保つことができていると感じる。また、一日の終わりにはチェックシートで振り返りを行い、日々改善を心がけている。その結果、本人も自分が日々成長していることを感じることができている。
3. 今後の展望
障害者雇用を長年続けているが、十数年前から障害者の雇用者数が増えたことに伴い課題も増えてきていた。障害者雇用を拡大するにあたり、障害のある従業員ができる仕事はあるのかといった問題に直面した際には支援センターに相談を行い、障害特性などを理解した上で業務を見つけていく必要があるとのアドバイスを受け、社内で検討した結果、障害のある者に合った業務を見つけることができた。また、障害のある従業員が確実に業務を行えるように、業務手順の標準化と、標準書、手順書の作成・導入を進めた。その結果、手順が分かりやすくなるなど、障害のある従業員以外にも働きやすい職場になっていった。
さらに、安全面では障害者が怪我無く業務を進めることができるよう製造機械に当社独自の安全装置をつけ、リスクアセスメントやヒヤリハットを充実させていくことにつながり、職場全体が安全についてより深く考えることができるようになってきた。次の写真は作業場面(左)とその改善例(右)である。左の作業では、全ての製品を挿さずに終了してしまう、間違って異なる材料を使ってしまう、開始・完了を指導担当者に報告せず他の作業を始めてしまうなど課題があったため、対策を進めた。具体的には、右の写真のように、続けて作業する製品には「○」を、作業してはいけない製品には「×」を大きく表示し、視覚的に間違えを防げるように改善した。このように障害のある従業員が見て判断できるような表示の改善・マニュアルの作成などを進めている。
製品挿し・ブラシがけ 〇は作業可、×は作業不可の表示
当社では知的障害のある従業員を多く雇用しているが、全員前向きで、仕事が楽しい、生きがいであると言っている。かれらの多くが現在行っている業務は、「製品のウレタン挿し」という業務だが、障害のない社員も、正確性、スピードなどはかなわないほど成長している。
障害のある従業員の特性や性格を理解して活かせるようにすることにより、障害のない従業員よりも集中して取り組むことができるなど、会社にとっても十分な戦力になっている。『 仕事は生きがいになる!』
障害のある従業員も障害のない従業員も皆がそう思えるような職場づくりを当社は目指していきたい。執筆者:株式会社共進
総務部総務課長 吉澤直人
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