地域の支援機関との連携による障害者雇用の取組
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事業所外観
1. 事業所の概要
株式会社積水化成品沖縄(以下「当社」という。)は、創業55期を迎え、現在は積水化成品工業株式会社のグループ会社として、主に発泡スチロール製品の製造、販売を行っている。
沖縄県内唯一の発泡を主としたプラスチックスメーカーとして、水産分野、農産分野、食品包装分野、土木・建築分野、物流分野、医療・衛生分野と多岐の分野で、緩衝性、断熱性、軽量性などの発泡プラスチックスの優れた特性を活かした製品を提供している。
さらに、高い成型技術とノウハウでお客様のニーズにお応えするソリューションカンパニーを目指している。
積水化成品グループの経営理念
「われわれ積水化成品グループは、人間尊重と相互信頼を基本に全員経営を実践し、
"新しい幸せ"を目指して常にイノベーションをし続けます」
2. 障害者雇用の経緯
今からさかのぼること30年余り前となるが、会社の近隣にある自治会主催の親睦会に製造責任者が参加し、その席で知り合った授産施設(以下「A施設」という。)の職員の障害者支援に対する熱意を感じ、後日、A施設を見学した。そして、障害者の方が作業をまじめに黙々と行っている姿を見て、作業への粘り強さや意欲などに素晴らしいものがあることを感じ、当社で行っている製品の梱包作業や点検作業などを任せることが十分可能であると判断し、A施設に業務委託を行うこととした。具体的にはA施設内に製品梱包作業グループ(20名)を配置しスタートした。
作業をスタートした時点ではグループのメンバー(以下「作業者」という。)には、初めての慣れない作業に戸惑いもあり作業者の中には落ち着きの無い者、ほとんど作業にならないような動きをする者、または職員が付きっきりで手を添えないと作業にならないような者が多く見られた。しかし、時間が経つにつれ作業者一人ひとりの個性や作業能力が見えるようになり、次第に、各作業者のポジションと役割ができあがり、作業がスムーズに進むようになってくると、作業を通して当社の社員とのコミュニケーションも取れる様になり、作業者一人ひとりの顔と名前やニックネームを覚えるなど信頼感が増し、作業時間は掛かるものの、こちらが要望する作業内容へと近づいてきた。その後半年、一年と経過するにつれ作業スピードも早まり、作業の間違いなどもほとんど無くなりスムーズに作業が流れるようになった。
A施設との連携をきっかけに障害者の方々にも仕事に対する情熱ややりがいを感じてもらいたいと思い進めてきたが、時間の経過と共にA施設の諸事情などもあり、近隣4か所の施設とお付き合いさせていただくこととなった。
当初はA施設内での作業が中心だったが、その後数名ではあるが、当社工場へ出勤する形を取るなど作業条件を変え現在に至っている。
こうした経過のなかで、障害者を当社の社員として雇用することも可能と判断し、採用することとした。採用に向けてはハローワークや施設と相談し、募集、職業紹介、採用選考を進め、精神障害のあるBさんを採用した。3. 取組の内容と効果
障害のある方を社員として採用し、工場に配属することについて、配属先の社員への負担があるのではないかという懸念があったため、Bさんがどのような作業ができるのか向いているかなどを見極めるために、まずは体験作業を実施して本人が作業内容について勤務希望があるかを確認し、採用を決めた。採用後数か月は、作業現場の基本となる清掃や整理整頓作業を中心に担当させた。
そして、Bさんの作業の選定、配置、教育・指導、周囲の社員へのフォローなどについては製造部のビーズグループのグループ長(筆者)が中心となって対応することとした。
作業面では、日々の清掃作業はどの作業場においても必要な項目であることから次の対応をとることとした。
まず、一日の清掃予定表を作成し、清掃場所の順番と清掃方法を教え、清掃場所が一か所終わるごとに本人から部署の担当者へ連絡し、担当者は仕上がりを確認する。確認がすんだら次の清掃場所へと進み、清掃がすべて完了したら、指定された部署の担当者に何か手伝うことがあるかを確認し、必要なら手伝いをする。手伝いが不要で手があくようなら、グループ長へ連絡し、新たに指示を仰ぐという流れをつくった。そして、清掃作業を中心に整理整頓などの本人の行動(作業ぶり)を評価し、本人に合った作業を選定し、段階的に作業内容を変更していき、単純作業でも本人が責任感を持って取り組めるようにできるだけ褒めて育てる指導を行った。
次にBさんが現場内での人間関係についても気持ちよく作業ができるように、工場現場への配置時には、当該部署の社員を中心にBさんへの気遣いと声掛けをお願いした。
その後も徐々にBさんと周囲の社員との作業現場内でのコミュニケーションの輪を増やしていき、同じ作業場で働く仲間となり、声を掛け合うことでお互いに必要とされていることを感じてもらえるよう積極的に協力し合い、共に作業を行うことで信頼関係を深めることができるよう努めた。
その他にも定期的に作業内容や意欲などに対しても本人へ声掛けし確認すると同時に周りの社員からも作業状況について評価を聞くなどの状況確認を行い、次の指導教育に活かした。
社内のコミュニケーション活動の一環で、社内行事として毎年定期的に行われている新年会や半年毎に行われる上期下期の慰労会、ボウリング大会、ビーチパーティーなどの社内行事にも本人が積極的に参加できるようグループ長が声掛けし、普段あまり接する機会の少ない部署の人達とも積極的にコミュニケーションをとれるための活動に取組んでいる。
日々の昼食時間や午後の休憩時間などについても必ず声掛けを行い、一緒に食事を取りお茶を飲む時間を取るよう心がけることで仲間意識や家族意識が高まった。
そうした取組の効果として現場での作業コミュニケーションがうまれ、作業がスムーズに行えるようになり、Bさんは今では現場の一員として本当に必要とされる人材へと成長した。
なお、Bさんは2、3か月に一度の通院を続けているが、通院などでの休みがとりやすいように会社としても配慮している。Bさん自身も、作業場は暑く、肉体労働であることから、熱中症にならないよう健康管理に努めており、安定した勤務を続けている。4. 主な作業内容
Bさんが現在担当しているのは以下の作業である。(1)製品移動作業
工場で成型し梱包された発泡スチロール製品を、大型の運搬用台車を使用し工場成型場から別棟倉庫へ製品を移動する作業を主に担当している。工場成型場では常に10種類程度の製品が同時に製造されているが、成型場の一時保管場所の状況をみながら移動製品の優先順位を判断し移動を行う。
工場構内は大型トラックの出入が頻繁にあるが、台車の移動でトラックの荷卸作業の邪魔にならないように安全作業を徹底し、100種類近くある製品の保管場所を把握し製品移動を行っている。
(2)倉庫内の製品保管管理
倉庫内では保管スペースを有効利用するために、入庫と出荷の状況を把握すると同時に、製品の積み上げ段数や整列方法を熟知し、ムダの無い保管作業を行っている。製品の段積みについては特に手馴れた作業で高く積み上げることを得意とし、初めて作業を見る人が彼の積み上げ作業を見て高く積み上げることに驚くほどである。
また、自発的に倉庫内の空きスペースを整理し後続の製品入庫スペースを確保するなども行いスムーズに製品保管作業を進めている。
段積み作業の風景
(3)製品の出荷管理
倉庫内での製品の入出庫については、古い製品から先に出荷される先入先出しのルールがあり、どの場所の製品が優先に出荷されるかなどの内容を把握し、本人が自ら製品の出荷順番の表示も行うこともある。
また、自社の配送担当者へ出荷場所を声掛けし、トラックへの積み込み作業を協力して行っているので、配送担当ドライバーからも積み込み時間が短縮されると頼りにされる存在となっている。
(4)その他
倉庫内の製品の在庫数を日々確認しているため、出荷量が多く在庫量が少ない品種をグループ長へ報告するなど、事前の欠品対策への協力もあり、生産工程係との連携も取れている。
その他にも、一つひとつは軽量な発泡スチロールとはいえ、ケース単位に梱包された製品を倉庫へ入庫する作業は楽ではない。人力で持ち上げ倉庫内で積み上げるのは、簡単にはできない作業なので、梱包作業を行う女性社員からは、特に頼られる存在となっている。
入出庫作業の風景
5. 今後の展望と課題
近年はどの事業所でも人手不足の問題を耳にし、機械化や外国人労働者受け入れなどの話を聞く機会が増えたが、まだまだ身近には障害のある方で仕事をしたい、働きたいという人がいることに企業は目を向け、受け入れ側として職場全体の障害者雇用に関する理解を深め、障害の種別に関わりなく、障害者が自立し社会生活を営むことができるような体制作りを進める必要がある。
当社が障害者の雇用に際し気をつけていることは、あまりプレッシャーをかけないことである。プレッシャーをかけることでストレスを感じてしまい、そこから休みがちとなり退職に至った障害のある社員が過去にあったためである。業務指示の際にはある程度余裕のある指示とし、本人の判断で自発的に作業ができるようにすることで、自分の適性や得意分野に気づき、やりがいが生まれ、長期雇用につながっていると考えている。
当面の課題としては新規の障害者雇用で、具体的にはBさんと同じ部署で1名の採用を考えており、関係機関などへの働きかけを始めている。
当社では障害の有無に関係なく作業者が安心して快適に働くことができるよう、作業者の作業能力に合った作業環境作りを進め、作業者の何が得意なのか見極め得意な分野を伸ばし、不得意な場面では助け合えるようなつながりを大切にして行きたい。
職場での仕事を通した付き合いや、コミュニケーションだけでなく個人の趣味やサークル活動などを通して、職場外でも社員同士が交流を持ち、人と人、人と家族がつながるような関係を作り上げ、更に深い信頼関係を築き、プライベートにおいても交流を深めて行けたらと考えている。
執筆者:株式会社積水化成品沖縄 製造部 ビーズグループ
グループ長 安里 尚浩
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