障害者雇用の安定と地域における障害者雇用
のコーディネートとしての取組
- 事業所名
- 株式会社白旺舎
(法人番号: 8110001026488) - 業種
- サービス業
- 所在地
- 新潟県南魚沼郡湯沢町
- 事業内容
- 総合クリーニング業
- 従業員数
- 49名
- うち障害者数
- 10名
-
障害 人数 従事業務 知的障害 10名 クリーニング業務全般 - 本事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
-
事業所(本社)外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
ア 会社概要
(ア)社名 株式会社白旺舎
(イ)所在地
・本社、ドライクリーニング・リネンサプライ工場:新潟県南魚沼郡湯沢町
・南魚沼営業所、南魚沼工場:新潟県南魚沼市
(ウ)創業
創業昭和50年4月、会社設立は昭和58年12月。
(エ)会社沿革
昭和50年4月 新潟県南魚沼郡湯沢町にてドライクリーニング集配業務を開始
昭和54年6月 湯沢町にドライクリーニング工場建設。社名を白旺舎として営業開始
昭和58年9月 ドライ部門に加えて、ホテルリネンサプライ部門、制服レンタル・販売開始
昭和58年12月 有限会社白旺舎 設立
昭和61年9月 湯沢町にリネンサプライ工場を建設、リネンサプライ処理能力向上を図る
平成5年4月 社名を株式会社白旺舎に変更
平成5年7月 南魚沼市に南魚沼工場建設
平成10年4月 地元障害者施設などからの要請を受け障害者雇用に取り組む(障害者雇用の開始)
平成27年9月 南魚沼市に南魚沼営業所を開始
平成30年9月 平成30年度障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰受賞
イ 基本方針・理念
・社会・環境・人にやさしい会社
・地域と共に成長
・経済の活性化に役立つ
・人々の暮らしに貢献
地域に根ざし、地域産業の縁の下で支え、地域に貢献できる会社をめざす。
・時代・環境に伴い多様化するニーズに即した商品を提案し、お客様が描く理想の環境づくりをお手伝いいたします。
・プライドをもったこだわりの白さ、安心安全そして綺麗で清潔な寝具をお届けいたします。
・社員一人一人が培ったノウハウを生かして、より良いサービス提供、地域経済の活性化に貢献する。
ウ 取扱品目
(ア)リネンサプライ(メンテナンス付き寝具リース)
・病院/福祉施設リネン(布団・シーツ・タオル・マット・布オムツなど)
・ホテルリネン(寝具類・浴衣・タオル・テーブルクロスなど)
(イ)ユニフォームレンタル/販売
・病院/福祉施設(病衣・白衣・検査衣・介護衣、他)
・企業ユニフォーム(社服・作業服・調理服・他)
(ウ)マットレスリース/販売(一般・医療・福祉・他)
(エ)カーテンリース/販売
(オ)寝具リース(掛布団・敷布団・枕など)
(カ)一般クリーニング(スーツ・セーター・着物・皮製品など)
(キ)病院・福祉施設業務
・院内業務(寝具管理・洗濯業務など)
・入院/入所セットリース(病衣・タオル・歯ブラシ・オムツなどの必要品のセット)
(2)障害者雇用の経緯
株式会社白旺舎(以下「当社」という。)では、繁忙期(夏季・冬季)の人材確保が課題であったが、平成10年ごろに養護学校からの依頼があり職場実習を受け入れ、その時に受け入れた者が業務を遂行していく中で、予想外の能力を発揮したことに感銘を受け、採用したことがきっかけであり、現在もその従業員は勤務している。その後毎年1人ずつ雇用を拡大していった。雇用に当たっては、戦力化することを考え、機械化の導入や仕事の流れを見直して対応してきた。
2. 取組の内容と効果
(1)現在の取組の状況と効果
現在10名の障害のある従業員を雇用しており、平成27年と平成29年度に新規雇用した者以外は、10年以上継続して勤務している。新しい障害者を受け入れた際には、先輩の障害のある従業員が仕事を指導する体制となっている。たとえば、指示された作業が終わって手が空いた場合には、別の作業を行ってよいかと先輩の障害のある従業員(上司)に確認し、作業を行っている。指示を待つだけでなく、自発的に業務に取り組む姿勢は会社としても戦力になっている。
雇用している障害者10人を一つのチームとして、このチームで1%でも利益を上げる生産ができればいいと考えて雇用し続けてきた。技術の習得には少なくとも1年間は必要で、長いスパンで考えている。
人材育成にかかる研修も実施している。他人の良いところを見つけて、称賛するような趣旨の研修会を開催しており、障害のある従業員にも受講させている。
地域の中で障害者雇用が進むような取組を行っている。会社の休業日である日曜日には、職場実習を実施し、特別支援学校の生徒や支援機関の利用者を受け入れている。また、特別支援学校などで障害者支援、雇用促進などに係る講演も行っている。地元の社会福祉法人との交流もあり、障害者施設の商品販売のお手伝いや、下請けとして自社の仕事のお手伝いをお願いしている。
最近は、クリーニングの顧客に対し、障害者雇用のメリット・デメリットを説明し、地域内での雇用促進のための取組を行っている。
(2)事例紹介(障害のある従業員の担当業務・職場配置)
ア Aさん
Aさんは知的障害のほかに言語障害なども有している。担当業務は「布団・枕カバーの洗浄」であり、大型の洗濯機を使い寝具類や汚れのひどい枕カバーを洗っている。その際には細かな温度設定、消臭、染み抜きなどを適切に設定し、洗浄することができている。
また、Aさんは当社における障害のある従業員の指導者的存在で、後輩などに対し時に厳しい面もあるが、彼が新人や職場実習生などの指導を担当し、面倒をみることで障害者の雇用が進んでいる。人の嫌がる地味な仕事でも積極的にこなしている。自発的に機械のメンテナンスもできるようになった。
Aさんの大型洗濯機での作業の様子
イ Bさん
Bさんも知的障害のほかに自閉症を有している。担当業務は洗濯投入作業で、シーツ、布団カバー、浴衣など大量に回収された洗濯物を品種、汚れの度合い、お客様別に仕分けを行い、洗い方、仕上げ方別に設定しながら、毎日7tから10tを洗っている。コンピュータでの設定や変更もこなしている。
Bさんの洗濯物の仕上作業の様子 Bさんの使用する機器(3)その他(障害者雇用にかかるエピソード)
洪水で道路が渋滞し多くの従業員(管理者含む)が出勤できなかった際に、出勤できた障害のある従業員数名が、上司の電話だけの指示で機械を稼働し、生産を実施したことがあった。
また、生産(作業)内容はメモに記載し、コンピュータ入力して管理しているが、そのメモが紛失し入力できないことがあった際に、障害のある従業員のひとりがすべて記憶していたということがあった。後日そのメモが見つかり、内容が合致していた。3. 今後の展望と課題
障害者を雇用しているといってもビジネスとして成り立つ必要があり、当社で現状以上の障害者を雇用することは経営的に厳しいのが実情である。その中で、地域で障害者雇用を広めていくには、他の企業での雇用を拡大していく必要があり、当社はその面での貢献もしたいと考えている。当社の経験からは、障害者雇用には各社の業務の状況、障害者の得意不得意、興味のあることなどを踏まえて、できる作業を拡大させ、多くの能力を発揮できるようにしていく必要があると考える。
そうした経験やノウハウを元に、他社が障害者雇用を進めるための取組に力を入れて行きたいと考え、その一環として、取引先の企業に障害者雇用の有用性を説明(プレゼンテーション)し、業務内容を踏まえた職務内容を提案、地域の特別支援学校や支援機関との関係をつなぐ、コーディネーターのような活動も実施している。具体的には以下のような事例にかかわり、障害者雇用につなげることができた。
(1) 近隣のリゾートホテルでの「バックヤード業務」
(2) 県内温泉旅館・ホテルでの「清掃業務」や「バックヤード業務」
(3) ワイナリーのブドウ畑の「管理業務」
当社ではこの取組を今後も継続していきたい。そして、この取組を通じて障害者が自立し報酬を得て、地元で支出することが、地域経済への貢献にもなることと考え、地域内での障害者雇用の拡大に貢献していきたい。最後に、当社では20数年前から人手不足感があり、時には工場の半分の人が休みで、生産がままならないことがあった。そこに現れたのが、のちに当社にとってかけがえのない人材となる障害者であった。彼らとあゆみ20数年、彼らがいることで当社はやってこられたといっても過言ではない。
昨今、ニュースでも取り上げられ話題となっている人手不足。今後さらに深刻な状況になる中では、他社にも障害者雇用を前向きに考えていただきたい。時間と手間は多少かかると思うが、必ず貴重な人材になると確信している。彼らを社会参加させることで、会社・地域が元気になり、お互いにハッピーになる好循環が実現できると確信しており、当社がそのお手伝いをできれば幸いと考える。
執筆者:株式会社白旺舎 南魚沼営業所 所長 上田 哲雄
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