富山型デイサービスで成功した事例
- 事業所名
- むらい食品株式会社
(法人番号: 8230001003228) - 業種
- 飲食・宿泊業、医療・福祉業
- 所在地
- 富山県富山市
- 事業内容
- 飲食料品小売業及び介護福祉事業
- 従業員数
- 54名
- うち障害者数
- 3名
-
障害 人数 従事業務 内部障害 2名 介護福祉事業部部長、グループホーム、介護助手 精神障害 1名 デイサービスセンター 介護職 - 本事例の対象となる障害
- 内部障害、精神障害
- 目次
-
月岡デイサービスセンターやまゆりの外観1月岡デイサービスセンターやまゆりの外観2
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)概要
むらい食品株式会社(以下「当社」という。)は、現在、スーパーマーケット部門と介護事業部門を有する事業所である。
創業は昭和25(1950)年4月、むらい商店としてスタートし、昭和46(1971)年1月に法人化した。
スーパーマーケット部門は富山市立山町にあるスーパー・サンフレッシュ五百石店であり、同店舗では飲食料品を中心に販売している。
加えて平成16(2004)年6月からは介護事業に進出し、現在6施設(グループホーム4施設・デイサービスセンター1施設・小規模多機能ホーム1施設)を展開しており、事業拡大に成功した企業である。
<介護施設の開所状況>
平成16年 6月 グループホームときわ木の里(2棟)開所
平成18年 2月 月岡デイサービスセンターやまゆり開所
平成18年 5月 グループホームやまゆり(1棟)開所
平成23年 4月 グループホーム花芙容開所
小規模多機能ホーム和み家花芙容開所
(2)障害者雇用の経緯
当社における障害者雇用は、以前にスーパーマーケット部門で働いていた知的障害のあるXさんに遡る。採用の経緯は、当社のスーパーマーケット部門で働いていたXさんの母親からの紹介がきっかけで採用したものであった。
Xさんはすでに定年退職しており、現在はすでに述べたように3人の障害のある従業員が介護事業部門で働いている。
人工透析を受けているYさんは当社関連会社で働いていた従業員の妻であり、グループホームで介護助手の仕事をしている。
Zさんは、当社在職中に心臓疾患で障害を持つに至り、現在、介護事業部門で部長を務めている。
3人目が本稿で紹介する精神障害のあるAさんである。Aさんは特別支援学校高等部在学中に当社の介護施設でのボランティアを志願してきたことが採用のきっかけである。
Aさんについては、「2.取組の内容と効果」で詳しく述べるが、Aさんもデイサービスセンターでの介護職に従事している。
このように全員が介護事業部門に勤務しているが、当社の介護事業の運営方針などを次に紹介する
(3)介護事業について
ア.運営方針
要支援、要介護状態となっても、その人らしく穏やかに楽しく誇りをもって、安心して暮らせることを目標としている。
こぢんまりとした家庭的な環境の中で、スタッフがともに生活し、その人の残された力や潜在力を呼び覚まし、自立と自信の回復をめざす。
さらに地域の一員として豊かに暮らせるよう、地域の人々との自然な関わりや、支え合いを大切にしていくことをめざしている。
イ.サービスの特色
日中は施設に鍵をかけず、入居者それぞれの思いを尊重しながら普通の日常生活を送れるよう支援している。また、色々な人々や社会との交流、自然とのふれあいなど、よりよい刺激を受け、自分自身への確認や生きているという実感を持っていただけるよう努めている。
(4)富山型デイサービスについて
Aさんの紹介をするに先立ち、当社の介護事業が基盤としている富山型デイサービスについて紹介する。
富山型デイサービスとは、「高齢者も子どもも障害者もいっしょ」を基本に、年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが住み慣れた地域でデイサービスを受けられる場所、それが「富山型デイサービス」である。富山型の名前のごとく、富山が発祥の地であり、現在全国展開をしている。富山から全国に発信した、新しい形の福祉サービスである。
この富山型デイサービスは、平成5年7月、富山県で働いていた3人の看護師さんが「家庭的な雰囲気のもとで、高齢者・子ども・障害者の区別なく、ケアを必要とする人たちに在宅サービスを提供したい」という思いから、県内初の民間デイサービス事業所このゆびとーまれ(以下「このゆびとーまれ」という。)を創業したことにより誕生した。創業当時は縦割り行政の壁があり、対象者を絞らなければ行政からの補助金は受けられない状況にあった。利用者が増えるにつれ、民間デイサービスを支持する声が県などにも届くようになり、これらの声を行政も無視できなくなった。
平成8年度から「在宅障害児(者)デイケア事業」、平成9年度からは「富山県民間デイサービス育成事業」として、高齢者及び障害児を受け入れた事業所に対して行政は補助金を交付し事業を支援した。
このころには、「このゆびとーまれ」の理念に共感した方々が、県内各地で同様のデイサービスを開設し始め、年齢や障害の有無などにかかわらず、誰も排除せずに柔軟に受け入れるデイサービスと、行政の縦割りを超えた横断的な補助金の交付を併せて「富山型デイサービス」と呼ばれるようになった。
平成12年度の介護保険制度の創設を機に高齢者の介護に対する報酬が得られる一方、県からの補助金が廃止されるなど大きな転機を迎えた。県では、このような富山型デイサービスをさらに支援するため、特区制度を活用して、国に規制緩和などを働きかけ、富山型デイサービスの普及を推進してきた。
富山型デイサービス推進特区、富山型福祉サービス推進特区を経て、平成24年「とやま地域共生型福祉推進特区」の認定を受けて障害者就労支援事業所における施設外就労の特例措置が認められた。(その後全国でも実施できるようになった)。さらに平成30年4月、「共生型サービス」が開始される。
共生型サービスの開始により、【介護保険の指定事業所】+【障害福祉の指定共生型事業所】という組み合わせで事業を行うことで、これまで算定できなかった、障害福祉の各種加算を算定することができるようになった。また、これまで障害者福祉サービスの利用者にはいわゆる「65歳の壁」があり、介護保険サービス事業所に移らないといけなかったが、障害福祉サービス事業所が介護保険の指定共生型事業所になれば、この問題にも対応できるようになった。
2. 取組の内容と効果
Aさんは富山型デイサービスである月岡デイサービスセンターやまゆりに勤務する20代の女性である。
Aさんは、小さいときにてんかんと診断されたが、発作を起こしたことは一度も無く、特別支援学校の高等部に通っていた。
高等部在学中に富山型デイサービスである介護施設月岡デイサービスセンターやまゆり「以下「やまゆり」という。」に、ボランティアを希望して来所したのが雇用のきっかけである。
Aさんは、高校生の間はやまゆりでボランティアを経験し、卒業と同時に、障害者就労継続支援B型事業所はたらくわ(以下「はたらくわ」という。)の利用を開始した。はたらくわを利用したのは、Aさんはやまゆりでの就職を希望していたが、スキルや経験などがまだ不十分で職業人としての全体的なレベルアップが必要と考えられたためで、本人や家族、特別支援学校、福祉機関などが話し合い、利用に至った。
そのためAさんは、前述の富山型福祉サービス推進特区のメリットを活かし、はたらくわ(障害者就労支援事業所)に籍を置きながら、高等部時代のやまゆりでの経験を土台に施設外就労を行った。この間、はたらくわの職員からは様々なサポートが行われた。当社も、はたらくわの職員と連携しながら、本人に応じた作業の選定、具体的な作業指示、こまめな面接などを行った。
また、富山県独自の制度として「富山型デイサービス施設人材確保育成事業(雇用型訓練)」(以下「育成事業」という。)という、1年間、介護施設で働きながら外部施設で講習を受けると工賃と学費を援助するという事業があり、Aさんはやまゆりで働きながら、学費援助を利用し、外部施設(ニチイ学館)での介護初任者研修を受講した。当社でも、受講が効果的に行われるために、就労時間や担当業務の調整などを行った。
育成事業での講習が終了したら、やまゆりの正職員として働きたいという希望がAさんにはあり、当社としても必要なスキルなどを身に着けており、ぜひ働いていただきたいと判断したことから、はたらくわの利用を終了し、当社に採用。それ以後はやまゆりで正職員として働いている。
Aさんは通常の介護職員と変わらない働きぶりで、お風呂の介助・トイレの介助・声かけなど介護全般を着実にこなしてくれる。土曜日は障害児も多く利用するが、遊ばせたり、見守ったりが上手で良き"お姉さん"である。
また、料理を作るのが好きで、センターの昼食づくりにも自分から参加している。
昨年度は介護福祉士資格にも挑戦をしている。調理するAさんの様子3. 今後の展望と課題
現在、当社にはかつてのAさんと同様に「とやま地域共生型福祉推進特区」を利用し、就労継続支援事業所に所属しつつ、当社の介護施設で施設外就労している障害者もいる。関係機関と連携しながら、各種の制度や機関に関する情報収集を行い、個々の障害者に応じて活用することが障害者雇用を進めるうえでは大変有効であると感じている。
また、これまでの採用のルートに加えてハローワークや特別支援学校や障害者就労移行支援事業所とも交流の機会を増やしており、特別支援学校などから職場実習生として受け入れることも進めている。
今回、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構の方との関わりを機会に地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、ジョブコーチという存在も知った。
今後も、様々な人々と交流しながら、障害者雇用について向き合っていきたいと思っている。
最後に、Aさんのこれからの活躍に期待したい。
執筆者:むらい食品株式会社
本社経理部 高野 裕子
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