（1）事業所の概要
　学校法人関西福祉学園（以下「同学園」という。）は京都市に本部を置き、医療・福祉系の専門学校である京都医療福祉専門学校を運営している法人であるが、平成19（2007）年8月からは滋賀県内において、障害者総合支援法に基づく福祉事業も実施しており、本稿で紹介する働き教育センターグループがその福祉事業である。同学園が福祉事業に取り組むのは、学校法人が事業運営を行なうことで、企業、行政、学校などとの協力体制が築きやすく、また、同学園が教育機関として蓄積しているノウハウを活かすことで、障害者のより良い自立へのサポートを行うことができるからである。学校法人のこうした取組は珍しく、全国初のケースであった。
　働き教育センターグループは、現在、滋賀県内に「働き教育センター大津」（以下「大津センター」という。）と「働き教育センター甲良」、「働き教育センター彦根」の3施設を設置・運営しているが、スタートは大津センターからであった。大津センターは就労移行支援事業からスタートし、現在は、就労継続支援事業のA型とB型も実施している。
大津センターの就労移行支援事業では、障害者を対象に就労に向けた2年間の幅広い訓練や職場体験など（職業訓練）を行っている。
　なお、甲良センターでは就労移行支援事業と就労継続支援事業A型（以下「A型」という。）、彦根センターではA型を実施している。

（2）障害者雇用の状況
　現在、働き教育センターグループの職員数（A型利用者含む）は42名で、うち障害のある職員は23名である（A型利用者22名）。大津センターの職員数は20名で、うち障害のある職員は5名であり、内訳は大津センターの施設職員1名（以下「Cさん」という。）、A型利用者が4名である。次にCさんへの取組を紹介する。なお、Cさんは大津センターのA型利用者であった職員である。

 

（1）Cさんに係る取組
　大津センターのA型では喫茶店部門があり、Cさんは主に喫茶店にて接客業務及びケーキ、コーヒーの商品提供業務や店で出すゼリーの製作を担当し、その他の業務として屋外での草刈、野菜栽培の管理を1年半ほど前から担当している。
　Cさんは精神障害者保健福祉手帳を取得しており、安定就労のためには過度の負担や疲労の蓄積などに配慮が必要とされたことから、本人にとって負担とならないような適量の仕事量を把握するために、勤務当初は一日あたりどれだけの仕事をこなすことができるのかを慎重に見極めながら調整することから始めた。また場面に応じて臨機応変に判断し、対応することが苦手なことから、仕事としては決まった（定型化された）仕事（お客様が来店したら注文を受けるなど）を担当業務とするとともに、状況に応じて判断するような作業は避けるようにするなどの指示を周囲の職員に伝え、本人の負担軽減などに配慮した。
　また、店内では食品を扱っており、Cさんは食品の賞味期限切れがないかのチェックなども担当しているが、その作業に抜けがないかの最終チェックを他の施設職員が行うようにしており、Cさんは安心して取り組めている。
　さらに、施設管理者としては、CさんはA型利用時から通算すると職歴も長く経験豊富であることからA型利用者に対する作業指導の補助も担当することとした。そのため仕事量が多くなることもあることから、今の仕事量が本人にとって負担になっていないかの確認を定期的に行っており、季節の変わり目は体調が急変することも考えられることから特に注視している。
　上記の取組の結果、Cさんは安定して出勤し着実に業務をこなすことができていることから、貴重な戦力となっている。

　大津センターでは、Cさんについては、将来的には材料の発注から金銭管理まですべて店を任せられ、併せてA型利用者への指導などもできる人材になってほしいと思っている。そのためには今は他の職員の手を借りることもあることから、まずはすべて一人でできるようになることが当面の課題である。
　A型利用者の4人については、一般企業に就職することが最終目標であることから、大津センターで働くことで、自信を持って一般企業に就職し長く勤めてもらえるようなスキルを身につけてほしいと思っている。