リネンの仕分け作業、洗濯機へのリネンの投入作業、リネンのたたみ作業といった軽作業に従事している。
配置するにあたっては、同じ作業場に同時に複数人を入れるのではなく、各部署均等に配置するようにしている。
また、障害の種別・等級で従事する作業を決めることはしておらず、本人の適性に合った作業に従事させるようにしている。
なお、配置後に別の作業により向いていることが分かれば、配置換えをすることもある。

 

 

　社員の障害種別で最も多いのは、知的障害である。
　ここで、先に触れた兄弟の事例を紹介する。
　二人は軽度の知的障害を持っており、兄のBさんは特別支援学校を卒業し、平成25年に親会社に入社し、2年後の平成27年、同社設立に合わせて転籍した。弟のCさんはBさんの入社から3年後に入社した。Bさん同様、特別支援学校を卒業している。
　二人とも性格は寡黙で、他の人と一緒に作業を行うよりは自分のペースで作業をしたいタイプである。また、ひとつのことに集中すると最後まで仕事を続けてしまう傾向を持っている。担当しているのは、Bさんはリネンの仕分け作業、Cさんは洗濯機へのリネンの投入作業を担当している。
　軽度の知的障害は外見からは障害を持っているように見えないため周囲の理解を得にくいことが特徴であり、二人も入社当初は戸惑っていたようである。
　Bさんは障害を持っていない人と同じように業務指示や指導をされることに戸惑っていた。指示された内容を理解するのに時間がかかり、そのことを周囲にうまく伝えられずに誤解されることに苦しむBさんを支えたのは、同じグループの班長のDさんだった。
　Dさんの子供も知的障害を持っており、知的障害の特性を理解しているため、Bさんが理解しやすい指示や指導をした。加えて、自分のペースで仕事をしたいBさんの性格を理解し、適度な距離感を持って接していった。Dさんの支えもあり、Bさんは業務・職場環境に慣れるように一生懸命に頑張り、職場で認められるようになった。その結果、Bさんに対してだけではなく、障害者雇用に関する親会社の社員の理解が得られた。
　兄を慕うCさんは、Bさんと同じ会社で働くことを希望した。家族もBさんの働く様子を見て会社を信用していたため、Cさんに入社を勧めたそうである。そして、特別支援学校在籍中の実習を経て平成28年に同社に入社した。
　Cさんも一見すると障害を持っていないように見えるため、指示・指導の仕方についての戸惑いに加え、同じグループの社員から勤務状況に関する不満を言われ、ショックを受けていた。そのため、Cさんは支援センターを通じて同社に相談をしてきた。
　障害の程度が軽度とはいえ、理解力やコミュニケーション力などに課題を抱えており、またストレス耐性が低いことや、体力面においても課題を抱えていることを周囲は理解できていなかったようだ。
　マネージャーのAさんと支援センターの指導員がCさんの所属グループの社員に障害特性などを伝え、理解を得ることで本人に応じた指導などがなされ、Cさんはその後順調に業務に邁進している。
　BさんとCさんのように兄弟で入社すると、安心感だけではなく、モチベーションが上がるなどのプラス効果が見られるとのことである。
また、Dさんの知的障害を持つ子供Eさんも現在同社で働いている。Eさんが公私共に母親のDさんと一緒にいられる安心感を持てることに加え、DさんはEさんの育児の経験から、障害を持つ社員への接し方・指導の仕方を他の社員にも伝えることができるのも家族で働くことの効果といえる。