知的障害者の小売業(スーパーマーケット)
における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・2019203
- 業種
- 卸売・小売業
- 従業員数
- 1,470人
- 職種・従事作業
- 商品(青果物等)のパック詰め作業
- 障害種別
- 知的障害
- 障害の内容・特性
就労上の課題 - 理解力に難がある。作業スピードが遅い。
募集・採用時の合理的配慮
面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
本事例の事業所(以下「同社」という。)では知的障害者を中心に障害者雇用を進めており、本稿では対象者をはじめとする知的障害者についてまとめている。採用に当たっては主に特別支援学校と連携し、その高等部卒業生を採用している。基本的な採用までのプロセスは、2年生の時に店舗で職場実習を行い、3年生の時には希望者を対象に職場実習を行う。実習後の振り返りの中で本人に就職希望があれば、家族に確認のうえ、実習店舗の店長・指導担当の社員にも意見を聞き、三者の合意ができれば、再度、実習を行う。併せて、ハローワークに求人を出すなど、必要な手続きを行う。実習が順調であれば3年生の秋頃に本人との面接を、家族・教員(就労支援機関の職員が加わることもある)同席で行い、採用を内定する。同社としては2回目の実習終了時に採用を検討しており、面接の時点ではほぼ採用を決めているため、面接自体は本人・家族の不安を取り除き、入社までのモチベーションが保てること等を主たる目的としている。そのため、面接と同じ日に「内定証書」を本人に渡す授与式を行っている。
その他の配慮
特別支援学校を卒業した者の入社日は毎年3月21日に設定している。これは、特別支援学校の卒業式が3月の上旬に行われるため、4月1日の入社では期間が空きすぎて、早く仕事がしたいという気持ちが強い彼らにとって、就業までの時間を持て余す事になってしまうという本人・家族、学校からの要望があったこと、働く環境に慣れてもらうこと、また、現場も配属された者の特性を早く知ることで、その後の関係をうまく作ることができると判断したためである。
なお、全体の入社式は毎年4月1日に実施しており、3月21日に入社した者も出席する。入社式には家族や特別支援学校の教員及び就労支援機関の職員等が同席し、また、事業主側からは社長以下役員、管理職及び店長等が出席する。このような方法をとる理由は、障害のある従業員も、入社式に他の新入社員と一緒に列席し、同じ目線で参加してもらうことで、彼らに対する事業所側からの期待が伝わるように配慮しているからである。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
障害のある社員は、入社前の職場実習でいくつかの部門を経験していることから、入社前の面談では希望する部門を確認している。実際には、作業内容や障害のある社員の希望、また適性に鑑みると店舗の青果部門に配置されることが多く、パック詰めや値札貼りなどバックヤードでの業務が中心となっている。彼らの指導は勤務年数の長いベテランのパート社員が担当している(社内では「エルダ-」と呼んでいる)。エルダーは、入社間もない社員へのアドバイス・教育も行うこともある。そのため、障害のある従業員へも自身の子どもあるいは孫と接するような感覚で業務及び生活指導にあったっている。指導方法は一緒に作業をすることで業務を覚えさせていく方法で、障害のある社員も母親や祖母に仕事を教えてもらっているという感覚であり、彼らとエルダーとは何でも話せる関係を築いている。エルダーでは対応が難しい課題や本人が不安を感じているような場合はエルダーが店長に報告し、店長が必要な社内調整や家族に連絡が取れるような体制を整えている。
本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくこと
入社当初は、バックヤードの業務を行うが、本人の希望や習熟度に応じて、店内でも商品の陳列や商品仕分けなどの業務に配置換えを行うこともある。基本は本人が希望する仕事を中心に配置換えするようにしている。
図等を活用した業務マニュアルを作成する、業務指示は内容を明確にし、一つずつ行う等作業手順を分かりやすく示すこと
作業マニュアルについては、障害に応じた特別なものは作成したり準備したりはしていない。エルダーが実際に作業を行っていることを見せることで、覚えさせるようにしている。
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
障害のある社員の雇用形態は1年契約のパートタイム社員であるが、賞与や福利厚生等は正社員と同様としている。勤務時間は基本、8時間勤務であるが、本人の障害特性により6時間での短い時間勤務としている例もある。勤務時間は契約更新の際に本人と相談しながら見直しを行っている。
本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
本人の情報(日常生活・健康・作業・コミュニケーションの状況等)は、職場実習の段階で本社人事部に特別支援学校から提供され、人事部から配置される店舗の店長に伝えられ、店長からエルダーへも伝え情報共有を行っている。エルダー以外の社員については店長の判断で対象者と接する機会の多い者等には必要最小限の説明を行っている。
その他の配慮
同社は、障害のある社員に対し、様々な配慮を行っているが、決して特別な存在として扱っているわけではなく、同社にとって「知的障害者はまじめで仕事も正確」という評価で、重要な戦力であるという位置づけである。それは、同社の一部の考えではなく、社長以下、社員全員も同じである。また、ふだんの昼食時も他の社員と食事を共にしたり、福利厚生のイベントなどでもコミュニケーションを図り、社内の融和につながっている。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
本社人事部の担当社員が月1回ぐらいのペースで定期的に障害のある社員が配置されている各店舗を回り、チェックリストに基づき、本人と直接、面接を行っている(知的障害に限らず障害のある社員全員に行っている)。この面接は、必ず個室で行い、店長やエルダーは同席させず、本人が何でも話せる環境のもとで行う。本人により良い職場環境を実現できるように配慮し行っている。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
内定証書授与式、入社式に出席した時は緊張しましたが、これで社員になれたと思いました。入社式は親も一緒に出させていただいたので、自分のことを見てもらって嬉しかったです。エルダー制度ではとても優しく教えてもらっています。間違っている時にはきちんと教えてくれます。だから間違ったままにしないで済んでよかったと思います。今も分からない事がある時にはすぐに聞くようにしています。聞いた時には分かりやすく教えてもらっています。
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