面接は事業所の担当者と対象者のみで行われたが、面接に先立ち、ハローワークの担当者、地域障害者職業センター（以下「センター」という。）のカウンセラーとジョブコーチが事業所を訪問し、事業所への対象者の状況に関する情報提供と相談がなされた。

面接結果等を踏まえ、本人の体調等を考慮して短時間からの勤務（月・水・金の週3日、9時から13時までの週12時間勤務）が事業所から提案され、本人も同意し採用となる。また、本人の希望によりセンターのジョブコーチ支援が利用されることになった。
なお、勤務時間延長については、1年後でも良いので焦らずに気長に勤務すればよいとの方針が事業所から示され、本人は安心して勤務をスタートできた。

配属部署の職員の中から指導者を選定して、その勤務を対象者と同じシフトにした。また、指導者とは別に、困ったことなどがある際に対応する相談者も選定し、本人に伝えて指導者及び相談者を明確にした。
さらに担当業務である清掃業務については、清掃担当者で教員の資格保持者を日常的に指導・教育する担当として定め、三者は連携し、ホーム長（施設長）にも報告・相談しながら対象者の指導等を進めることとした。

• 当初は指導者が一緒に作業を行い、できたことは褒めて自信を持たせ、最後まで作業をやり遂げることを通じて同じ場所で単独作業ができるように指導を行った。 その際には本人の体調等の確認に留意した。また、ペア作業でも単独作業でも、常に近くにいて安心して作業に取り組めるようにしたことも自信につながった。
• 本人の目標として、週20時間勤務を目指すこととした。達成は長期で考えることとし、事業所から本人へは達成は1年後でも良いから長期に勤務できるように取り組んで欲しいことを伝えた。また、目標設定に際しては、対象者が勤務することで施設もきれいになり利用者も喜ぶことを説明して、動機を高め、不安を軽減する配慮を行った。

対象者は水分補給を行うことを「さぼる」と思っており、常に動いていないといけないとの思考であったので、疲労改善を図る目的で水分補給をとらせることにした。指導者より休憩の指示を出し、ジョブコーチと連携して休憩をとるように促し、3分の小休憩を取らせた結果、小休憩を取るようになり、意識改善して安定勤務につながった。

昼休みなどに職員が通常過ごす場所では他の職員に気を遣い落ち着かないことから、一人でゆっくりできる場所を指定して休憩を取らせることとした。

指導者は、朝の挨拶に併せて、本人から体調の確認と作業ができるかの意思確認を行い、作業が可能であれば、どのような作業、ペア作業か、あるいは単独作業（近くに指導者配置）を担当させるかを決定し作業を行わせた。
不調であれば通院を促すとともに帰宅を指示し、ジョブコーチと連絡をとり、通院した場合には受診内容の情報共有を図り、必要な対応をとることとした。

新たに障害者を雇用する場合には、本人の了解を得た上で、配属部署については職員全体に対し障害者を採用すること（名前含む）と、外部の支援者（例えばジョブコーチ等）が入るようであればそのことを説明し、部署の責任者・指導者等にはより詳しい情報（障害状況や対応方法等）を説明している。また、施設内の利用者についてはホーム長より採用者の名前を伝達している。

指導者等の対象者への対応に際しては、明るい対応を基本に作業が適切であったときには「ありがとね」と褒める、必要な指示等は遠慮せずに出す、そして、本人からの相談はしっかり聞くという姿勢を継続した。
また、ジョブコーチ訪問時には情報共有を行い対応の相談を行った。