対象者は地域障害者職業センター（以下「センター」という。）の利用者であり、面接にはセンターのカウンセラーが同席した。正式な採用面接の前に、事業所訪問と面談の機会（本人・カウンセラー参加）を設け、業務内容の理解を促したうえで面接を実施した。面接ではカウンセラーから対象者の特性や配慮事項等についての説明があった。

面接において事業所から本人に、業務内容や職場での人間関係など、直接会社に言いにくいことがあれば、積極的にカウンセラーに相談するよう伝えた。
なお、採用に際してはセンターのジョブコーチ支援を活用した。

主任支援員（経験年数10年）が中心となって対象者への指導を行っている。主任支援員も含め対象者を指導する職員は、対象者向けにジョブコーチと相談しながら作った業務別の業務マニュアルに沿ってマンツーマンで指導するようにし、指導する内容を統一することで対象者の混乱を防いでいる。また、対象者は、自ら業務の流れを確認したり、質問や業務報告をしたりすることが苦手なため、対象者の様子を見て、分からない様子や自分の判断で動くことがあった場合は職員の方から声をかけ、的確な指示を伝えている。

業務マニュアルの例

対象者が業務内容をその場で確認できるように業務マニュアルや一日の業務の流れの資料を縮小コピーし、ラミネートしたものを携行することとしている。また、業務内容が変更された場合には、メモを取るように指導している。さらに、業務内容のチェックシートを使って業務が終わったら進捗状況を自己チェックし、作業の漏れや間違いなどがあった場合は職員が口頭で伝えた上でチェックシートに記入し、対象者が確認できるようにしている。

一日の業務の流れ

チェックシート

対象者の希望もあり、当初は一日8時間勤務であったが、体調不良による休みが増えたたため、対象者と相談の上、現在は6時間勤務としている。また、体調の悪い時には無理な出勤はせず休むように伝えている。出退勤時には、その時の体調をコンディションチェックシートに記入し、担当者が確認するようにしている。さらに、勤務中に体調不良があれば、静養室での安静を促し、看護師（平日常駐）による状態観察、場合によっては早退を認めており、こうした状況があった場合は施設長及び各部署の責任者へ情報を伝えるように対応している。

コンディションチェックシート

休憩室にて休憩を取ることができるようにしている。また、休憩時間中は外出することも可能であるので、対象者が落ち着ける場所で休憩や仮眠をとることができる。

通常勤務が対象者の希望であることから、早出勤務、遅出勤務を行ったが、日により業務内容が異なることによる混乱や入浴支援の際の暑さによる体調不良、排せつ対応（オムツ交換）の苦手さなどがあり、対象者と相談のうえ、日勤のみに変更した。日勤となることで業務内容が固定化し、苦手な業務も軽減されたことにより、見通しや自信を持って業務に取り組むことができるようになった。

対象者の障害の状況（てんかん発作はあるが頻度は低いことなど）や留意事項（てんかん発作への対応方法やスケジュール管理が苦手であることなど）を職員間で共有した。

対象者が業務を行う上で混乱を起こさないような伝え方、業務の依頼の仕方を職員に伝え、統一を図った。具体的には、対象者に業務を依頼する際は、「他の業務をしていないかや今依頼すべき業務かを確認する」、「具体的に指示し、依頼した業務が完了したかのチェックを行う」、「依頼した業務の完了後に元の業務に戻れるように声をかける」といったことに留意するよう伝えた。