ハローワークで募集した厨房パート職への一般応募で、面接前には難病であることが不明であったため、通常通りの面接を行った。その際に本事例の対象者（以下「対象者」という。）から難病についての説明を聞いた。

上記のとおり一般応募であったため、支援機関等の同席者はなく、面接は施設長、料理担当者と対象者の三者で行われた。

本事例の事業所は福祉事業を行う法人（以下「同法人」という。）で、就労継続支援事業B型として公立体育館の利用者向けレストランを運営している。対象者は同法人の職員としてレストランの厨房で調理に従事している。

同法人の事務局長とレストランの施設長が担当者として業務の指導や相談に当っている。担当者は仕事中や退勤時に適時声掛けを行うなどして体調を確認し、必要に応じて通信アプリを活用するなど、気軽に相談できる環境作りを心掛けている。

・休憩時間は体調を配慮してこまめに設け、不調時には早退も取りやすい人員調整を行っている。
・入職当初の勤務日数は週4日（土日を含む）であったが、現在は病状が改善したため週5日勤務となっている。治療は投薬を中心に行っており、病院には休務日を利用して月一回程度通院している。

・肉体的な負担は疲労や病状悪化の誘因となるため、過度に重い物を持つことのないよう配慮している。
・病状の影響で動作がやや緩慢なため、入職当初、作業スピードを気にせずにできる「仕込み作業」から始めるなどの配慮を行った。現在は病状が落ち着き、他の職員と変わらぬ作業量に対応している。

対象者の了承を得て、難病のため疲れやすいことや作業動作がやや緩慢なこと、過度に重い物は持てないことなどを、事前に厨房スタッフに説明している。

・対象者の当初の勤務時間は9時から16時であったが、入職後まもなく対象者から、動作の緩慢さによる作業の遅れをカバーするため、勤務開始時間を30分程早めたいとの要望が出された。同法人では対象者との慎重に話し合いにより、無理をしないことを前提に、焦らずじっくりと取り組めるための配慮として合意し、勤務時間を8時30分から16時に変更した。

・入職当初、作業スピードを気にせずにできる「仕込み作業」を常時可能にするため、それまでは他作業と併用していた作業テーブルに加え、対象者の「仕込み作業」専用の作業テーブルを設置した。このテーブルの設置により対象者は落ち着いて作業に従事できることとなった。そして、このテーブルは他の職員にとっても「仕込み作業」を常時可能にしたため、職場全体の作業効率を上げることにもつながった。

・対象者は担当業務の幅を着実に広げており、丁寧な「盛付け作業」や前職（カメラマン）の経験を生かしたメニュー撮影等でも力を発揮している。

・対象者の家族に障害者がいるため、その生活相談等にも協力し、対象者の精神的ストレスを軽減するよう配慮している。