先に述べたように本事例の対象者は在職中に脳梗塞を発病し、障害を持つに至った事例である。約一年半の休職を経て職場復帰しているが、休職中から事業所の第二製造部管理グループが対象者と連絡・相談を密に行っていた。休職中はリハビリテーション病院に通院していたが、管理グループと対象者は相談しながら職場復帰に向けたパソコンの練習をするなどの取組も行っていた。
また、対象者はリハ病院から紹介された地域障害者職業センター（以下「センター」という。）を利用しており、復職に際しては事業所の担当者もセンターとの相談等を行うとともに、センターのジョブコーチ支援を利用した。

発病時に対象者は製造現場の作業員であったが、管理グループの経験もしていた。職場復帰するにあたり、事業所では本人の負担を考慮し、現場作業ではなく、経験のある管理グループへ配属することとした。また、復帰の約1か月前から慣らし勤務として通常よりは短い勤務からスタートし、正規の復帰時にはフルタイム勤務へと移行した（慣らし勤務は事業所が休職者等の復職に向け設けている制度）。
なお、ジョブコーチ支援は慣らし勤務の段階から利用した。

管理グループは対象者を含め5名のグループで、事務作業、副資材の準備作業、構内清掃等を担当している。対象者の作業については、作業別にチェック等を行う担当社員を決め、対象者のサポートを行っている。
また、対象者の復職状況の把握や課題などに対応するために、勤務・体調管理をするサポート担当の社員を定めた。

復職直後は、副資材の準備作業においてミスが多かったため、本人とサポート担当社員で話し合い、本人が分かりやすいよう、自分自身で作業チェックリストを作成。リストを活用することにより、ミスの減少につながった。

通院は基本的に休日に行っている。体調管理を重視しており、本人が毎日血圧を測り、メモを残し、サポート担当社員と本人で体調の確認をするとともに、病院での検査結果についてもサポート担当社員が確認をしている。
意思の疎通が少し難しいところがあるため、管理グループ内で毎週1回のミーティングの時間を設け、話をしている。また、サポート担当社員が顔を出したら、毎日どのようなことがあったか報告をするようにルールを定め、本人とコミュニケーションを図るようにしている。日々話す機会を設けることで、困ったときにすぐに相談できる体制を整えている。

パソコン作業は目が疲れたり頭が痛くなったりするとのことで、ジョブコーチからのアドバイスもあり、疲労が蓄積しないように、途中で休憩を入れることにした（原則として1時間に1回、5分間程度）。

パソコンを使った事務作業の様子。
疲れがたまらないよう、作業の合間に休憩をとり、
ストレッチなどをするようにしている。

復職にあたり、障害の特性や配慮事項について、第二製造部内で共有し、職場への復帰がスムーズにできるようにした。

課題が生じた場合、その都度管理グループと本人は話して改善するようにしており、復職して4か月が経過した現在は、復職時より作業がスムーズに進むようになってきた。たとえば、副資材の準備作業は、本人が使いやすいよう、資材の場所を本人と一緒に考えながら場所を整えたことで短時間で処理できるようになった。
また、病気再発等の万が一の事態に備え、飲んでいる薬や症状を記載した緊急時対応リストを事務室内に用意し、速やかな対応ができるようにしている。

副資材の準備を行っている様子。
本人が作業しやすいよう、道具の
配置を本人と話し合って調整した。