本事例の対象者（以下「対象者」という。）は、自身では自分の考えや思いを十分伝えられないので、対象者が所属する支援機関の支援員の同席を認め、補足説明等を受けた。

本事例の事業所（以下「同社」という。）では障害者の募集・採用に向け次の取組を行っている。
1.地元のハローワークと連携し、障害者雇用に関する情報収集に努めた。
2.地元労働局主催の「しょうがいしゃ合同面接会」に参加し、雇用人数の増加を図った。
3.アビリンピックの地区大会を視察し、障害者の仕事に対するスキルの理解に努めた。

1.指導担当はベテランの先輩社員から選び、対象者の専任指導者（以下「指導者」という。）とした。なお、指導者は障害者に関する関心・理解がある者であったことも考慮された。

2.指導方法については、会社から基本的な方針（担当業務等）が示され、具体的な指導は指導者のやりやすい方法に任せた。

3.指導者は、障害者の指導経験はなかったが、周囲に障害者に関わっている人がおり、以前から関心があり、障害に関する理解があったことも指導する上で役に立った。

1.障害特性から、急がせるとミスが多くなるので、対象者のペースを尊重し習熟を待った。
2.最初は簡単な業務から始め、習熟に合わせて難易度の高い業務を増やしていった。
3.習熟するまでは、指導者によるダブルチェックなどにより、仕事の出来栄えを必ず確認するようにした。
4.ミスがあった時も叱るのではなく、自分で気が付くように誘導するようにし、本人のプライドを傷つけないように配慮した。

1.ベテランである指導者員が、仕事の手順をすべてこと細かく書き出した、手書きのマニュアルを作成した。
2.さらに、本人がこのマニュアルをベースに、自分の言葉で自分に分かるように自分用のマニュアルに書き換えて、業務中は常に携帯するようにした。

1.宿泊業なので、土日は繁忙日になり、本来であれば出勤が必要であるが、グループホームに入所していることもあり、生活のリズムを保つために、土日は休日とした。

2.体調の悪い時は、ミスが多くなる傾向があり、そのような時は、指導者からの積極的な声掛けを心掛けた。

1.対象者に限らず、障害のある社員を特別扱いせず、あくまでも「ひとりの人間」として接するよう、社員全員に周知している。
2.ホテルの立地は公共交通機関が無いため、対象者は会社の送迎バスを利用している。バスの中でベテラン社員が声掛けし、コミュニケーションを図っている。

1.同社では「障害のある人もない人も共に生き生きと働くことのできる職場づくりを目指す」を会社方針として定めており、社員の障害者に対する理解ができている。

2.対象者は、短時間勤務等であるため、厚生年金の対象ではないが、将来に備えて国民年金に加入する様、会社から指導した。

3.勤務時間は、ホテルのチェックイン、チェックアウトの時間が含まれるので、宿泊客と接した場合は、挨拶やおじぎなどのマナーも併せて指導した。