本事例の対象者（以下「対象者」という）は、知人の紹介で本事例の事業所（以下「同社」という。）が障害者の職場実習制度を設けていることを知り、これに参加。同社では実習前に対象者からできることを具体的に確認すると共に、不安な点について聴き取り・相談を行った。
採用面接はこの職場実習後に同社で行っており、面接の際には動線確保などの配慮を行っている。

・対象者は自力の公共交通機関利用通勤が困難なため、家族（母親）の送迎による通勤を可とした。
※同社の就業規則では、従前は「自力での通勤が可能であること」が就業の要件であったが、対象者の採用に向けて、就業規則を見直し、自力によらない通勤を可能とした。
・なお、同社は特例子会社である。

・同社では新たに障害のある社員を採用した場合には、採用後3か月間は「バディ」というフォロー担当者を置き、仕事上で困ったことなどを気軽に相談できる体制を整えている。
・上記に関わらず配属された業務グループ内で、障害のある社員に対する作業や移動に関するフォローを行っている。

・電動車いすでの入退室・業務移動が容易となるよう、対象者の座席位置、トイレへの往来、業務動線を意識したレイアウト変更を行った。　

・対象者の就業にあたり、机の高さを調節する必要性は生じなかった。
・今後は書類の見やすさを考え、書見台の設置を検討している。
・複合機のリース見直し時のユニバーサルデザインの型式へ変更を検討している。

・社内全体のバリアフリー化が進んでおり、対象者の採用にあたっての大きな設備改修等の必要性は生じなかった。

・多目的トイレの使用にあたり、身体の移動が必要であることから、移乗台として利用できるスツールを整備した。

・同社では障害等で必要な場合には、年次有給休暇とは別に「通院休暇制度」を設けている。同制度では主治医の診断書に基づき月最大3日の休暇取得が可能。対象者も月に1度通院が必要なため、活用している。

・会社からの具体的な内容の説明は行っていないが、対象者が自己紹介の際に「得意なこと」と「苦手なこと」を話してもらうことで、必要な配慮の理解促進に努めている。

・家族（母親）が自動車で送迎しているが、①安全に乗降できること、②雨天時のスムーズな入退室が実現できること、の2点を考慮し、オフィス入口付近で乗車・下車できるよう、管轄の警察署の指導により道路交通法遵守した位置を確認のうえ、ビルオーナーへ相談、了承を得て一時停車場の確保を実現した。
・社内の入退室や自販機の使用にはICカード（社員証）をかざす必要があるが、カードリーダの位置が対象者の身長には合っていなかった。身の回りのことを自分でできるよう、業務グループのメンバーがカードリーダにかざすための補助具を作成した。