（1）事業所の概要
　医薬品卸売事業を展開する東邦薬品株式会社（以下「当社」という。）は、昭和23（1948）年の設立以来、時代に即した流通網の整備と、顧客（医療機関・調剤薬局）のニーズに対応した供給体制の確立に努め、秋田営業所（以下「営業所」という。）は、平成4（1992）年2月に開設している。
　新たな時代に向け、今後、医薬品卸売事業を基盤に、業務効率化に貢献する顧客支援システム、開業支援や経営コンサルティングなどのトータルサポート、人材支援事業、検査薬事業など、時代のニーズを先取りした事業に力を注いでいる。

ア　お客さまの最大のニーズである「迅速かつ最適な商品調達」を実現するため、物流ネットワークの整備・再構築を強力に推進している。
　現在、約1,000社の国内外メーカーから、200,000種類以上の製品を仕入れ、秋田県内約400軒を超えるお取引先に商品を供給している。

イ　設立以来、「物流こそ医薬品卸売企業の要」という信念の下、業界内で初めて「光るICタグ」を導入するなど、物流センターへの惜しみない投資を続けてきた。最新の物流センターにおいては、倉庫内作業の省人化・効率化を図るため、ロボットを導入するなど、物流設備のイノベーションを図っている。また、徹底したトレーサビリティや災害対策を継続して強化することで、「正確」「迅速」「安心」な物流ネットワークの構築を追求している。

ウ  独創的なシステムサービスの開発・提案を通じて、医療機関や調剤薬局の業務効率化を支援している。医薬品発注・情報端末機「ENIF」、医薬分業支援システム「ENIファーマシー」、診療予約システム「LXMATE HeLios／SELENE」、「初診受付サービス」、音声認識薬歴作成システム「ENIFvoice SP」、自動音声認識・電子薬歴一体型システム「ENIFvoice SP+A」、訪問看護師向け業務支援端末「エニフナース」など、高度な情報テクノロジーシステムを駆使して開発した顧客支援システムの開発・提案を行っている。

エ  医療環境に求められる業務の効率化・合理化・患者さまのサービス向上を目的に、医療機関や調剤薬局の新規開業・開局支援のほか、医療経営全般（単なる医薬品の供給・情報提供にとどまらず、システムから分割販売、人材派遣・人材育成サポートまで）にわたるトータルサポートを展開している。

（2）障害者雇用の経緯と事例概要
　当社では全社的に障害者雇用に取り組んでおり、営業所でも現在3名の障害のある社員が働いている。
　本稿ではそのうちのひとりである、発達障害のある社員Aさんの事例を紹介する。Aさんは以前にガソリンスタンドでの勤務経験があったが、営業所がハローワークに障害者対象の求人を出した時点では、秋田障害者職業センター（以下「職業センター」という。）を利用しながら就職活動中であった。
　ハローワークの勧めもあり応募されたAさんに対し営業所は採用面接を行い、採用を決定した。当時の状況を本人に聞くと、応募にあたり職業センターのカウンセラーと相談しながら、「ナビゲーションブック」（自分の障害特性や配慮事項などをまとめたもの）を作成、得意なこと、苦手なことなどを整理し、面接で適切に伝えるための準備をしたそうである。
　そうした経緯もあり、Aさんの採用に際してはハローワーク、職業センターと連携して取り組んだ。
　また、営業所では以前に精神疾患のある社員が在籍していたが、繁忙期に周囲の社員が慌ただしくなっていたなかで、本人は困りごとの相談を切り出すタイミングが掴めず、体調を壊して離職に至ったことがあった。
　その経験も踏まえ、Aさんの採用に際しては職業センターのジョブコーチ支援を利用した。そして、ジョブコーチには、「障害のある社員と営業所の社員との間に入って相談に乗る役割」を期待した。併せて、障害者雇用についての説明や協力依頼を営業所の社員に徹底するなど、受け入れに向けた環境整備を行った。