障害特性に応じた適切な職場配置と
職域拡大で雇用推進と定着を目指す
- 事業所名
- 四電エンジニアリング株式会社
(法人番号: 1470001002096) - 業種
- 建設業、うち除外率設定業種
- 所在地
- 香川県高松市
- 事業内容
- 建設業、電気工事業、一級建築士事務所、測量業、浄化槽工事業、屋外広告業
- 従業員数
- 1,130名
- うち障害者数
- 11名
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障害 人数 従事業務 視覚障害 2名 設計、ヘルスキーパー 肢体不自由 6名 事務 精神障害 2名 事務 発達障害 1名 事務 - 本事例の対象となる障害
- 視覚障害、肢体不自由、精神障害、発達障害
- 目次
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事業所外観
1. 事業所の概要
昭和45(1970)年に創業した四電エンジニアリング株式会社(以下「同社」という。)は、四国電力株式会社(以下「四国電力」という。)のグループ会社で、四国電力の発電設備・変電設備などの建設及び保守・点検などを主とする会社であり、令和2年に50周年を迎える。
また、エネルギー、情報通信分野、環境や土木建設分野、産業プラントなどの調査から設計、施工、メンテナンスを手掛けている。社是として"誠実・創造・協力"を掲げ、「総合エンジニアリング企業」として地域発展に貢献している。全従業員は1,130名程度で、業務に関連する技術士などの取得資格数は優に3,000を超えている。
現在、障害のある従業員は全社で11名おり、障害別の内訳は視覚障害2名、肢体不自由6名、精神障害2名、発達障害1名である。
本稿の作成にあたっては一般管理部門の総務企画室人事グループの担当者に話をうかがった。総務企画室人事グループは全組織の人事を掌握しており、障害者についても計画的・積極的に採用するとともに、採用後のサポートを担当する部署でもある。
四国電力グループにおける障害者雇用に関する最近の動きでは、四国電力がグループ会社の四電ビジネス株式会社と共同出資し、平成31(2019)年1月に障害者雇用のための「株式会社よんでんプラス」(以下「よんでんプラス」という。)を設立した。よんでんプラスでは、当面は四国電力研修所内での清掃作業を担うこととしている。そのため、知的障害や聴覚障害のある特別支援学校の新規卒業生を中心に平成31(2019)年度と令和2(2020)年度に各4名ずつ採用し、令和2年夏頃には特定子会社の認可を得られるよう現在準備中である。その後は、順次雇用者を増やしながら、事業内容の多角化を図り、将来的にはグループ以外の企業へのサービス提供も検討している。
四電エンジニアリング社としても、よんでんプラスを含め、グループ企業内での情報の交換・共有を進めながら、支援機関などを活用して、独自に障害者雇用を進めていく方針である。
なお、同社の社是と経営理念は以下のとおりであり、障害者雇用を進めるにあたってもそれらに基づいている。
<社是>
1. 誠実
わたくしたちは、常に会社の社会的使命を自覚し、誠実とサービスをモットーにお客さまの信頼にお応えします。
2. 創造
わたくしたちは、絶えず創意工夫に心掛け、技術の開発向上に努め社会的要請に応えるとともに会社の成長発展
をはかります。
3. 協力
わたくしたちは、常に人間として相互の信頼と尊重をもとに、相協力して健全、明朗な職場づくりに努めます。
<経営理念>
1. 社是に掲げる誠実、創造、協力を指針として、お客さまの信頼を頂けるよう、総力を結集してエンジニアリング
企業としての技術力および生産性を高め、弊社の成長、発展に努めます。
2. 弊社の経営を担うのは「人」であることを認識し、職場を成長の場とし、常に従業員の能力開発と豊かな人間
形成に努めます。
2. 障害者雇用の経緯、背景
同社は、四国電力グループの一員であり、四国電力が掲げるCSR活動とともにさまざまな取組を行っている。従業員の活力維持・向上(ES)の一環として、障害者の雇用促進についても設立当初より積極的に取り組んできた。
しかしながら、過去においては、"やってもらいたい仕事"と"本人ができる仕事"のミスマッチが生じ、採用に結びつかない・採用しても定着しないなどの事例が少なくなかった。また、長年勤務していた障害のある従業員が高齢化し退職することで雇用する障害者数が少なくなり、法定雇用率も達成できなくなってきた。
そこでより積極的に障害者雇用に取り組むこととし、地域障害者職業センター(以下「職業センター」という。)やハローワークに相談などを進めた。
そして、採用後の定着には次の対応が大事であるとのアドバイスを受けた。
・障害については、同じ障害であっても個人ごとで異なってしまうケースが多々あるため、"やってもらいたい仕事"を細分化し、
選択肢を広げておくのが望ましいこと。
・(本人の希望に基づくが)実際に配置する部署の上司と同僚に障害特性と配慮すべき点についての理解を得ること。
アドバイスをもとに、1点目として、配属予定先と相談し、業務を細分化し、細分化した作業ごとに分かりやすい資料を準備するなどの"見える化"を行った。2点目として、定例の管理職会議において、障害者雇用に関する研修を関係機関の職員を講師に行い、管理職、そして障害のある従業員の上司となる者としての理解を深める機会を作った。また、障害のある従業員の配属先については、上司から部門の従業員に対して障害特性などについて伝えるなど、理解促進のための取組を行うように努めた。
さらに、会社として把握していないが、何らかの障害などがあり困っている従業員があれば必要な対応をとるために、全従業員にその趣旨と希望があれば連絡するようにとのメールを送信した。これにより、何らかの配慮が必要な者に対応しようとする同社の方針が社内に理解された。
このような取組により、社内の受け入れの体制を強化し、環境を整え、全社一丸となって障害者雇用を進めることとなった。そして、ある部門での業務は身体障害者であれば担当可能と判断し、求人を出したが応募がなく社内で対策を検討したが、なかなか打開策が見出せなかった。そこで職業センターをはじめ、特別支援学校などの関係機関とも相談しながら幅広い募集活動(支援学校の授業見学、職業訓練校の見学、同社の採用方針の説明と障害者の担当業務の調整など)を実施した。
そうした活動の結果、職業センターからの紹介で精神障害のあるAさんと発達障害のあるBさんの2人を雇用することができた。
3. 従事業務・職場配置
Aさんは精神障害のほかに、過去に大きな手術を受けたことがあることから体力面への配慮として短時間勤務としている。担当業務は倉庫内での備品整理・管理であり、重量物をフォークリフトを操作して移動させる作業もある。
Bさんの担当業務は一般管理部門の事務職で、資料などのコピー、データ入力、郵送物の分類と担当者への配付、宅配物の受渡しなど、多岐にわたっている。他部署の業務にも対応しており、就職後8か月が経過した現在では業務の三分の二は所属部署からのものである。一日の業務の繁忙の波はなく、作業量も適量で、特殊な処理を要することもなく、ストレスの起きにくい職場環境である。勤務はフルタイム勤務で、ビジネス用ソフトのスキルもあり、教育研修資料・会議資料の整理などを丁寧に行っている。
両者とも通勤に特別な配慮の必要はなく、障害のない従業員と特段の差はない。
4. 取組の内容・効果
(1)Aさんについて
Aさんについては、担当業務を分かりやすく指示するために、項目のリストアップや作業手順を見える化(作業別にすべきことを項目にするなど)するとともに、職場全体で見守っている。初めての業務では失敗もあり、本人も戸惑ってはいたが、上司や同僚からのアドバイスを受けたり、具体的な作業手順を丁寧に教えられることで次第に慣れ、今では本人自ら工夫して、効率良く処理できるようになっている。
また、先に述べたように勤務時間について配慮をしているが、働く中で、体力も次第についている状況である。
(2)Bさんについて
Bさんについても分かりやすい指示に配慮している。例えば資料作成作業では手本を見せて、指示内容を具体的に分かりやすく教えている。作業手順も本人が完全に理解するまで丁寧に説明し、実際に確認してから作業にかからせている。
Bさんも自分の障害特性(口頭指示では理解しにくい傾向があるなど)を認識しており、指示された際にはメモを取る、作業の終了時には合っているか見直しをするなど、誤りなく業務ができるように自身で努力している。人見知りなので昼休みなどの休憩時は一人になりたいとの本人の希望に応じて環境を整え、周囲の理解も得て皆で配慮している。本人も業務の達成量を気にするほどになり、業務に対する取り組み方が前向きとなっている。
なお、Bさんは採用当初から職業センターのジョブコーチの支援を受けており、職場定着については、適時、社内の保健師やジョブコーチとの面談を実施し、本人の希望把握や問題の解決に努力している。
(3)事業所として
障害のある従業員に対して業務を指示する担当者をあらかじめ決められており、その担当者を通じて業務内容などが伝えられている。また、各人の障害や配慮事項は社内の関係者(担当者、配属部門の従業員など)には伝えられており、職場で共有されている。
障害者雇用に取り組んだことによって社内外に波及効果が現れた。
社外では、Aさんの就業態度や同社の障害者に対する取組姿勢を評価した関係機関から更なる雇用依頼・紹介が増えてきた。社内では、Bさんの丁寧な仕事ぶりが評価され、他部署からの作業依頼が増えた。そうした依頼に応えることで、多くの従業員が資料整理などの負担が減るとともに、それぞれの本来業務により専念できるようになり、各部署の業務効率化が図られてきた。
そして、会社として多様性を大切にし、必要と感じる文化が育っていること、さらに他部門でもAさんやBさんの仕事ぶりから、それぞれの部門でも障害者雇用に前向きになったことも効果と考えている。
5. 今後の課題と展望
(1)AさんとBさんについて
同社では、Aさんには無理をせず、マイペースでの作業を勧め、体力をつけることに専念してもらっている。本人は勤務時間の延長を望んでおり、希望に沿うよう勤務状態を確認しながらお互い納得いくような形で実現させたいと思っている。そして将来的には勤務場所での増員を行い、Aさんにはリーダーとして新規配属者の教育を担っていけるよう会社を挙げて支援を行いたいと考えている。
Bさんは丁寧な仕事ぶりではあるが、慎重すぎるところがある。これも経験を積んで慣れと工夫で作業精度・速度が向上していくと期待している。
他部署の業務も引き受けていることから、会社の業務を俯瞰的に捉えるようになって欲しいと思っており、現部門から会社発展のために、障害者雇用に関する様々な提案・提言を発信するような存在になることを期待している。
現在、両名とも非正規従業員としての雇用形態ではあるが、将来的には正規従業員として活躍して欲しいと考えており、そのための方策を検討中である。
(2)障害者雇用について
同社ではこれからも積極的に取り組んでいく方針であり、様々な取組を進めている。
令和元年には、香川県立盲学校の授業参観に参加し、在校生の校外実習(職場実習)の受け入れも行った。実習後には、1名の紹介を受け、本年4月よりヘルスキーパー(あん摩マッサージ指圧師)として採用している。
ヘルスキーパーは社内の保健師と連携しながら、従業員のメンタルケアとフィジカルケアを一体化した活動を行う計画である。具体的には、従業員の健康づくりの一環として四国内の各事業所へ出張し、鍼・灸・指圧などの資格を活用し、従業員への施術を行ったり、健康講座を開講することで健康増進を図りたいと考えている。将来的には2名のヘルスキーパーを配置したいと考えている。
現在働いている障害のある従業員の中には、ある特定の作業が得意な人がいることも分かってきた。そうした点は社内で共有されてきており、その「強み」に応じた作業依頼や成果も見られている。一人ひとりの「強み」を活かした働き方の実現も重要と考えている。
当社の障害者雇用の方針として、今後とも積極的に雇用の窓口を広げ、社内で活躍できる場を増やし、以って事業の発展につなげていきたいと考えている。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 香川支部
高齢・障害者業務課
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