（1）事業所の概要
　ユニー株式会社（以下「当社」という。）は、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス傘下の国内リテール部門を担う総合小売業で、令和2年6月現在、東海エリアを中心に東北・関東・信越・北陸・近畿にアピタ・ピアゴを中心に150店舗を展開している。　

　　[店舗概況]


　当社は衣・食・住・余暇にわたる総合小売業のチェーンストアだが、店舗タイプにより次のように事業内容が異なる。

　　[事業内容]


　今年設立50周年を迎える当社は、顧客最優先主義のもとに「従業員全員が地域社会のお客さまに一番喜んでいただけるお店を作っていくこと」を目指している。本稿では、そうした当社のアピタ金沢店（以下「同店」という。）における障害者雇用の取組を紹介する。
 
 

（2）障害者雇用の経緯
ア　採用当初
　同店における障害者雇用の始まりは平成24年に遡る。当時、石川県立金沢産業技術専門校（以下「同校」という。）の紹介により、同校ワークサポート科（発達障害のある方向けの訓練科）の卒業生を同店の食品買場(いわゆる売場を指す)の青果部門で採用したのが最初である。
　当初は、店舗に障害者雇用の経験は全く無く、障害者に関する知識はもとより、どのように働いていただけるのか、適性のある業務や配属先はどこが妥当なのか、また周囲のサポート体制はどうあるべきかなど、手探りの状況からのスタートであった。　

イ　支援機関
　しかしながら、このような店舗の不安を解消すべく、同校ワークサポート科、石川障害者職業センター（以下「職業センター」という。）、社会福祉法人金沢市社会福祉協議会の金沢障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）、ハローワークなどによるハード・ソフト両面での支援に支えられ、今日では累計で7名の障害者雇用に至っている。

ウ　支援制度
　ここでいうハード面とは、石川県独自の「障害者職場実習制度」（以下「実習制度」という。）のことである。実習制度の趣旨は、障害者の方々が本格的に雇用される前に、実際の職場で短期間の実習を行い、本人と事業主の相互理解を深めることにより、障害者の雇用及び職場定着を促進することとされており（県のホームページより）、利用経験のある当社としても、採用する企業及び雇用を希望する障害者双方の不安を払拭するために、大変有意義な制度であると考えている。同店ではこの制度を利用し、就職を希望する障害者に、人員が必要な部門で一定期間職場実習を行ってもらうことで、実習生の業務上の適性や障害特性に関する店舗側の理解が進み、周囲のメンバーがフォローの仕方を学習できるというメリットがある。
　一方、障害者自身についても、いままでに従事したことがない仕事に対する不安は大きく、この制度を利用して実習することで、自身の仕事の適性を確認できるメリットは大きいと思われる。
　また、ソフト面とは職業センター、支援センターのジョブコーチによる支援のことである。ジョブコーチは実習制度利用期間中はもとより、実習後に採用された場合にはその後も業務面・体調面の不安に対し親身になって障害のある従業員に対応する制度である。これは障害者を雇用する側にとっても安心できる制度であり、障害のある従業員が抱える仕事上の悩みだけでは無く、内面的な問題など、本人が直接周囲の人間に相談できない不安や悩みについて、専門的なアドバイスをしたり逆に雇用する側の相談に対応するなど、双方の調整役として頼りになる存在である。
　同店は、このような関係機関との密接な連携により障害者雇用の着実な促進につなげているといえる。