（1）事業所概要
　株式会社輝城（以下、「同社」という。）は、昭和62(1987)年に広島県の岸工業株式会社松山営業所を分社化し、株式会社岸工業四国（資本金1,000万円）としてスタートした。令和元(2019)年に完全独立とし、社名を現在の株式会社輝城（資本金3,000万円）に改称し、社屋を新築移転した。
　同社は小型テントからテニス場や屋内野球練習場といった大型建物まで、多種多様なテント素材を用いた構造物の設計、施工を一貫して手掛け、製造・卸売も行う。また、愛媛マラソンやまつやま産業まつりといった県を挙げての大規模イベントから、地鎮祭などの小規模なものまで、様々なテント等のレンタルも行っている。
　代表取締役社長の栗田雅則氏（以下、「社長」という。）によると、全国に約3,000社あるテント業者の中で、一級建築士事務所を併設し、大規模工事を自社で手掛けることができるのは、同社を含め数パーセントしかないという。
　テント業界の発展のためには、次の世代となる若い人たちからテントの膜構造に対する関心を持ってもらい、新しいアイデアを提案してもらいたいという願いから、愛媛大学での講義や共同研究も行っている。
　特に令和元(2019)年にスタートした松山市の道後温泉本館の大規模改修工事では、手塚治虫の漫画キャラクターである火の鳥がデザインされた素屋根（建設する建物を覆い、保護する仮設建物）を施工し、注目を集めている。
　また最近では、少人数・短時間で完成する「タントエアシェルター」を開発した。新型コロナウイルス感染症に関連し、医療機関が発熱患者を屋外で診療するためにこれを導入したことから、地元報道機関で再三取り上げられ、県内外からも引き合いが多くなっている。
　このように、同社は既存の需要のみならず、テント素材を利用した新しい商品の開発にも意欲的に取り組み、社会のニーズに合った商品を打ち出し、成長を続けている。

　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　改修工事中の道後温泉本館

（2）障害者雇用の経緯
　同社の障害者雇用への取組は、4年前のほぼ同時期に、現在就業中の2人が、それぞれ就労支援施設と愛媛県立愛媛中央産業技術専門校（旧愛媛県立松山高等技術専門校）の紹介で入社したことで本格化した。
　その際、社長は特に障害者雇用を意識したわけではなかったため、周りから障害者雇用に熱心だと評価されることに初めは違和感があった。しかし、テント業界が障害者の雇用を積極的に進めていけば、業界自体が社会に広く認知され、発展するきっかけになるのではと最近は考えるようになった。
　障害のある人の入社に際しては、必ず親とも面談することを条件にし、会社のことを理解した上で入社してもらうようにしている。