職場での働きやすさにより長期間の雇用が継続している事例
2020年度掲載
- 事業所名
- 日本フードパッカー四国株式会社
(法人番号: 348000100259) - 業種
- 製造業
- 所在地
- 徳島県名西郡石井町
- 事業内容
- 食肉加工業(豚肉処理加工)
- 従業員数
- 81名
- うち障害者数
- 6名
-
障害 人数 従事業務 知的障害 6名 豚肉処理業務(解体作業・脱骨作業他) - 本事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
-
事業所外観
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1) 事業所の概要
日本フードパッカー四国株式会社(以下「当社」という。)は、徳島県名西郡石井町に位置し、豚肉を処理・加工している日本ハムグループの製造会社である。昭和54(1979)年に日本ハム株式会社徳島工場の食肉販売課から独立し、徳島フード株式会社を設立。昭和55(1980)年に四国日本ハム株式会社に社名変更。その後、平成9(1997)年に日本フードパッカー四国株式会社へ社名を変更している。
当社は、家畜の生命の恵みをいただき、安全で高品質な食肉の処理・加工を行うことで、消費者の皆様に安心して食べていただける美味しい食肉作りを目指している。
「私たちは心を込めて磨きます」をスローガンに、全社員が安心して働ける職場環境のもと、各個人の能力を発揮し、成長することで、常に時代の変化に対応し社会に貢献していくことを目標とした会社である。
(2) 障害者雇用の経緯
障害者雇用の経緯としては、養護学校(現在の特別支援学校)を卒業したAさんを採用した30年ほど前に遡ることとなる。
さらに、本格的には11年ほど前から特別支援学校の職場実習(以下「実習」という。)に協力し、生徒(実習生)の受け入れを始めた。きっかけは、特別支援学校の担当教諭から生徒の実習場所として協力してほしいとの依頼があったことで、現在では定期的に特別支援学校の生徒に実習の場所を提供している。
実習生からの採用を始めた頃は、採用後に1年間の試用期間を設け、十二分に能力を発揮できる部署であるかどうか、解体処理業務などは特殊な作業内容であるため、実習生に合った業務などなのかを見極めてから雇用契約を行っていた。
しかし現在では、特別支援学校からは年に数回の実習を受入れており、1回の実習期間は2週間と短いが、その分特別支援学校の担当教諭と実習生の特性や得意分野などに基づく相談を行いながら、長所を活かせる実習内容を考慮し、卒業後の雇用につなげるような対策を行っている。また、特別支援学校と連携を図りながら協力体制を強化していくことで、以前にも増した太いパイプを構築することができている。
2. 障害者の従事業務と職場配置
現在当社の障害のある社員は全員が豚肉処理業務(解体作業など)に従事している。Aさんも入社時から現在までの30年間、「豚の脂を剥がす」作業に取り組んでいる。この作業は、カット肉の品質に大きな影響を及ぼす非常に大事な工程であり、また体力が必要な業務でもある。
この大変な「豚の脂を剥がす」作業をAさんはひとりで担当している。そして、下の写真はAさんの作業の様子である。
脂を剥ぐところ剥いだ後、決まった位置へ動かしているところ3. 取組の内容と効果
(1) 取組内容
ア 募集・採用について~特別支援学校との連携~
Aさんは、当社の社名が「四国日本ハム株式会社」の頃に入社しており、在籍している障害のある社員の中で最も社歴が長い社員になる。今年で勤続30年を迎え、会社規定により表彰状などを授与している。
Aさんは養護学校在学中に当社での実習の経験を経て、卒業後すぐに当社へ入社している。
そうしたAさんの例も踏まえ、当社では障害者の採用については、特別支援学校と連携し、在学中に実習を行い、卒業後の採用につなげている。
現在在籍する6名も全員が実習生から採用した社員であり、Aさん以外の者についても、一番短い者ですでに採用から2年半が経過するなど、長期間にわたり継続して働いている。それには、特別支援学校の卒業生に対するフォロー(本人・家族や当社の担当者との相談など)によるところも大きいと感じている。
イ 障害者の業務・職場配置~コミュニケーションなどへの配慮~
当社は、一つの工程を障害のある社員と障害のない社員が一緒に作業を行い、いつでもお互いがフォローできるような製造ラインの配置にしている。Aさんの実習期間中は、担当上司や同僚が作業内容を教えたが、中でも気を付けたことは、コミュニケーションをとりながら根気よく伝えることであった。そして、Aさんの素直で明るい性格、また指示や手順の理解の良さと我慢強さにより、Aさんは徐々に一人で作業ができるようになり、入社半年が経過したころから、「豚の脂を剥がす」作業を一人で担当できるようになった。
現在ではAさん以外の社員が「豚の脂を剥がす」作業を行うと、次の工程の社員から「脂を剥がす担当者は変わったのか」との問い合わせがくるほど洗練された技術を身につけることができている。
また、Aさんは毎日、と畜した豚の数を他部署へ報告にいく業務も担っている。他部署と社員と交流を持つことで、同部署以外の社員とコミュニケーションも図れ、当社の行事などに参加をしても気後れせずに誰とでも打ち解けることができている。
一方、安全面では周りの社員や担当上司が細かく注意を払っている。業務の性格上、ナイフを使った作業や、熱湯を使用しての清掃業務があるが、そうした作業の際には間違った手順では行わないように配慮(注意喚起など)している。
そして、Aさんがいつでも相談ができる関係性を構築しており、また困ったことがあれば直属の担当上司へ話がしやすい環境作りに努めている。
当社には障害者職業生活相談員の資格を持っている社員が2名在籍し、毎日Aさんを送迎している両親や兄弟などとコミュニケーションを図っており、家族とも近い関係性を築くようにしている。
そうした配慮などは、障害のある社員についても行っており、詳しくは次項で紹介する。
(2) 取組効果
当社の製造部門である豚処理・加工の工程では解体処理業務に13名、内臓処理業務に12名が製造ラインに配置されている。職場の雰囲気は、活気があり社員同士で助け合い、協力し合うことで成長し、各社員の能力を発揮できるよう働きやすい職場環境になっている。
また、技術を磨き、クオリティーの高い製品をお客様に提供し、「私たちは心を込めて磨きます」をモットーに、清潔な職場を心掛け、更にモノづくりに取り組む心を磨き続けたいという意識を全社員が持ちながら、日々の作業に取り組んでいる。
その中で障害の有無に関わらず各個人を尊重し、職業生活において社員の一員として本人の能力を発揮して働ける環境であること、また周囲の気配りやコミュニケーションの充実を図り「いつも明るく元気良く」をスローガンに、個人の意見を尊重し何でも言える、何でも相談できる関係性を構築していることが障害のある社員の長期雇用の要因にもつながっている。
作業中の安全面に関しては、上司や周りの社員が危険な動作や間違った手順で作業していないか常に目を配り、危険と判断される作業は絶対に行わないよう配慮と指導をしているため、一度も労働災害を発生させていない。このような取組を行うことで、障害のある社員は仕事に対する意識の向上、自覚と責任を持つことができている。
Aさんは勤続30年のベテラン社員であるため、今までの経験を活かし、同僚である後輩に仕事を教えることもある。そして、人が嫌がる仕事でも、任された業務は根気よく継続して最後まで取り組むことから、Aさんを頼りにしている社員も多い。Aさんの仕事に対する熱意・姿勢は、社内では存在感があり、ほかの社員の刺激や励みになっていることは間違いない。
そして、何よりもAさん本人は「この仕事は誰にも負けない!」、「まだまだ若い人には負けない!」といった意気込みを持っており、当社にはなくてはならない人財となっている。
4. 今後の展望と課題
現在、Aさんをはじめ6名の障害のある社員を雇用している。
当社では作業効率を図るために、近年オートメーション化が進んでおり、「人の手」が少なくても稼働できる職場環境へと徐々に変化している。同時に、雇用している障害者の配置転換や作業内容を見直す必要がでてきている。
そこで、「人の手」を使わないと作業ができない部門の切り出しや雇用している障害者の特性に合った作業を考えていかなければならない。
また、当社では障害者職業生活相談員の資格を有した社員を配置しており、障害のある社員やその家族と小まめに連絡を取りあい、コミュニケーションをとるように心がけている。そのため、障害のある社員たちの健康状態の変化や気持ちの変化などにいち早く気付ける状態にあり、もし何らかの変化があったときは、職場の直属の担当上司などに報告され、現場の社員間でも対応できるように常に連携をとっている。
このように、業務がオートメーション化されていく中でも、社員同士、敷地内で働く社員間のコミュニケーションを大事にし、障害の有無を気にせずに何でも話しができ相談できる環境を今後も続けていきたいと考えている。また、一人でも多くの障害のある社員が継続して働いてもらえるような環境の整備にも努めていきたいと考えている。
そして、何よりもAさんをはじめとする障害のある社員の方々が、定年を迎えた時に「この会社で働けてよかった」と思っていただけるような職場にするために、働きやすさを一番に考え、取り組んでいくこととしたい。
執筆者:日本フードパッカー四国株式会社
川村 貴則
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。