当法人では、身体障害、精神障害、知的障害のある職員が業務に従事している。職種としては介護員・介護補助業務・リハビリ助手業務・清掃洗濯業務などである。

（1）介護員・介護補助業務
　介護員と介護補助の大きな違いは、患者様の身体的な介助の有無である。軽度の障害のある職員は、患者様の介助も問題なく介護員として従事している。介護補助業務はシーツ交換、タンスへの洗濯後のタオル補充、居室のゴミ回収、浴室清掃、物品の洗浄などである。
　介護補助業務は、それまで介護員が行っていた業務を一つ一つ見直し細分化し、障害のある職員にもできる仕事として集約したものである。そして、障害に応じた配慮を講じており、例えばシーツ交換では、リネン庫にシーツの写真を貼り、似たような布地から間違いなくシーツを持ってこられるようにするとともに、シワができないように何度も繰り返し、練習や指導をした。ほかの作業においても、分かりやすく、丁寧に根気よく説明するように心掛けた。

（2）リハビリ助手業務
　リハビリ助手業務については、車いす・手押し車の清掃、手技を行うベッドの清掃などの環境整備を行っている。また、理学療法士や作業療法士（以下「セラピスト」という。）がリハビリを行う際の必要物品の出し入れ、待っている患者様に対する声掛けを行っている。リハビリ助手が患者様の身体に触れることはない。他法人の施設においては、セラピストが車いすや手押し車の清掃、リハビリ室内の環境整備に多くの時間が割かれていることもあるが、当法人の場合、介護の仕事と同様に細分化することで、セラピストがその業務にいままで以上に集中することができ、患者様に対するリハビリの充実が図れた。

（3）清掃洗濯業務
　清掃洗濯業務については、委託業者に依頼しているのではなく当法人の職員が行っている。業務内容としては、各部屋や廊下のダスト・モップ掛け、窓掃除、ゴミ回収や車を運転しクリーンセンターへのゴミ出し、草取り、洗濯などである。
　特に、ダスト・モップ掛けなどについては、各特別支援学校（以下「支援学校」という。）や障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）などにおいてビルクリーニングについて学んでいる障害者が多く、採用後すぐに作業に入ることができるなど、非常に高いスキルなどを身につけている。仕上がりは、ほかの職員と比較してもなんら遜色のないレベルにある。窓掃除、ゴミ回収やゴミ出し、草取りについても同様のことがいえる。
　洗濯については、洗った物を畳んで元の補充場所に戻す作業を行っている。機械などの作業については、操作順にボタンに番号を付け分かりやすくしておくことや手順書に基づいて作業を行っている。障害のある職員への配慮に見えるが、ほかの職員にとってもミスの防止につながる手段の一つである。

　業務を細分化することにより、障害のある職員ができる仕事が増え、職員にとっては、別の部分に時間を配分することができ、利用している患者様にとってもより良い環境につながっている。単に障害のある職員への配慮として、説明を分かりやすくすることや手順書の作成とがあるが、これらについては、ほかの職員についても有効に活用しているものでもある。

 　　
　　　　　　　介護援助業務　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　シーツの写真

　　
　　　　清掃業務の様子1　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清掃業務の様子2

　
　　　　手順書の掲示（タイムカード）
　

（1）採用及び各就業機関などの活用について
　障害者雇用を行うにあたっては、ハローワークや支援センター及び支援学校などとの連携と相談をしながら対応することが不可欠である。以前には求人を出し、障害者就職説明会へ積極的に参加することで、多くの障害者を採用することができた。しかしながら、早期離職となってしまう人もいて、なかなか定着には結びつかないのが現実であった。
　そこで当法人の場合、障害のある人がどのような環境で就業に向けてトレーニングを行っているかを知ることが必要と考え、そのためにまず、担当職員が支援学校などに足を運んで自分の目で確認した。その際には、担当職員が担任の先生と情報の交換を行った。また、採用後の障害者の職場定着にあたっては支援センターと定期的に情報交換を行うこととし、現在も継続している。
　そうした採用活動と同時に、障害者雇用に対する職員の知識と対応のレベルアップを図らなければいけないと考え、次の取組を行った
障害者職業生活相談員資格認定講習に平成25年に職員が1名参加。その後、様々な職種（看護師・看護補助者・事務員など）の多くの職員を講習に参加させ障害者雇用に関する知識の向上を図った。
　さらなる知識向上と職場定着を図るため、平成30年には、企業在籍型職場適応援助者養成研修に2名が参加。法人全体として障害者職業生活相談員資格認定講習修了者と企業在籍型職場適応援助者養成研修修了者が、現在12名となっている。
　研修参加により、知識と対応のレベルアップを図り、参加職員を職場支援員として配置し障害者の職場定着を図ると同時に、障害者雇用安定助成金等の助成金も有効に活用している。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

（2）障害者への職場環境における配慮について
　現在在職中の障害のある職員は、身体障害、知的障害、精神障害のある者に分けることができるが、当法人では各人の障害を周囲の職員一人ひとりがより深く理解し対応するように努めている。
　聴覚障害のある職員に対しては、手話で"おはよう"、"おつかれさま"などの挨拶を行っている。聴覚障害のある職員のなかには、口唇を見て話す内容はおおむね理解できるが、簡潔な表現のほうが理解しやすい者もあるため、"です"、"ます"を使わない工夫や紙を用いてコミュニケーションを取るように心掛けている。また、一般の患者様にもわかっていただけるように本人の意向を確認したうえで、聴覚障害者マークを名札に示している。
　知的障害のある職員に対しては、ロッカーや下駄箱に分かりやすくするためにカラーシールを貼って、自分が使うところを認識してもらっている。
　ほかにも障害者に対して物品などの配慮については、雑巾が絞れない者には足踏み絞り機能付きバケツ（スクイザー）を提供している。また、本人の状況に合わせ使いやすいロッカーの配置や下駄箱の高さにも考慮し貸与している。シフト表についても各人が見やすいように再構成し、個人別に配付している。
　職場環境における配慮の中で、労働時間や休憩時間については、各人の状態に合わせ雇用を行っている。例として、出勤や退勤が公共交通機関の時間帯と合うように勤務時間の配慮を行うことや、休憩時間についても10分や15分単位で細かく取得できるなどの配慮を行っている。
　休憩時間については、本人の落ち着く環境がどういうところなのかを採用前の打ち合わせや採用後のコミュニケーションなどから把握し、本人が休息しやすい環境を提供ができるよう配慮している。