精神障害者の社会福祉事業における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・2020201
- 業種
- 医療・福祉業
- 従業員数
- 46人
- 職種・従事作業
- 事務補助作業(配達された郵便の収受、配布業務、郵便の発送及び書類作成等)
- 障害種別
- 精神障害
- 障害の内容・特性
就労上の課題 - 仕事の正確性を過剰に意識すると共に、失敗しないようにという意識からくる不安・焦り・混乱を起こしやすい傾向がある。
また、仕事への過集中による疲労感や体の節々の痛みが生ずる場合もある。
募集・採用時の合理的配慮
面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
本事例の事業所(以下「事業所」という。)では、障害者雇用に際しては、管内のハローワークに相談のうえ、求人票を作成・掲載するとともに、ハローワークで開催された合同の事業所説明会への参加や就職希望の障害者(参加者)と支援者などを対象とした職場見学会を開催するなど、業務の内容を参加者にわかりやすく説明する機会を多く設け、参加者の緊張を和らげたり、仕事へのミスマッチを防ぐ取組を行っている。
本事例の対象者(以下「対象者」という。)も以上の説明会に参加しているため、面接は、事業所の採用担当者2名と対象者のみでも支障なく行われている。
その他の配慮
対象者は採用の前に、地域障害者職業センター(以下「センター」という。)の精神障害者自立支援カリキュラム(以下 「自立支援カリキュラム」という。)を利用している。
面接において、対象者からは自立支援カリキュラムのなかで本人の障害特性・課題(不安や疲れやすさ等)に有効であった対処方法を事業所でも導入して欲しいとの要望があり、次の内容を事業所が取り入れることとしている。
・体に負担が掛からないように勤務は週5日で一日の勤務時間は5時間程度(8時30分から14時30分、休憩1時間)とする。※事業所側は当初は一日6時間程度での採用を考えていたもの。
・過度な集中を避けるため、1時間に1回5分程度の休憩を取り入れる。
・お昼休みは周囲に誰もいない場所で、1人で昼食を取る。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
採用後にはセンターのジョブコーチ支援制度を利用して、助言等を受けながら、対象者への業務指導や相談の際に以下の配慮を行っている。
1.業務指導に関して
(1) 業務指導については、同じ業務に精通する係の職員へ常に相談できるような体制をとっている。
(2) 業務の指示をする際に、あいまいな指示に対象者が混乱してしまう様子が見られたことから、採用当初は指示内容や期限が具体的に記載された「指示書」を作成のうえ指示していたが、本人が業務に慣れてきたこと、また、同僚職員の対象者の障害特性(業務を依頼する際は具体的な指示が必要)への理解が深まったことから、現在は口頭で詳細を対象者に説明した上で、業務指示を行うようにしている。
2.相談体制について
(1) 業務面や体調面及び人間関係での悩みなどについては、採用時より同じ上司(以下「相談役」という。)が担当している。
(2) 対象者と相談役の面談は必ず週1回以上行うこととしている。相談役が出張等があった場合でも、日程を調整し必ず行うようにしている。このことにより、週1回の面談日を確保し、不安に感じることがないようにしている。
(3) 面談の際は、毎回同じ部屋を使用するとともに、お互いの席を机を挟んだ対面ではなく、横並びにすることで、話しやすい環境づくりに気を付けている。
(4) 対象者は、「モニタリングシート」と呼ばれる一日の業務内容や自身の健康状態などを記入する用紙を日常的に使用しており、客観的に自身の状態が確認できることから、面談時に持参のうえ活用している。
(5) 面談の中で、対象者は仕事を失敗しないようにという意識が非常に強かったことから、仕事はチームで行うものであり個人の責任ではないことを理解し、失敗することを恐れないで業務を行って欲しい旨助言をしている。
(6) 対象者は、同僚が行っている業務を気にしてしまう傾向があったことから、対象者自身の業務に専念することを助言している。
業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
採用時からジョブコーチ支援制度を利用し、助言等を受けながら、対象者に対し業務指示を行っている。
1.作業工程の図解化
当初業務手順が確立するまでは、対象者には焦り、混乱する様子が見られたことから、ジョブコーチの支援を受けながら、作業工程を図解するなど、視覚的に順序だてて理解しやすい指示とした。
2.業務の優先順位の明確化について
自立支援カリキュラムの取組の中で、指示された業務を一覧表として書き出し、明確化しておくというものがあったが、対象者は表作成はできたが、優先順位の判断ができず、どの業務から取り掛かれば良いか悩んでしまうことがあった。そのため、対象者と相談役との話し合いの中で、通常業務を優先することを確認するとともに、表を活用し、業務を指示された際は、期限を確認のうえ業務の優先順位を表に追記することで、対象者が悩むことなく判断できるようにした。
3.明日の業務内容を整理できるよう1日の勤務の終わりの際に、明日の業務内容を確認するようにしている。
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
1.対象者の状況を鑑みて、適宜勤務時間の調整を行っている。前述のように採用当初の勤務は週5日の一日5時間勤務であり、慣れてきたと思われた段階で対象者とも面談し、一日の勤務時間を6時間に増やすこととした。しかし、6時間勤務を始めたところ、対象者は勤務形態に慣れることができず、体調を崩したため、すぐに面談を行い、元の勤務に戻すことで勤務は安定した。
その後、安定勤務が3か月ほど続き、対象者から勤務時間を増やしたいとの希望があり、事業所としても勤務状況から可能と判断したことから、再度6時間勤務を目指すこととした。そして、まず週に一日だけ6時間勤務の日を設け、対象者とのこまめな面談や仕事ぶりを見ながら、ゆっくりと時間をかけて6時間勤務を続けた。そうした勤務が安定して続いたことから、事業所も対象者もこれなら大丈夫と考え、一日6時間勤務の日を週3日に増やし、その後一日6時間の週5日勤務へと移行した。
そして、移行後約3か月が経過した現在もその勤務が順調に続いている。
こうした勤務時間への配慮をはじめ、事業所では対象者の体調、状況に応じた対応を柔軟に行っている。
2.お昼の休憩の他に、1時間に1回5分程度休憩を取るようにしている。また、仕事への過度な集中を防ぐために、20分に1度タイマーをセットし、一呼吸を入れつつ、現在時刻と業務進行状況を把握しながら業務を行うようにしている。
できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
1.前述のとおり、対象者から「お昼休みは周囲に誰もいない場所で、1人で昼食を取りたい。」との要望があったことから、休憩の際は、使用していない部屋を活用し、1人になれる場所を提供するよう配慮している。
2.1時間に1回5分程度の休憩の際には、人通りの少ない階段踊り場にて、ストレッチなどをして緊張をほぐすなど、疲労回復につながる工夫をしている。
本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
対象者は、手持ちの業務がなくなってしまうことも不安につながることが見受けられたことから、指示された業務が全て完了した際は、自主的に他の業務がないかどうかを同じ係の職員へ確認することを業務の流れに取り入れることとした。
本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
採用当初から、対象者本人より障害特性について職場の同僚にも理解して欲しい旨の申し出があり、申し出どおり、本人の障害特性を、配属部門の同僚には伝達のうえ、理解を得ている。
また、他部署でも管理職には伝達し、他部署との業務連携において、支障がないように配慮している。
その他の配慮
対象者には、今まで述べたような配慮はするものの、ほかの面では障害のない職員と変わらない対応を周りの者は心掛けている。また、対象者からの相談は時間をかけてしっかりと聞く体制をとっている。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
1.前述のとおり、週1回以上は面談・相談の時間を必ず設けている。対象者は面談・相談の時間が、時折長時間になることを心配していたが、全く気にすることはないよう、また、ささいなことでも話すよう助言している。
2.ジョブコーチ支援を採用当初より活用しており、現在はジョブコーチの定期的な支援はなくなったが、対象者は引き続きセンターのジョブコーチと必要に応じてやりとりを行うなど支援制度を利用している。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
私の特性に合わせた配慮を、取り入れてもらい大変感謝しています。
また、週1回の面談では、心配なことを相談できて安心して仕事に取り組めています。
最近は、一日の仕事の終わりに、明日の仕事の確認をしている時に、充実感を感じるようになってきており、今までにないくらい前向きに仕事に取り組めています。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。