・事業所では障害者との採用面接にあたっては、基本は障害者の在籍する特別支援学校の教員や、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の職員の同席を認めているが、本事例の対象障害者（以下「対象者」という。）については同席者はいない。
・面接後、本採用前には2日間の職場実習を行い、自身が働く職場環境や業務内容への理解を持つ機会を設けている。

採用面接時には、障害者から会社や周囲の社員に理解、配慮してほしいこと（「共有してほしいこと」）はないかを確認するようにしている。対象者については、「定期的な通院が必要」ということを採用前に確認した。

・事業所では業務ごとに障害のある社員と障害のない社員を混在させた複数名でチームを構成し、業務を行っている。対象者の属するチームはチームリーダーを含む障害のない社員2名と障害のある社員6名で構成されており、日常的な業務指示や指導はリーダーが行っている。
・チームリーダー以外にも、社内の障害のある社員を横断的にフォローする定着支援担当者が人事部門に配置されている。

事業所では、障害の有無にかかわらず全社員に対して、半期毎の目標管理制度を運用しており、個人別の目標設定や目標達成のための取組みについて、摺合わせを行っている。

対象者の属するチーム内には対象者と同じ作業ができる者を複数名配置している。これにより、定期的な通院や急な体調不良で対象者が休むことがあったとしてもカバーが可能で、対象者が気兼ねすることなく休める環境を整えている。

・入社からしばらくは対象者にリーダーがついて業務のレクチャーをしながら作業を進めさせるなど、密に作業指導を行っていた。リーダーが対象者の状況を細かく観察し、適宜質問を受けられる体制を作ることで、対象者が安心して業務遂行ができるように心がけていた。
・業務に対する成熟度が上がるにつれ、対象者が主体的に作業を行えるように、またやりがいを感じられるようにと、無理のない範囲で、業務量や業務の種類を増やしていった。

事業所では採用決定時に、対象者が属することになるチームのリーダーには、対象者の障害の状況などを細かく伝え、障害種別ごとに的確な配慮や指導ができるように準備している。
ただし、全社員に対しては採用面接時に本人から確認した「共有しておいてほしいこと」のみにとどめることにして、プライバシーの配慮にも努めている。

事業所では、対象者を含むすべての障害のある社員に対して、県内の支援センターに登録をしてもらっている。それにより、事業所と障害のある社員だけでは解決しにくい課題が起こった場合でも、専門的な知識を持つ支援センターの職員から助言などの協力が得られる体制を整えている。