支援学校の就労支援担当教諭が2名同席した。

対象者は支援学校在学中に事業所で職場実習を2回（2年次、3年次）実施し、採用後に本人が円滑に就業できるよう配慮すると同時に適性を判断した。

・事業所では障害のある社員を採用した場合には、業務については配属部署でスタッフを選任し、マンツーマンで業務指導を行うようにしている。また、障害のある社員1名につき総務課員1名を管理責任者として選任している。管理責任者は、担当する社員に対し、事業所からの連絡などを行うとともに、いろいろな相談・報告などの窓口となっている。そして、スタッフと管理責任者は連携して障害のある社員の育成・雇用管理等に対応している。
・対象者については、支援学校からの新卒採用であり、未成年であることから、管理責任者と家族（保護者）との連絡等が重要であることから、雇用契約書に「雇用に関する相談窓口」欄を設けて管理責任者名と連絡先を記載し、明確化した（下の雇用契約書の枠で囲んだ部分を参照）。

雇用契約書の例

過去の雇用事例も参考に、個人の特性を見極めて一人ひとりに合わせた業務内容の見直しと業務量の加減を検討している。見直しなどに際しては、定期的（主として3か月毎の雇用契約更新時）に管理責任者が本人との面談を兼ねて個人の体力や就労意欲についてヒアリングをしながら、勤務時間の延長と仕事量の増加について検討し、見直しを図っている。新たな仕事を増やす際は、面談の中で本人にも考える時間を与えるなど意向を重視するほか、管理責任者自身が作業手順を理解したうえで増やす際の段取りを定め、本人に伝えて取り掛かれるようにしている。また具体的な作業手順が決まったら業務指導スタッフにも周知し、食い違いなどが生じないようにしている。

・対象者は漢字の読解力などには制限があるため、通常の作業手順書などを使うことは困難。そのため、普段の仕事ぶりを参考にしながら、作業はまず指示する側が実演し、次に本人がやってみて体験的に理解することを基本としている。また、その際には本人の理解状況などを把握し、就労意欲を高めることにも配慮している。
・新たな業務として郵便物への切手貼付からポスト投函までを担当する際には、管理責任者が一緒に業務を行いながら徐々にできるようになったら1人で業務を行わせるようにした。例えば投函作業については、ポストが会社敷地外にあるため、管理責任者は本人の運搬・投函の様子を後方から見守り、確実性・安全性が確保できていることを確認した後に全て一人で行うよう継続して指導した。

・体調不良や悪天候、交通機関の乱れなど、定時出勤が困難な場合には保護者から連絡をもらう体制にしている。（平成31年4月入社以来、体調不良による欠勤は一度もない。）体調管理は保護者が主体で行っているが、本人もコミニュケーション能力が高く必要な連絡や応答もできるので、不明確なことは直接本人に確認できる状況である。
・採用当初の勤務時間は対象者の負担軽減を考慮し、10時から15時までであったが、職場に慣れてきたことから徐々に延長しており、1年が経過した現在は9時から16時までとなっている。本人の時間管理などの能力は高く、時間どおりに出社するなど、良好な勤務ぶりである。

・事業所の工場は大型車両が往来、移動し、大型機械が設置されている現場であり、危険を伴うため、基本的には障害のある従業員が工場内に入ることを禁止し、工場とは別の食堂棟と事務所棟で作業を行っている。（障害の内容、程度により工場への立ち入りを認めているケースはある。）
・障害のある従業員の情報（障害特性や配慮事項等）に関しては関係部署に限って共有している。
・障害者雇用に関する基礎知識（法制度等）や事業所として積極的に取り組む方針であることなどについては全従業員に対して機会をとらえて周知しており、従前から障害者雇用に関しては社内に一定の理解があった。

・対象者は漢字への対応が困難なため、社内の表示を可能なものは漢字表記から「ひらがな」表記へ切り替えた。作業指示などについても言葉だけではなく写真を使って視覚的に指示したり、指示者が一緒に仕事をして覚えさせる、対象者にはわからないことがあれば必ず質問するように伝え、質問を受けた者は迅速に回答するなどにも配慮した。そして、業務指導スタッフと管理責任者との連携を徹底した。
言葉による伝達が困難な時は現場で確認して、不安要素の排除に努めた。
・具体的な配慮の例：ゴミの分別作業で分別先がすぐに判別できないゴミがあった場合の対処策として「わからないBOX」（以下「BOX」という。）を新たに作成した。対象者は判別できないゴミを、いったんBOXに入れたうえで業務指導スタッフに教えてもらう、という手順を設けた。BOXの導入により作業が中断することはなくなり、判別できなかったゴミもまとめて処理することができ、作業の効率化につながった。また、スタッフから判別方法についてまとめて指導されることで、対象者の判別スキルも向上した。

わからないBOX