面接時に対象者が利用している地域障害者職業センターの職員に同席してもらい、対象者の障害特性、性格、日常生活の状況等の情報を得ることで、同施設で配置可能な業務（清掃、介護業務等）とのマッチングをはかりながら採用することができた。

同法人では障害者の採用に際しては、あらかじめ法人内の各部門の配置可能な業務・労働時間等を把握し、複数の勤務形態を用意することで、障害者の要望とマッチングさせるよう努めている。
対象者の場合は、面接時に、本人から単一ではなく複数の業務を担当したいとの申し出があったため、体調にも配慮し週20時間程度の労働時間から勤務を始めることとした。

1．指揮命令等について
同法人の業務体制は、複数のユニットに分かれており、ユニットのリーダーが指揮命令を行う。
なお、同法人は介護事業のほか、外国人労働者への支援事業も実施していることから、高齢者、障害者に限定しない様々な背景の方と対応できる職員をリーダーとして配置している。

2．配置等について
対象者の所属する介護ユニットは、利用者おおむね10名に対して介護職員を5、6名（夜勤含）で構成されており、採用当初は男性認知症者を対象とするユニットで勤務し、現在では女性高齢者を対象としたユニットで勤務している。
採用当初は、対象者が業務に慣れるまではリーダーと同じ部署に配置、慣れた頃を見計らって別々に配置している。配置が別となった後も休憩の際などにリーダーは対象者への積極的な声掛けを行っている。
また、リーダーが出勤していない日であっても、必ず1名は正職員の勤務を確保し、指揮命令や相談に対応できる環境を整えている。

・対象者の勤務時間は9時から15時まであることを明確に伝え、業務はその時間内で行うことを指示している。
また複数の業務を一度に任せずに、一つの作業をおおむね1週間程度担当させ、問題のない水準に達したことを確認した後に次の業務へと段階的に移行させている。（清掃⇒配膳・下膳⇒食事誘導⇒食事介助）

・法人として過去に作業手順等のマニュアルを作成していたが、介護の現場で書面を確認しながら作業を行うのは難しく、また理解の度合いも人により異なるため、リーダーが対象者の前で作業を実際にやって見せることで手順を理解させている。

勤務時間については、本人の希望があればフルタイムとすることも可能である。
過去に対象者の希望により少しずつ勤務時間を長くしたこともあったが、翌日に疲れていることが多かったため、結果として当初の労働時間である1日当たり9時から15時まで、週4日勤務となっている。
そのほか、体調がすぐれない場合には有給休暇を取得するよう積極的に周知する等、職場内で「無理をさせない」環境を整えている。

施設内の予備の部屋を休憩用に活用して、適宜休むよう伝えている。
（ただし本人が責任感が強いこともあり日常での利用にはつながっていない。）

採用後、対象者のまじめな性格のため、業務をその日のうちに完了させたいといった考えが強くあり、「家に帰る時間が惜しい」「施設内に泊まらせて欲しい」との申し出が本人よりなされたことがあった。
そうした申し出とは逆に本人は非常に疲れた表情をしており、仕事をやりすぎているという自覚が無かったため、申し出を受けたリーダーがその内容を上長へと速やかに報告し、施設長(理事長)と本人の面談を実施することとなった。
当時対象者が配置されていた介護ユニットは認知症の方を対象としており、利用者からの要望が多く寄せられていた。対象者はそのすべてをこなさなければならないと抱え込んでしまっていたことで非常に負担を感じていたことが面談により明らかとなった。
同法人では対象者の負担軽減等に向け、配置・担当業務の検討を行うこととした。その際には、介護職を続けたいとの本人の意向も考慮した。そして、比較的要望の少ない女性利用者を対象としたユニットへの配置転換を行い、業務の範囲も明確化した。
業務を見直した後、本人からとても楽になったとの申し出があり、表情も次第に明るくなっていった。

同施設には介護福祉士やケアマネージャー等の有資格者が多いため、介護の対象となる高年齢者だけでなく、同僚の障害のある職員に対しても必要な配慮は自然と行えていることから、具体的な障害名や必要な配慮について法人上層部（管理部門）のみで把握し、職員間では共有していない。

1．職場の雰囲気について
法人内の各施設へ理事長自身が日常的に訪問し、障害のある職員への声掛けを行っていることから、周りの職員も含め風通しの良い雰囲気が醸成され、職員間のコミュニケーションが盛んである。
また、日ごとの声掛けとは別に、障害のある職員に対しては採用後6か月頃を目途に、理事長から本人に対して勤務状況や体調についてヒアリングを行っている。

2．資格取得等について
同法人職員には介護福祉士等の有資格者が多く在籍し活躍している。法人としては職員の資格取得を支援しており、希望者には施設内の研修センターを活用し、研修を行っている。障害のある職員にも支援しており、資格を取得した者もある。