・事業所では障害者の採用に際しては特別支援学校（以下「学校」という。）の卒業生を中心に次の流れで採用を行っている。
(1)学校在学中に本人（在校生）の希望のもと職場実習を行い、実際の仕事を体験。
(2)実習終了後に本人が家族、進路指導教諭、就労支援機関の支援者と相談し、応募を希望する場合には採用面接を行う。
(3)家族、担当教諭、支援者同席のうえ採用面接を実施。
(4)以上を踏まえ、採用の可否を決定。
面接前に実習を必ず行うことで、就労後の業務内容と本人の能力・特性が合うかどうかを確認してもらえるようにしている。

・採用内定後は家族、支援者同席のもと、学校側（担当教諭）と事業所担当者との間で引きつぎ会を行っている。

・また、採用の際には、事業所担当者が本人の障害の特性と配慮事項等の中で職場に開示する内容を確認し、合理的配慮シートを作成し、配属先の関係者に伝えている。

・本事例の対象者（以下「対象者」という。）についてもそうした経緯を経て、採用されている。

職場実習に先立ち、進路指導教諭を対象に事業所の作業内容や職場環境を理解するための説明・見学を設けている。これにより、実習を希望する生徒と実習作業・場所との適切なマッチングが図られている。
なお、職場実習とは別に職場体験等の機会も提供している。これは生徒が実際の職場で働く経験等を通じ、職業や進路について考える機会とするものである。事業所への就職を想定したものではないが、職場体験等を契機に事業所への就職を希望する者もある。

・障害のある社員が従事する業務が多数あることから、全体の状況が把握しやすいように同一フロアー内に障害のある社員の就業場所を設け、状況把握と声掛けができるようにした。

・また、障害者職業生活相談員の資格を有する社員（7名）を指導員の名称で障害のある社員ごとに担当者（以下「担当者」という。）を定め、いつでも相談できる環境を整えた。

・採用内定後から入社までの間に、事業所の担当者は対象者、家族、支援者、進路指導教諭と相談し、緑化清掃、製造補助、事務補助の中からメインの業務とサブの業務を決めた。
・対象者は、入社後いろいろな業務をローテーションで行い、午前はメイン業務の清掃、午後は事務、次の日は午前は清掃、午後は製造といったように毎日違う仕事を担当している。清掃業務だけでは本人がなかなか出来高が感じられにくいため、書類のPDF化などの目標値を設定できる業務を組み合わせることで一日を通して仕事をするモチベーションを保てるようにした。
また、事業所のメインの事業である製造現場においても、本人がモノづくりを体験し、社員の一員としての実感を直接感じられる業務を経験することで、充実感を得られるようにしている。

緑化清掃、製造補助、事務補助の業務を毎日ローテーションで行っているため、それぞれの手順書を作成した。
手順書とは別に今どの作業をしているかわかるように事務所内に図化することで視覚化し、本人がすぐに取り組めるようにした。
清掃は部屋ごとに手順書を作り、確認しながら取りかかれるようにしている。

手順書例1　PDF・事務作業

手順書例2　洗浄作業・標準液作成

事務所内のホワイトボードに各個人の一日のスケジュールを管理する表（「業務分担表」）を作り、何時に誰とどこの業務を行うか確認できるようにした。
その中で体調管理ができるよう、出勤時、休憩時に今の自分の体調（好調、不調等）を示せるようにしたことで、体調が悪い時は担当者がすぐに声掛けができるようにした。

業務分担表

担当者は本人の特性を理解し常に近くで相談できる体制をとっており、直接関係する部署の担当者とも情報共有している。
そのほか、全社員に対して社内教育の一環として地域障害者職業センターのDVD等を使った研修を実施し、障害者雇用について社内の理解を深めることとしている。

対象者と担当者との間に信頼関係が築けているため、就労支援機関に相談する前に、気軽に話し合えるようになった。
また、事業所の障害のある社員の多くは学校卒業後すぐに就労しているため、社会人としてのマナーの勉強やお金のトラブルを防ぐため、事業所では職場会（学習会）を定期的に開催している。そうした会への参加を通じて対象者は他の障害のある社員との関係も築けている。