本事例の対象者（以下「対象者」という）への面接時に支援機関の同席を認め、支援機関からの情報収集を行うとともに、対象者の就労についての考えや意欲の確認をすることができた。

本事例の事業所（以下「事業所」という。）ではインターンシップ制度を取り入れており、参加者には業務や職場を体験的に理解する機会とするとともに、事業所としても参加者が業務等になじめるかを把握する機会としている。対象者もインターンシップの参加者であり、インターンシップが担当業務や就業環境について双方が見極める機会となった。また、採用後に配慮すべき事項を具体的に考える機会ともなった。

対象者は部品の出庫、入庫作業に関するピッキングや洗車を担当している。対象者はコミュニケーション能力が高く、自ら周囲の人に話しかけたりできるので、あえて指導の担当などを決めず、周囲にいる誰にでもいつでも相談することができる環境を整えている。

障害特性から集中力が続かないこともあり、当初は時間を区切って作業内容（洗車、部品のピッキング、事務補助等）を変更していたが、対象者も勤務して3年目になった現在は、職場環境に慣れ、職務内容にも習熟し、その日の受注量によっては終日同じ作業内容でも問題なく従事できるようになっている。

洗車やピッキング作業は目で見たほうがわかりやすいため、現場での実地指導と口頭による説明を丁寧に行った。ピッキング作業はバーコード管理されており、違う部品を取るとエラー表示になるなど、対象者本人が間違いにその場で気づく仕組みを取り入れている（写真は対象者のピッキング作業場面）。

ピッキング作業場面

対象者の勤務時間は当初 9時50分から18時30分であったが、電車通勤のため電車の都合で9時35分には出社していた。職場は業務内容によって勤務時間が異なるので、すでに作業を始めている社員がいたことから、対象者は出社後すぐに仕事を始めるようになった。そこで、勤務時間を対象者の通勤事情に合わせて15分早めた9時35分から18時15分に変更した。また、勤務中の休憩についても、担当業務には屋外作業もあることから負担軽減に考慮し、定められた休憩時間のほかにも本人のペースで適宜休憩を取れるようにしている。そのほかにも、体調に留意する観点から設置しているウォーターサーバーなどでこまめに水分補給をするように指示している。

インターンシップの実施期間中に、対象者の担当業務として想定した業務に関係する部署の社員には、対象者の障害特性等を説明し理解を得た。

対象者の入社時期が4月だったので、他の新入社員と同様1か月の新入社員研修を受講させ、社会人としての心得などをしっかり学んでもらうなど、できるだけ他の社員と分け隔てなく対応している。また、研修の際には分かりやすい資料を準備したり、研修内容について個別の補足説明や理解の程度の確認などを行っている。