本事例の事業所（以下「事業所という。）では、障害者の応募・採用に際しては障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の支援を必須としており、採用面接には支援センター職員の同席を得ている。同席により、応募者の緊張を和らげるとともに、応募者の障害特性や希望等について補足的説明を受けている。
対象者についても支援センターの支援を受けている。

1．職場実習
(1)事業所では採用に際しては職場実習を必須としている。実習は応募者、ご家族の同意のもとに1週間から2週間、複数人で協力しあう野菜の摘菜、野菜コンテナの作業室間の運搬、少人数での肥土つくり、一人で行う受託軽作業を行う。なお、実習に際しても支援センターの実習制度を利用することが多く、作業状況の把握や本人との面談等で連携している。

(2)面接や実習により応募者の適性と希望を判断して担当作業や配置を決定している。対象者についても実習を経験したうえで、現在の担当作業を決めている。


2.通勤について
基本的には社員ご自身で通勤しているが、列車利用の場合は、最寄りの駅から会社までの3Kmは公共交通機関の利便性が悪いため、会社契約のタクシーで列車の運行時間に合わせ乗り合せて通勤できるように配慮している。

　　　　　　　　　　

対象者の状況把握と指導・相談について以下の取組を行っている。

（1）障害のある社員の指導担当は職場リーダーとしている。対象者は不満等をため込んでしまうことが懸念されたため、毎月の目標を本人と職場リーダーとの話し合いで決め、作業日報を記入、4日ごとに提出している。これにより対象者自身で作業の進捗状況と健康状態を振り返ることができるようにするとともに、現場リーダーも作業進捗と健康状態を把握できるようにしている。

（2）作業日報や日常の作業、生活状況の観察をもとに支援センターと連携し、定期的な個別面談を1～2か月に一度行っている。それとは別に、就労支援機関の支援員との面談を3か月一度実施してもらい、会社との面談を交互に組み合わせることで1か月半に1回のサイクルで課題点などを洗い出し、仕事、生活支援を行っている。

（3）トラブルがあったときは、声掛けを大事にし、原因を聞くようにしている。支援員に様子を見てもらっている。

（4）対象者には、言いたいことを書き出してもらい、就労現場での直接のリーダーではなく中立的な立場の社員と週に1回程度面談を行い、はきだすことで落ち着いてきた。現在雇用後1年半経過したが、問題なく就業している。

1．マニュアル
　対象者の作業は、本人と相談しながら特性に合わせて、職場リーダーがマニュアルを作成している。

2．仕事の見える化
（1）ホワイトボードに、当日の作業を記入して誰でもわかるようにしている。　
（2）作業場に作業の進め方の表を貼っておく。

3．作業における身だしなみ
　休憩室に身だしなみチェックリストを置いておき、スタンバイに当たっては自分で確認できるようにしている。

作業風景

作業の進め方

マニュアル写真

各人の今月の目標

身だしなみチェックリスト

1．職場実習による見極め
実習で、実際の作業を何種類か経験するなかで、担当作業の見極めを行うとともに、体力や疲労度合いも見極め、通常勤務が可能か見極めている。

2．勤務時間
同社の通常の勤務時間は10時から17時であるが、社員の体力等に応じて勤務時間は個別に設定している。

3．対象者の勤務等の状況
（1）対象者は通常勤務している。現在、薬は服用していない。
（2）突発休もなく、有給を活用しながらリフレッシュしている。

休憩、食事はテーブルを指定するなどの点に配慮している。

対象者については、会社の主業務である野菜栽培の作業よりは電気部品の組立や衣料品関係の受託作業が合っていると判断して配属した。この作業は通常2、3人による同部屋での就業だが、対象者については他の人との相性も考え、個別でできるスペースが必要と判断し、更衣室の空いている場所にパーテーション、机、ライトを新しく設置して仕事のできる環境を整えた。
作業場所が外から見えにくいよう、入り口ドアにシールを貼ったり、必要に応じて目隠しができるよう、可動式のパーテーションを使用したりしている。

1．作業内容の設計
対象者の特性を踏まえ、本人や支援センターの意見を聞きながら仕事のやり方（手順等）を協議して決め、それを本人用マニュアルに反映させ、円滑な作業遂行につなげている。

2．作業日報記入による対象者への対応
(1)本人の内面的なこと、生活のこと、目標と実積のこと、作業の工夫等を記入してもらっている。
(2)記入内容等状況に応じて、会社と支援機関が連携し、対象者の気持ちを汲み取り、それに対応した対策を講じている。

3．旅行、忘年会などによる交流と社会参加
年に1回の日帰り旅行やランチ忘年会、地域のボランティア行事への参加、休憩時間に卓球・野球といったレクリエーションを通して人間関係の構築とリフレッシュを図っている。

4．今後の取組み
会社設立より5年が経過し定着率もよくなった。現在は勤務体系の同じ社員は同一賃金だが、今後は各人の勤務状況を反映した賃金体系を考えていき、各対象者の向上心を高めていきたい。