転勤先でミスや指示理解の困難さなどの特性が顕著に表出し、一時は対象者が不眠となり心療内科に通院するようになった。当時の上司より産業医がいる現事業場の担当者に相談があり、まず上司と担当者同席で産業医相談を行い、現状の把握と発達障害の疑いにて治療や配慮の必要性の検討に向けてただちに対象者の産業医面談を行った。当初本人は辞職希望をほのめかすほどで疲労感も強く、不眠で心療内科に通院しており産業医の助言でしばらく休暇を取得した。その後症状は改善し医療も不要となり、配慮を受けて継続雇用を希望するようになった。産業医面談の結果、発達障害の疑いがあり配慮を要すると判断され、エリアマネージャーが社内調整を図り、対象者の希望と配慮のため担当者と産業医が在籍する現事業場へ異動を行った。また、本人の了解を得て産業医より現状の説明とより詳細な成育歴聴取と協力体制の構築のため家族面談も実施した。対象者はこれまでは大きなトラブルなく過ごしてきており家族の障害受容は困難になることを予測し、担当者が慎重に家族面談を進めた。また、同時並行でより詳しい障害特性把握と配慮内容を検討するために対象者の了解を得て、職業センターに対象者の職業能力の評価と作業上の特性把握と対応に関する助言を依頼した。
家族は当初は障害理解が困難であったが、帰省中に実家の自営業を手伝わせるなかで作業能力を推測したり成育上で特性に思い当たることもあり、担当者や産業医との面談や職業センターの結果などからも障害を理解し、障害に対する配慮を受けての継続雇用に協力してもらえるようになった。
対象者とは担当者が中心となり、当初は週1回の面談から、10日に1回の面談とし、体調確認や本人の不安やニーズ、職場での困り感など全体的に把握した。現在は1日1回声掛けする程度で本人が相談しやすいようにしている。
また、対象者は当初は配慮を希望したものの診断には拒否的であった。しかし、会社として合理的配慮を提供するためには、産業医による発達障害の疑いがあるとの判断だけではなく、専門医の診断や障害者手帳を取得することが望ましいと判断し、産業医とも連携し担当者が約2年間、時間をかけて信頼関係を構築し対象者と家族に障害者手帳取得の必要性を説明し了解を得た。そして、産業医の紹介で発達障害専門クリニックでの受診に担当者は同行し、職場での状況などを伝えた（3回程度。就業時間外）。その後は対象者単独で1か月に1度就業後に定期通院し手帳取得に至った。現在は近況報告のみで投薬はなしで2か月に1度、就業後に定期通院は継続している。

修理受注という専属の仕事でやれていて、数値目標を考えてそれに向かってやれているのでありがたいし自信もついた。もっと仕事をしたい気持ちがあるけど、今まで職場をかき乱してまった過去があるのでどうかなと思う。緊張しやすいけどそれも減ってきていて、お客さんへ声掛けをできるようになってきた。何かあれば相談できる安心感もある。土日休みでゆとりもできている。前は昼夜逆転したりしたけど、生活リズムにも気を付けられている。手帳に関しては今後も安心して働けるので取得してよかったと思う。