精神障害者の教育・研究機関における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・2020226
- 業種
- 教育、学習支援業、うち除外率設定業種
- 従業員数
- 1,820名
- 職種・従事作業
- 一般事務補助
- 障害種別
- 精神障害
- 障害の内容・特性
就労上の課題 - 気持ちを察するのがあまり得意ではなく、仕事上の指示を受ける際は、はっきりとしたわかりやすい表現で指示されることが望ましい。音が気になってしまうため、周囲がうるさい環境は不得意である。
募集・採用時の合理的配慮
面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
本事例の対象者(以下「対象者」という。)から特段の申し出がなかったため、本事例の事業所(以下「事業所」という。)の担当者(4、5人)との面接であった。
その他の配慮
対象者からは特段の申し出はなかったが、採用選考はペーパーテストなどはなく15~20分ほどの面接のみで、その際に、障害の内容や就労上の課題を確認している。
就職面接なので本人も緊張されているのではないかと配慮し、いきなり志望動機などの本題に入るのではなく、最初は名前や生年月日等、簡単に答えやすいものから確認するように心がけた。そうすることで緊張が和らぎ、面接はスムーズに進んだ。そうした配慮が発言をしやすくする効果もあったと考えている。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
対象者の所属する現場のリーダーが業務指導を担当した(以下、リーダーを「指導担当者」という。)。採用後間もなく、対象者本人からジョブコーチの支援を受けたいとの希望が出され、事業所も必要と考えたことから、地域障害者職業センター(以下「職業センター」という。)のジョブコーチ支援を利用した。指導担当者とジョブコーチ、対象者本人の三者面談を定期的に実施し、業務内容や悩みごと、体調などについて情報を共有した。面談はジョブコーチと連携している障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)の就業支援ワーカーもまじえた四者面談の場合もあった。
事業所は対象者が職場の人には言いにくいことがあるかもしれないと考え、面談の際には指導担当者が席を外し、支援者のみと相談する時間を必ず設けた。
四者で情報共有できていたために、対象者の様子を見ながら連携してバックアップできる体制を整えた。
業務の指示を出すのは現場のリーダーに限らないため、本人には、業務上不明な点は遠慮せずに質問・相談するよう伝え、スタッフは必ず対応する体制を作った。そうすることで対象者は戸惑ったり混乱することがなく、指示内容を理解しスムーズに業務が進められている。
業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
採用当初、職場内の全スタッフと和やかにコミュニケーションが取れるよう気を配ったことにより、早い段階で安心感をもって仕事に臨んでいた。業務の目的や優先順位を明確に指示することを心がけ、スピードより丁寧に確実に作業すること、わからない点は遠慮せず何でも相談していいことを伝え、緊張の緩和に努めた。
対象者を対象としたマニュアルは作成していない。対象者を含むスタッフ全員が共通の業務マニュアルを基に業務を行っているが、不都合が生じたことはない。
基本的にはすべて口頭で指示している。その都度対象者本人は業務指示の内容のメモを取ることで、何のためにこの作業をするのかという目的や、優先順位を明確に示すことで、本人も理解を深め納得してミスなく作業ができている。また、対象者にはスピードよりも正確さを重視するように指示していることは、全スタッフで共有した。
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
指導担当者も同性だったことで、体調不良の際は対象者から速やかに相談があった。それを受け状況に応じて適宜休憩や早退、受診を促すなどの対応をした。体調により勤務の調整が行われる配慮によって、対象者は安心感を得ている。
障害特性上、対象者は不測の事態による遅刻を不安に感じていたため、いつも早めに家を出ていた。そのことが「職場に向かうストレス」となり、不調を来すことがあった。現在は朝10時出勤、17時終業で一定しており、残業なく定時退勤できることで生活リズムが安定し、その結果、仕事のミスもなく安定した就業を継続している。
できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
休憩室の一角に畳敷きの小上がりのような休憩スペースがあり、職員であれば誰でも横になって休憩することができる。体調に不調があれば、休憩できるという安心感があり、また不慮の出来事があった際には実際に休憩できる。
昼食休憩はスタッフ全員でテレビを見たり雑談したりしながら昼食をとり休憩する。対象者は以前の職場等で、他の人と昼食を一緒に食べること自体に緊張感をもっていたことがあったが、ここではすぐに和やかに打ち解けた。この事業所には、過去にも精神障害のあるスタッフが在籍しており、自然体での交流や日頃の雑談等が緊張感を緩和することをスタッフ全員が経験上認識し、自然発生的に配慮している。

本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
指導する中で、素直で真面目に取り組む姿勢と理解力が高いこと、一方で不測の事態やミスに動揺しやすいという特性が把握できた。業務は主担当である資料の準備と環境調整のほか、受付窓口業務もほかのスタッフと同様に担当している。そのため、必要に応じて周囲がサポートできる次の業務分担としている。
・資料準備業務は副担当の役割を持たせ、グループ単位の業務体制にすることで、誰かが不在でも業務が滞らない体制にしている。
・一人体制になる昼休み時間帯と夜間は、受付窓口業務のシフトに対象者を入れない。
・受付窓口業務を担当している時に対象者だけで判断できないことがあれば、直ちに他のスタッフが指導できる体制としている。したがって、指導できるスタッフがいない状況では、対象者を受付窓口業務のシフトには入れないようにしている。


本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
対象者の前にも5年間勤務した精神障害者の受け入れ経験があるため、スタッフには一定の理解とノウハウがあった。対象者が勤務を開始するにあたり、人事担当部門から配属先の指導担当者に、本人の了解を得たうえ対象者の障害や配慮すべき点等について伝えられ、配属先のスタッフには当該指導担当者が最低限配慮すべき点等を伝えた。仕事をしていくうちに対象者の傾向は自然と皆がわかり、理解が深まり必要な配慮が得られた。障害を意識しすぎず自然体で、和やかな雰囲気と積極的な声かけにより、安心して勤務できる環境づくりに努めている。
その他の配慮
ジョブコーチや就業支援ワーカーなど複数の人との情報共有が図れたことは、対象者にとって多くの人に見守ってもらっている実感が得られ、不安感や緊張の緩和に役立ったと思われる。
音が気になってしまい、周囲がうるさい環境は不得意である特性については、現在の職場は雑踏や喧騒が無く元々静かなためか、音に対する反応は一度もなかったために特別な配慮が必要とされたことはない。
緊張によって不調が生じるという特性があるため、緊張状態が全くないようにすることが一番大切なことであるという職場内での認識があった。スタッフ全員が同性だったため、スタッフから友好的に気軽に声を掛けて和んだかたちで仕事ができるような環境づくりを最優先することとした。
対象者の症状への配慮に関しては、その環境に安心して馴染むことが一番重要という認識の上で、同じ仕事仲間として自然体にやり取りすること、意識しすぎないことを念頭に置いた。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
採用当初4月から7月までは月2回、以後8月から10月まで月1回、12月から翌年7月まで2か月に1回の頻度で三者、もしくは四者での面談を実施した。業務内容や通勤手段、通院や服用している薬、余暇の過ごし方など近況報告を交え、様々な話題をざっくばらんに語り合う中で、仕事の進め方や心の持ちようなど、適宜対象者本人へアドバイスがあった。指導担当者が席を外し、ジョブコーチや就業支援ワーカーと対象者だけの面談時間も設けられていた。
対象者と指導担当者、ジョブコーチ、就業支援ワーカー及び職場内のスタッフが全員同性であることも功を奏している。対象者は同性同士という安心感の中で面談でき、気楽に喋れる環境にある。通院や服薬状況などの医療に関わることも、三者・四者面談内でジョブコーチが対象者に確認し、関係者で共有することで、指導担当者も状況を知ることができた(面談内容を共有することは対象者の了解を得ている)。
余暇の話や雑談など気楽な話をしている中で、仕事内容について触れて、違和感なくアドバイスをするなど専門家ならではの配慮がある。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
常に何でも話しやすい環境、風通しのよい環境がある。人間関係がとても良い職場で、そこがとても安心感がある。仕事もやりがいがあり、毎日楽しく過ごしている。最初の1日、2日で安心して仕事ができると感じた。体調がすぐれない時に出勤途中で電話をし、状況を話したら、すぐに「今日は出社せずにゆっくり休んでください」と声を掛けていただいた。精神的に助かって気が楽になった。指導者やジョブコーチ、就業支援ワーカーとも、仕事に関わらずプライベートな事や、公私の悩みごとも話せている。
また職場のバックヤードにある休憩室は、気軽に入って行きやすく、一息つける場所の存在なので、安心する。お昼休みに雑談しながらテレビを観る時間も、ストレス発散の機会になっている。
実務上では、指示が書かれたメモを基に仕事を進めていくが、スピードよりも丁寧な仕事を求められているために、圧迫感はなく落ち着いて仕事を進められる。
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