本事例の対象者（以下「対象者」という。）は特別支援学校の実習生として、本事例の事業所（以下「事業所」という。）で職場実習を行った。採用面接では対象者の障害特性や就労上の配慮、希望等の補足のために特別支援学校の先生及び両親に同席してもらった。

事業所では障害のある社員に関わる担当として障害者担当顧問（以下「担当顧問」という。）を配置している。担当顧問は、自身にも身体障害があり、長年にわたり製造に従事した元製造部長であり、障害のある社員の配属部門の管理者と連携しながら相談等に関わっている。対象者についても、本人と担当顧問及び現場管理者の三者で面談を行うことや、現場管理者が作業標準書を用いて対象者への業務指導を行った。

採用時より、綿密に対象者の障害特性を考えて面談、作業指導及び配置を行っているため、一連の作業を習得しても業務量を増やすことはしていない。対象者には作業の質を高め、生産性向上を図るよう指導を行った。

各現場の作業に応じた作業標準書を作成している。作業標準書は手順・方法・注意点・品質等を写真入りで説明したマニュアルであり、障害の有無にかかわらず、誰でもわかるような内容となっている。
対象者への作業指導は、現場管理者がまず作業を実演し指導を行った。対象者が理解できるまで繰り返し実演し、丁寧に声をかけながら工程を一つ一つ対象者が納得するまで指導した。

作業標準書

出退勤時刻・休暇・休憩に関しては、障害のある社員とそうでない社員が同じシフトであり、対象者からも短時間や変形時間勤務等の要望はない。対象者の体調を最優先とし、体調不良の様子がある場合は、現場管理者が声かけを行い、早退を促す。また、通院が必要な場合は付き添いを行っている。その際に生じた欠員は残りの社員または他部署からの応援で対応できるよう、事業所のフォロー体制を整えている。

事業所には対象者の他に障害のある社員がすでに在籍しており、事業所内に障害のある社員がいることは日常的になっている。そのため、関係する社員に改めて障害の内容等を説明することはないが、必要な場合には担当顧問が他の社員へ声かけを行っている。現場管理者には障害特性と注意点の説明を行っている。

障害特性に応じた配慮は必要であるが、業務を遂行する意志や能力は、障害のある社員であっても、障害のない社員であっても変わらないと考える。その考えのもと、社員の資格取得や教育研修を通じて、一人ひとりの能力・適性を活かした環境整備を続けている。