職場実習による学校との連携、
定着に向けた環境整備、雰囲気の醸成
2021年度掲載
- 事業所名
- 株式会社クローバーコネクト
(法人番号: 9021001044769) - 業種
- 運輸・物流業、うち除外率設定業種
- 所在地
- 神奈川県座間市
- 事業内容
- 倉庫保管業及び同受託に関する業務
- 従業員数
- 1,126名(令和3(2021)年1月現在)
- うち障害者数
- 43名
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障害 人数 従事業務 聴覚・言語障害 3名 事務作業、品名シール貼り 肢体不自由 4名 事務作業 内部障害 2名 商品仕分け 知的障害 22名 コンテナ選別、商品補充、商品仕分け 精神障害 12名 商品補充、商品仕分け - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害
- 目次
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事業所外観
1. 事業所の概要
株式会社クローバーコネクト(以下「同社」という。)の前身となる株式会社コープロジスティックは平成元(1989)年に、生活協同組合ユーコープの宅配「おうちCO-OP」の商品仕分けを請け負う子会社として設立。平成2(1990)年、社名を株式会社コープデリバリーに変更し、以来30年に渡って、神奈川、静岡、山梨県内で約179万人が加入しているユーコープの食の安全・安心を届ける役割を担ってきた。
令和2(2020)年に、物流を通じて顧客である組合員と荷主及び生産者をつなぐ架け橋となるべく、社名を「株式会社クローバーコネクト」へと変更し、座間事業所(座間市)、森の里事業所(厚木市)、青果事業所(愛川町、横浜市)にある4か所の拠点で、組合員からの注文商品の仕分け、受発注及び品質チェックなどの業務を行っている。
また、同社の主たる業務内容が商品仕分けである関係上、仕分け業務だけでなく備品の回収・選別、商品の補充といった、業務と業務の間の軽微な準備作業など多様であることから、正社員よりもパートタイマーなどで雇用する場合が多いことも同社の特徴である(令和3年1月時点で正社員44名、パート・アルバイト1,082名)。2. 障害者雇用の経緯
同社では次に紹介する取組以前は、障害のある従業員といえば在職中の従業員が病気などにより中途で障害者となったケースが多く、新規で障害者を雇用することはあまりなかった。これは、障害者雇用は正社員で雇用することが必要であるといった認識があり、パートタイマーなどの多い同社では障害者雇用を進めることが難しいのではないかと考えていたためであった。
そうした中で、平成24(2012)年頃、近隣の県立平塚養護学校(以下「同校」という。)の先生が学校行事の一環である職場実習(以下「実習」という。)への協力依頼に同社へ何度も足を運ばれたことをきっかけに、森の里事業所での実習が始まった。始まった経緯としては、実習の受け入れは障害者雇用を進めることを前提としたものではなく、学校行事への協力という位置づけであり地域貢献の観点から始めたものであった。しかし、同校からの実習の受け入れを通して実習生本人が正社員ではなく、パートタイマーでの採用を希望することの多さに気づき、同社は本格的に障害者雇用に向けた取組を進めることとなった。そして、それを契機として同社では障害のある従業員を「チャレンジャー」と表現することとした。これは様々な課題を乗り越えようとする姿に尊敬の意を込めて名付けたものであり、業務面で教育に時間を要したり、複雑な作業が困難であったりする場合もあるが、特別扱いせずにあくまでも一人の社会人として接することで期待に応えてくれる重要な人材として位置付けている。
実習開始当初はごく簡単な作業を担当させていたが、実習を繰り返すことで反復作業は問題なく任せられることがわかったため、徐々に障害のない従業員と同様の作業も担当させていくこととなった。森の里事業所での採用が継続的に続き、同社の障害者実雇用率は3%を超えることとなったため、障害者雇用の分野で社会をリードできるよう全社で採用に積極的に取り組むこととし、平成30(2018)年から3年計画で雇用率8%を達成することを目標に掲げ、森の里事業所での実習から採用までの取組や成功事例を社内全体へ広めていくこととした。
3. 障害者の職場配置と従事業務
現在は他校からの実習も受け入れており、受け入れる場合にはまず、同社に特別支援学校や障害者就業・生活支援センター(以下「支援センター」という。)などから紹介があり、同社でどのような業務であれば受け入れることができるか検討した上で可否を回答している。実習を実施することが決まった場合、対象者との面談で実習生の希望と同社の担当してほしい業務とをすり合わせ、実習内容(担当業務、実習時間など)を決定している。
実習中には、実習生の様子を記した連絡ノートを作成し、「担当した業務」及び「生じた課題」を記録し、実習終了時には評価結果をまとめ、実習生のみならず保護者、支援機関などと共有しフィードバックを行っている。実習生が採用となった場合には、実習が就労の予行演習となっているため、勤務時間の設定など、現場に配置する際の参考となっている。
また、採用時には現場の負担を考慮し配属先がかたよることのないよう可能な限り分散させている。
森の里事業所の業務としては商品の入荷、検品及び仕分けを行っており、その中で知的障害のある従業員には主に、仕分け後の段ボールとプラスチックのコンテナをより分ける作業、ピッキング棚への商品の補充作業、酒(要冷蔵)の仕分け作業を担当させている。補充作業についてはハンディ端末を使用することから当初は予定していなかったが、試験的に担当させたところ問題なく作業が行えていたことから、担当業務の一つとなった。
座間事業所においては常温の食品、飲料、パンなどを取り扱っており、仕分け作業や商品の受注及び発注業務を担っている。その中で知的障害のある従業員には後述の取組を経て、ピッキング棚へ商品の補充作業、飲料などの商品を袋に入れる作業、商品を箱に入れる作業、コンテナをコンベアに載せる作業、入荷商品伝票チェック作業などを担当させている。ピッキング作業は難易度が高いため現在では担当させられていないが、適性があれば担当させたいと考えている。
また、聴覚障害のある従業員にはフォークリフトなどが往来する現場の作業ではなく、安全性の観点から青果加工品の袋に表示シールを貼り付ける作業(森の里事業所)、伝票チェックや製品に貼り付ける行先札の作成(座間事業所)といった事務作業を中心に担当させている。
また、反復作業が得意であれば段ボールの開梱作業などの定型的な業務、作業内容を理解できる場合には障害のない従業員と同じ業務を担当させるなど、本人の能力と適性を踏まえた配置を行っている。障害のある従業員はいずれの業務でもそれぞれが集中して取り組んでおり、同社の大切な労働力となっている。
4. 取組の内容と効果
森の里事業所の取組を全社へ広げていくに当たっては、各事業所で積極的に採用していくことが重要であるため、各事業所長に対し勉強会を定期的に開催している。これは、会社の方針として障害者雇用促進を決定し、トップのメッセージとして全従業員に向けて発信することで実現したものである。勉強会では、まず本社の担当者が各事業所長へ障害者雇用の進め方、注意点などを説明している。次に各事業所長は学習した内容を事業所の従業員へ伝達し、現場で障害のある従業員と接する従業員へレクチャーしていった。
勉強会は本社担当者が実施するもののほか、必要に応じて神奈川県障害者促進センターに出張講座を依頼し、障害の程度や内容によって対応を変える必要があることなどを学ぶことができた。
そのほか、雇用率8%を目標とした3か年計画の推進に当たり、障害のある従業員の定着率向上を図るための受け入れ態勢強化や、送り出していただく側から安心して選んでいただける企業を目指し、各事業所にジョブコーチを配置することとした。令和元(2019)年に3名がジョブコーチ研修を受講し、令和2(2020)年にはさらに3名が修了する予定となっている。障害者雇用に関する知識とスキルを身に付け、安心して働くことができる環境づくりを行い、事業所単位で特別支援校などとの関係を強化するための準備を整え、実習の受け入れから採用、定着までの一連のプロセスをそれぞれ行うことができるようになった。
また、作業方法や業務のマニュアルの見直しを積極的に進めたところ、障害の有無にかかわらず、誰にでもわかりやすい教育方法が確立することとなり、結果としてすべての業務の教育レベルの底上げにつながっている。最近では写真付きの作業マニュアル作成するほか、作業手順の動画を作成し、ユーチューブの専用URLからいつでも確認できるようにしておくなど、繰り返し作業手順を確認できる体制を整えている。
商品の補充作業では、事前に受注の多い商品の箱を切る作業を障害のある従業員に担当させることにより、障害のない従業員も各自の作業により集中することができるようになり、全体の作業の一つ一つが細分化され簡単になるため、作業の効率が上がっており、現在、森の里事業所の容器供給、入荷商品の仕分け部門などでは、障害のある従業員がいないと成り立たない部署もある。
同社では障害のある従業員を一人の社会人として対応するため、待遇についても障害のない従業員(パートタイマー)と同様としている。実習を受け入れ始めた当初は、接し方や対応方法などでの不明点も多かったが、実習を繰り返すことで現場の従業員も次第に慣れていき、障害特性に応じた配慮はしつつも特別扱いはしない職場の環境が徐々に醸成されていった。現在では障害のない従業員と同様に日々の会話を交わし、大事な連絡事項や掲示物のみ個別に説明を行うなど、適切な配慮を行える体制となっている。
座間事業所では様々な現場のパートタイマー従業員から、自発的に障害者との対応を学びたいとの声が寄せられ、新たに採用したばかりの聴覚障害のある従業員とのコミュニケーションのため、基礎的な手話を学ぶ機会を設けるに至った。当初は聴覚障害のある従業員との会話は筆談を想定していたが、挨拶を手話で交わせることで、日ごろのコミュニケーションがより円滑になった。
このように障害の有無にかかわらず区別なく対応することは、障害者雇用を進めるために必要である。一方で、作業の注意などを受けると深刻に受け止め落ち込み、職場の人間関係で苦手意識を持ってしまい、課題が生じた際に解決がスムーズにいかない場合もあると感じている。障害者雇用を進めるためには、障害特性などに対する周囲の理解を得ることが、何よりも重要であると考えている。中でも精神障害のある従業員は、気分の変調が周囲から気づかれにくいこともあるため、コミュニケーションの難しさが課題と感じている。そのため、専門機関と連携し、適宜サポートを受けられるよう体制を整えている。
5. 今後の展望と課題
3か年計画をスタートさせた当初、本社担当者が各方面へ出向き、同社が障害者雇用を積極的に進めていることの説明を行った。この反響は大きく、学校や支援センターなど多くの方からご連絡をいただいた。そこから実習へつなげ、就労可能と判断できたところで正式に雇用してきた。
実習を受け入れた当初は、現場従業員の協力を得るところから始まり、理解・協力を得るまでには時間がかかったが、実習を繰り返し行ってきたことと、雇用を進めてきたことで徐々に理解を得られるようになった。そうした社内の理解のもとに実習希望があったときは、可能な限りいつでも応え積極的に採用を行ったところ、令和元(2019)年6月には雇用率が9.26%(前年6.74%)と計画を上回る結果となった。
現在も特別支援学校や支援センターなどからの実習や就職の要望は続いており、実習を行いながら雇用を進めていく思いでいる一方、障害のある従業員の雇用が増えていくことで、難易度の低い作業が用意できなくなってきていることが現状の課題となっている。今後は、障害の程度にもよるが、難易度の高い作業を少しずつ担当させられるよう体制を整えていくことが必要と考えている。
障害者雇用は、会社にとって貴重な人財確保の手段と考え、定着支援を行いながら引き続き取組を進めたいと考えている。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
神奈川支部高齢・障害者業務課
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